ヒロイン入学
やっとヒロイン登場ですが、まだ本人出て来てません。
いよいよ私も最終学年。
私とシンスの別れから数ヶ月。
その間にエリック殿下(第二王子)が隣国の王女であるソフィア様と正式に婚約が決まったり、私の専属メイドのマリーに赤ちゃんが出来たりと目まぐるしい勢いで日々が過ぎていった。
実はマリーはシルベーヌ公爵家に仕える執事頭と昨年結婚していて、結婚後も変わらず私の側にいてくれたのだ。
無理はしてほしくないのだけれど、私のことを妹のように思って大切にしてくれているマリーは『動けるうちはお嬢様のお世話係は誰にも譲りません!!』と今までと変わりなく働いてくれている。
妊婦であるマリーに無理をさせたくないから、事ある毎に話し相手になって欲しいなど理由をつけて一緒に座ってお茶を飲んで貰ったりしている。
そんな風に過ごしていたらあっという間に最終学年になってしまった。
今日は入学式で、一年生と最終学年に入学する平民のみが学校に行っていて、それ以外の学年は明日から学校が始まる。
明日の始業式の時に途中入学であるヒロイン達が紹介される。
始業式の在校生挨拶は勿論エリック殿下がされて、校長より途中入学者の名前とクラスが発表される。
今年の途中入学者は3名で1名が私とエリック殿下のいるAクラス、2名がトーマス様(元バトルマスター)とマイケル様(元賢者)のいるBクラスだそうだ。
入学者のうち2名が男子で1名が女子。
この女子がヒロインで、Bクラスである。
同じクラスでなかったことにホッと胸を撫で下ろす。
あの本にはクラスなど細かい部分は書かれていなかった為、発表されるまで不安で仕方なかった。
入学から卒業までクラス替えがないので、すでに出来上がりきっている人間関係の中に途中から入ってくる入学者は身分の違いもあるため、馴染むのに時間がかかる。
中には平民だからと見下す態度をとる者もいるけれど、学校の中では平等という校則があるのであからさまな苛めなどはなく、慣れればその能力の高さからいつの間にか馴染んでいるのが通年のようだが、ヒロインはすぐに馴染みクラスの人気者になったらしい。
ある日の放課後いつものようにお城で王妃教育を受け、フランシス殿下のお部屋に向かう途中でエリック殿下含む前世三人組に会った。
エリック殿下は同じクラスなので、毎日会っているけれどこの学年になってからあとの二人には校内でも会うことがなかったため久しぶりだ。
エリック殿下が心なしか疲れている様に見えたけれど、フランシス殿下を待たせてしまうのは申し訳ないからと軽い挨拶だけでその場を後にした。
フランシス殿下とお互いの近況報告などを済ませ、いつものように優しい殿下にたくさん癒され屋敷に戻った。
翌日学校でエリック殿下に昨日のことを訊ねる。
「あぁ…元気がないように見える?」
と何か考え込んだように答える殿下。
無理に話すことはないけれど、相談位にならのるので話したくなったら話してくださいと伝えると、小さなため息をついてから語りだしてくれた。
エリック殿下が仰ったのは、最近トーマス様とマイケル様が夢中になっている女子がいること。
それがBクラスに入ってきた途中入学者であること。
彼女はアニエスといい、ふわふわとしたピンクブロンドの髪で、丸くて大きな可愛らしいピンクの瞳を持つ見た目にも大変愛らしい少女だそうだ。
彼女は平民ならではの感性の持ち主で、やることなすことが新鮮と、口を開けばいつもアニエスの話ばかり。
身分の違いもあるから、あまり深入りするなと忠告すれば、まるで自分がおかしいことを言ったみたいに二人して鬼の形相で捲し立ててきて話にならないそうだ。
それでもいつも側にいる側近である彼らのことを無下にすることは出来ず、お城で話を聞くことになった。
廊下で私に会うまでずっとアニエスの素晴らしさを語っていたらしい。
それが私に会ったらピッタリとやんで、アニエスの話を一切しなくなり以前と変わらない二人になった。
そこでこれは何かあるのではと考えていたらしい。
私も何か引っかかるところを感じるが、気の効いたアドバイスなど出来るわけもなく二人で頭を抱えた。
エリック殿下には大変なことだと思うけれどしばらく二人の様子を見ることにした。
お盆休みも終わりましたので更新ペースが落ちるかもしれません。
出来るだけ毎日投稿して完結を目指します。




