失恋生活三十八日目
まさにカオスだった。
私のトラウマたちが一軒家に大量に押し寄せてぎゅうぎゅう詰め状態で合コンが開始された。まるで日曜の六時半から放送されている国民的アニメのエンディングの如く一軒家がこれでもかと言わんばかりに動く、揺れる。
ゴムで出来ているのでは? と思えるほどにグニャグニャに動く。
それでもご覧のスポンサーは、なんて言ってる場合じゃなーーーーーーい!!
因みに海賊の王様を目指せるほどにはゴムゴムしてません。
オリハルコンだからか? 一軒家がオリハルコン製だからどれだけトラウマたちが入ってきても崩壊しないってこと?
神様ちゃんのバカーーーーーーー!!
ふぐう、こんなことになるならあの時、神様ちゃんを止めておけばよかった……。調子に乗って私の名前から文字って命名して貰うんじゃなかった……。
金属にまで振られた気分になった。
凹むわー。
「むんむんむーん!!」
モテルパパはそんな私を置いてきぼりにしてコップを持って乾杯とパーティ開催の挨拶を始めるし。葉っぱ一枚で腰に手を当ててコップを掲げる。
アンタはお風呂上がりに牛乳を一気飲みするお父さんか!! そしてご来賓の方々も一緒になって乾杯するんじゃないわよ。
ヌルヌルヌルヌル!!
ニュルニュルニュルニュル!!
カサカサカサカサ!!
レレレーーーーー!!
ファーーーーーー!!
もうカオスどころじゃない、ここまでされたらジュラってますなんて理由じゃ私も納得できない。
ブチッ!!
「ミケ!! あの変態をやっちゃいなさい!!」
「にゃ、にゃにゃー……?」
「これ以上テカテカに自分の尻尾を触れさせたくないですって? ……ミケ、これからは別居しましょう。今後はパパのベッドで寝てね?」
「にゃにゃーーーーーー!? にゃ、にゃにゃーー!!」
ミケは「パパの足の臭いには耐えられないにゃ!! ご無体にゃーー!!」と言ってます。パパの足の臭さは宇宙市でも有名、そのあまりの臭さに宇宙市では燃えるゴミ、燃えないゴミの他に『鯖井パパの靴下』もゴミの分別しないといけない。
パパの足の臭さは環境省も危険視してるのよ。
パパの靴下は輸出する時も安全保障貿易管理上、大量破壊兵器としてリストアップされているのだ。つまりミケがパパと一緒に寝ると言うことは死を意味するのだ。
ミケはそんな私の発言に「にゃーにゃー」と泣きながら全身をブルブルと震わせて縋ってくる。
そして決心したようで斬鉄剣を握りしめて泣きながらモテルパパに飛びかかった。
もう斬鉄剣はミケにあげるわ。
私は心の中で涙を流しながら構えを取ってエネルギー弾を放った。
「波ッ!! ミケ、エネルギー弾がそっちに行ったわよーーーーー!!」
「にゃにゃにゃ……!! にゃーーーーーー!!」
ミケは背中でエネルギー弾を浴びて、その推進力を利用してモテルパパの首を狙って斬鉄剣を振るった。
そしてそこで思いもしないことが起こった。
スポン!!
え!? モテルパパが首を……自分から体に仕舞った!? 亀みたいに首を仕舞ったの!?
モテルパパは信じられないほどに柔軟な体をしていたようで、常人離れしたやり方でミケの攻撃を回避した。
当然だけどミケは「にゃーーーー!?」と大声をあげて、目を飛び出させて驚いている。
あ、そう言えば先日巨大魚を私に差し出した時、モテルパパは頭が無かったわね。あれはこう言うことだったんだ……。
「むんむんむんむーん!!」
そしてミケの攻撃を何事もなかったかのように避けて、これまた何事も無かったかのように雄叫びをあげるモテルパパ。
すると一軒家に詰め寄った私のトラウマたちはソレに呼応するかのように興奮しだす。
モテルパパはジャングルの王者か何かじゃないの!?
ヌタウナギは雄叫びに反応して粘液を床一面に分泌させて、ミミズはニュルニュルとワカメの如く蠢いて。ゴッキーは部屋一面を這いずり回る。
そしてマンモスとティラノサウルスは……、隅っこで体育座りしてる!?
「ううう……、ビット攻撃は凄くスタミナを使うのにー。行っけーーーーーー、アホ毛ビット!! マックスパワーーーーーーー!!」
アホ毛カッターは直接攻撃だからヌルヌルとニュルニュルに触れさせたくない。だから私は全てのアホ毛を飛ばしてビット攻撃を開始した。
『このモテルパパ、見くびっては困る!」
私はどこぞの宇宙世紀に存在する交戦団体の指導者のような言葉を吐き出してアホ毛ビットを操った。ちょっとだけ雰囲気を楽しみたいからピンクのカツラを被っとこ。
スポン。
私のアホ毛全てが発射されて少しだけ頭がスースーするのだった。
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