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謎は全てとけた

ミロは訳が分からぬまま帰った。

「陛下、殿下、まるであの者は何もわかっていないようでしたが」

 皇后が言うと皇王は笑って否定する。

「そんなはずがあるまい。あれは我らの醜聞を見なかったことにするという慈悲よ」

「そうでしょうね。よりにもよって宮廷医と宮廷薬師が敵国に買収されていたというあるまじき失態……とても表ざたにはできません」

 フーベルトゥースはうんうんとうなずく。

 そしてぽつりと言った。

「まるでミロスラフは我らのことを守りに来たようですね」

 信じられないと彼の顔には書いてある。

「うむ。きっとあの方こそ皇国を守りにやってきた神の化身に違いない。そう考えればすべての謎は解けるだろう」

「た、たしかに……」

 近侍たちはみな納得してしまった。

「皇国を守るために……何ともありがたい話ですな」

 フーベルトゥースもそう言う。

 彼だけはまだ半信半疑だったが、そうであってほしいと願う気持ちもある。

 スカイエンペラードラゴンとガイアモナークドラゴンを一蹴し、シモベとする絶対的な強さ。

 すべてを見通すかのような叡智。

 敵に回ったら勝てるはずがないのだから。

 胃痛もいつしかおさまっていた。

 

「それだとすると祀ったり、平伏したりとにかく礼を尽くすべきではないでしょうか」

 皇后が夫と息子に提案する。

 

「いや、それは逆効果だろう」

 皇王は首を横に振った。

「職探しという凡人のような理由でやってきたのだろう? つまりそういう待遇をされることは求めていないということだ。気づかぬふりをし続けるのが、ミロスラフ様に対する礼儀というものではないかな」

「そうですね。彼はとにかく凡人のふりをしようとしています」

 フーベルトゥースは賛成する。

「あれだけ規格外の実力と叡智を持ちながら、どうして凡人のふりを続けているのかが謎でしたが、今のままでよいという意思表示だったのですね。謎は解けました」

「うむ」

 皇王はうなずく。

「本来ならば神の化身と崇め奉り、さまざまな行事をやっていく必要が生まれていただろう。ミロスラフ様は寛大にもそれをしなくてもよいと、行動でお示しになったのだ」

「何と慈悲深い……そして私は愚かでした」

 フーベルトゥースは自嘲気味の笑みをこぼす。

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