失恋生活二十八日目
私は弟の馬鹿な行為で感電してピクピクと体を痙攣させていた。
『姉ちゃんの現在地が遠すぎるんだよー。だから姉ちゃんのアホ毛を電波塔代わりにしてデータ送っといた』
「馬理衣も少しはお姉ちゃんの心配してくれても良くない!? 殺す気かーーーーーー!!」
「にゃにゃー……」
ミケも私の隣で感電してます。
『えー、だってさっきの電子データって美容にすごくいいんだよ?』
「え? ……そうなの?」
『それに電子データ送るのに宇宙ステーションを介したからハッキングがすごく大変だったんだよー。姉ちゃんも少しは僕を褒めてくれてもいいのに酷いなー』
まあまあ!!
うちの弟ってばなんだかんだ言って、お姉ちゃんが大好きなのね!! 私はやっぱりお姉ちゃん検定を受験しといてよかった。
そしてお姉様検定初段の願書も出しておいてよかった!!
私が感極まって泣いていると弟は電話越しで何かをボソボソと呟いていた。
『やっべ、メールで送れたのすっかり忘れてた……』
「え!? 何か言った? お姉ちゃんへの愛の呟き?」
『なんでもないー。それよりも暗殺対象の潜伏先とデータは確かに送ったからねー』
「あーん!! お姉ちゃん、馬理衣ともっとお話したーい!!」
『まだミノフスなんとかって粒子の開発が残ってるから待たねー』
ブチッ!!
おお、愛しの弟よ。アンタはとんでもないドSね。こんな上級者な放置プレーをされたらお姉ちゃん我慢出来ないじゃない。
お姉ちゃん、弟にもフラれた気分になっちゃうじゃん。
凹むわー。
ジュルリ。
おっと、お姉ちゃんはあくまでお姉ちゃん。私の弟に恥ずかしくない女になるのよ。私そう気を引き締め直してパンパンと頬を叩くとお風呂から上がってせっせとセーラー服を着込んでいく。
そしていまだ感電してダウンするミケを指で突いて起こすと、次にすべきことを口にしていた。
「ミケ、とりあえず夕飯の食材調達行くよー」
「にゃ、にゃー……」
ミケは感電しながら「お使いはいいのかにゃ?」と言ってます。確かにミケの言う通りでお使いは大事、だけど人間は食べないと死んじゃうのよ。
それに余裕があるなら保存食だって作っておきたい。
それこそ暗殺するなら私の方が潜伏する可能性もある訳で。私はマンモスの象牙を加工して作った針を、これまた木を削って作成した竿につけながら洞窟の外に向かっていった。
今日は晴天だ、絶好の釣り日和。
「なのに……餌がこれなのよね」
私は夢の巨大魚を釣るべく竿に括り付けた餌を持ち上げてぼやいてしまった。だって……餌はミケが仕留めたミミズの生首だよ?
確かにミミズで巨大魚を釣ろうと考えてはいたけど、絵面がグロすぎる。
どこのホラー映画じゃい!!
なんと言えばいいか、……目も鼻もついてないのにミミズからニヤーって笑いかけられている気分になってしまった。
『ニュルニュルで一攫千金だ』とミミズの幻聴が聞こえる。
「なんかミケを餌にした方が釣れる気がしてきた」
「にゃにゃーーーー!?」
そんなバカ話をしながら私とミケは目指していた釣り場へ到着した。二人で並んで腕を組みドン!! と効果音をバックに先日発見した水場に向かって仁王立ちのポーズを取った。
「ふふふ、今日はむしろジュラってください」
「にゃにゃにゃ」
私とミケは隣り合って釣り糸を水場に放り込んだ、するとポチャンと音を立てて針が水場に沈んでいく。
釣りは我慢のスポーツ、そんな風にパパから聞いていたから長丁場も覚悟していた。私とミケはボケーッとしながら地面に座り込んで当たりを待った。
そんな姿勢だったからだろうか?
なんと当たりはものの数秒で来たのだ。それも恐ろしく引きの強い当たり、竿の材質がパーシモンだからこれでもかと言わんばかりにしなり出す。
「ウッヒョーーーーーー!! 今日はご馳走よーーーーーーー!!」
「にゃにゃーーーーーー!!」
そんな風に叫びながら私はジュルリと涎を垂らしつつ力一杯に竿を引いた。そして思い知ったのだ。
やはりこの島での出来事は斜め上をいくのだと。
私は力任せに竿を持ち上げて喰い付いた魚を水中から引っ張り出しました。そしてミケと共にホラー漫画のような表情となって釣り上げた魚を凝視してしまったのだ。
そしてこれまたホラー漫画の如く悲鳴をあげてしまった。
「ギャーーーーーーーーーーー!! 頭だけ巨大魚のボディービルダーが釣れたーーーーーーー!?」
「にゃにゃにゃーーーーーーー!!」
テカテカテカテカ!!
モザイク先生、大活躍じゃん!!
どう言うこと!? 釣り上げたのは巨大魚で間違いないけど、その魚から人間のような体が生えてるじゃない!!
いや、人間の体に魚の頭が生えてると言った方が正解かな?
これはジュラってるとか言う話で収まりがつくかーーーーーー!! どう考えても進化の仕方がおかしい!!
ジュラってくださいなんてお願いしてすいません!!
この魚らしき化け物は私に釣り上げられつつもシュタッと綺麗に着地を果たす。そしてまるで本当のボディービルダーの如くポージングを取って構えていた。
え? この魚っぽい化け物は私と戦うつもりのなの?
テカテカテカテカ!!
無理無理!! だってこの魚、下半身を葉っぱで隠してるじゃん!! この魚は人間と同様に18禁の概念を持っていると言うの!?
どうやらこの魚はこれまでの敵とは比較にならないほどに知性を兼ね備えているようね。
私とミケはこの島に来てから最大の脅威と相対することとなった。
そして知性を誇る生物がまさかの変態だと言う事実、私とミケは汚物でも見るような顔付きになってガクガクと震えながら構えを取るのだった。
下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、
お気に召せばよろしくお願いします。




