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私は手を握られたまま、クリスは片膝をついたまま。そんな状態でどのくらい時間が経ったのか・・・・

数十秒かもしれないし、数分かもしれないし。ただ、私の体感としては数十分・・・いや、かなり長く感じているわ・・・誰かヘルプ!!


「アディ、そろそろ立ってもいいかな?」

流石のクリスも疲れたのだろう。私の了承を得る前に立ちあがり、椅子を隣同士に付けると私を座らせてから自分も座った。

その間、繋がれた手は離されていない・・・・

「ねぇ、アディ。僕の事、婚約者にしてくれないの?」

「いや、なんかその聞き方狡い気がするんだけど」

「狡い?どこが?僕は選んでもらう側だ。何処もおかしくないだろ?」

「選んでもらう側ってのがおかしいのよ!あなた、第一王子様でしょ?たかだか侯爵令嬢の私に選んでもらうなんて・・・私そこまで傲慢じゃないわ」

「そう言う事じゃないんだ。だってアディに王命で僕との婚約話を出した瞬間、国を捨てるつもりだろ?それが初めから分かっていて、王命なんて出すわけないじゃないか。だから婚約はアディから選んでもらわないと意味がないんだよ」


・・・・・その通り・・・王命だのなんだのと強制されるのであれば、私は侯爵家どころか国すら捨てるつもりだ。

流石だわ。クリスとしてもライトとしても付き合いが長い分だけあって、私の事をよく分かってらっしゃる。

多分、侯爵様もお母様も、国王陛下も分かっているのだろう。

釣書きわんさかでも、一度も薦められたことが無いから。

正直な所、ライトとだったら結婚していたかもしれない。

外見も内面も私好みだったし。なにより、平民だと思っていたし。


そこまで考えてちょっと複雑な心境になる。

実のところ、私の初恋はクリスだ。そして、年頃になって気になり始めたのがライト。

結局は同一人物なんだけど、なんだか騙された感が半端ない。

恐らく魔法で変化してたなら私は見破れたと思うの。自信あるわよ。

でも、彼が使っていたのは魔導具。変化の魔導具なんて王宮の宝物庫にひっそり保管されているであろう、最上級であり最重要保護アイテム。

だってこれ使ったら、悪い事も平気で出来ちゃうからね。

その王家秘蔵の魔導具を、私を騙すために使うなんて・・・いいのかよ!って思ってしまうわ。

変化までしてやっている事が、私を養うための労働だなんて・・・騙された感を凌駕して、毒気も抜かれるってものよ。

そこまでしてくれても、求婚に頷かなかった場合どうするのかしら・・・

婚約者候補がいた時期、もしあそこで解散にならず誰かと結婚していたら、どうしたのかしら・・・


「僕は誰とも結婚しなかったと思うよ」

それは、ピンク頭のエリン嬢の猛攻を、如何(いか)に阻止するかと他の候補者と共に計画を練っていた為、異性というよりは同志に近いものがあったそうだ。

次第に友情らしきものが芽生えてきて、候補者の令嬢達には将来を約束した人がいる事など、かなり突っ込んだ話もしていたらしい。

「僕もアディが好きだったから、彼女等の気持が痛いほどわかってね。父上達をどう説得しようか悩んでるところに、アディが令嬢達が可哀想だと異議を唱えたと聞いて、便乗させてもらったんだ」

いや、異議を唱えたというか・・・家庭内の会話で文句垂れただけなんですけど・・・

「もし自分が国王になったとしてもレオンに結婚させて、レオンの子供を養子にもらえばいいと考えていたし・・・・」


なにそれ!一生お一人様?しかも、私の所為で?―――重いわ・・・


「―――・・・・そう、思っていたんだけど、やめたんだ」

「へ?」

「そんな事したって、俺が幸せになれないだろ?アディが俺以外の誰かと幸せになる所を、指をくわえて見てるなんて出来るわけないし」


ガラリと変わる雰囲気と言葉遣いに、目を見開く。


・・・・・へ?『俺』?まさかの『俺』使い?

やだ、ちょっと・・・カッコイイ・・・・


そう思った瞬間、ぶわっと鳥肌が立ち顔が熱くなった。


レオンは元々『俺』と言っていたけど、クリスは『僕』か『私』だった。

イメージ的には脳筋のレオンに、知恵のクリスみたいな感じ。

だから、レオンが『私』だとか『僕』なんて使った日にゃあ・・・別の意味で鳥肌よ。

まぁ、公式な場では『私』と言ってるけど、未だに慣れないわね。

つまり、私が言いたいのはクリスが自分の事を『俺』なんて言う日は一生ないと思っていたのよ。

あくまでも、私の中のイメージね!


だから、此処で一人称を変えるなんて・・・・策士!!

ツボをしっかり押さえているじゃないのよ!!


そんな私を見てニッコリ微笑むその顔は、似ても似つかない筈なのにライトにしか見えなかった。

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