はるちゃんの答え
はるちゃんは心底驚いていた。それは、そうだと思う。趣味の合う女友達、それが彼女にとっての私である。その私から、同性の私から突然告白されたのである。拒絶されてもおかしくないと思う。しかし、はるちゃんの口から出た答えは、意外なものであった。
「美琴、君に会いたいな。」
「え?」少し泣きそうな声が出てしまう。「君の目を見て話したい。」
はるちゃんは、本当に優しい。この優しさだけで、美琴は十分だった。「ありがとう。」
しかし、伊豆から京都への列車は当然もうなく、明日の朝、2人は名古屋で会う約束をした。当然の如く、美琴は眠れない夜を過ごした。口から出てしまった愛の言葉。少しの後悔と、少しの達成感。どんな結果であれ、伝えるということは出来た。今はそれでいいではないか。
名古屋駅、金時計ではるちゃんと待ち合わせをする。「美琴、いつもより化粧濃い。眠れなかったんやろ。」私のことはなんでも見抜くはるちゃん。嬉しいような、今回だけはバレたくなかったような。
丁度お昼どきだったので、はるちゃんと味噌カツを食べる。2人とも、名古屋は初めてだった。「美味しいなこれ。」「ね、美味しい!」ただただ楽しかった。このまま今まで通り友人でいれたらとさえ思った。しかし、はるちゃんは突然声色を変えて言った。
「ちゃんと返事、しなきゃと思って。」「う、うん。うん…」
「美琴。昨日のこと、ありがとう。嬉しかった。君は私にとって特別。」「え?」「うーん、今はそれしか言えないけど、私も君の特別でありたい。」十分だった。幸せ過ぎるくらいだった。女の子同士の秘密の関係に、「特別」という言葉はピッタリじゃないか。
この人生で一番ドキドキして涙を堪えた日の3日後、はるちゃんは私にキスをして、私を振るーーー。