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へえそんな狙いが

屋敷に戻るとメヒティルトは口を開く。

「ミロスラフ様がいらっしゃったおかげで、あの愚かな父はレイラの家族に手を出せなくなりましたわ。まさに神の一手ですわね」

「恐れ入ります、ミロスラフ様」

 レイラも恐縮したように礼を言う。

「マスターはまさに神の化身とでも言うべきお方だな」

 エアロは絶賛する。

(へえ、ミロスラフってやつにはそんな狙いが)

 ミロ本人は現実逃避をしていた。

 彼らの会話にさっぱりついていけない。

(エアロはドラゴンだから仕方ないとして、メヒティルトはなんでこんなことを……頭いいみたいだから、ドラゴンの感覚が理解できちゃうということだろうか)

 メヒティルトはすごいんだなとミロは思うことにする。

 そこまで考えてふとひらめいた。

(ドラゴンから見れば俺は神扱いらしいけど、メヒティルトもそれを理解しているってことか?)

 何だか恥ずかしい展開かもしれない。

 絶対に聞けないなと思う。

 何が悲しくて神と称えられる話を聞かされなければならないのか。

(えーっと、エアロはいいとして、メアリーとポーラの給料は皇太子から出てるとして、メヒティルトとレイラの給料はどうすればいいんだ?)

 彼にとって切実な問題がそれだった。

 報酬は皇太子が出るとのことだが、まだ一ナグルももらっていない。

 つまり彼女たちに支払う分も先でいいのだろうか。

「メヒティルトとレイラの給料はどうすればいいんだろう?」

 ぽつりと声に出してしまい、しまったとミロは思うがもう遅い。

「えっ? そのためにわざわざいらっしゃったのですよね?」 

 

 メヒティルトは怪訝そうに聞き返してくる。

 

(何を言っているのかわからない)

 ミロは軽く眉間にしわを寄せた。

「マスターはきちんとご自身のお考えを我々が理解できているか、試されるのだ。面倒がらずに返答せよ」

 エアロがいかめしい顔でメヒティルトに忠告する。

 

「そうですね。わたくしはしょせん、従者としてふさわしいかチェックされる身でした」

 メヒティルトはハッとし、かしこまった様子で答えた。

「ミロスラフ様、いえご主人様がいらっしゃったことで、あの男はわたくしとのつながりを少しでも強化したいと思うようになるでしょう。つまりわたくしとレイラの生活費などを出せば、一定のつながりをたもてるわけです。そうやってザクセン公爵家からじわじわと搾り取るというのが、ご主人様の計画ですよね」

 何だその計画は。

 ミロは頭を抱えたくなる。

 メヒティルトが言っていることに彼はまったく覚えがない。

 想像すらしたことないのだから当たり前だ。

 

「しかしまあザクセン公爵家に金銭を負担してもらうというのはいい考えだな」

 ミロはその点については認める。

(なにしろメヒティルトは公爵令嬢だからな。どれだけ金がかかるのかわかったもんじゃない)

 その費用をすべて公爵家が出してくれるならば、こんなにありがたい話はない。

 しみついた貧乏性はそう簡単にぬぐえないのだ。

 

「……他にも何かありましたでしょうか?」

 エアロが不思議そうな顔をしている。

 

「何を言っているんだ、お前?」

 ミロは訳が分からない。

 どうして今のやりとりでそうした発想になるのだろう。

「他にもあるでしょう。公爵家の女を引き抜いてシモベとしたのですよ。他の家から人材を引き抜くための前例となりました」

「ああ、そうか」

 メヒティルトがにこりとすると、エアロは納得する。

「つまりこの国は内側から崩せるし、その気になれば乗っ取ることもできるというわけですな。力があるのに力をあえて使わない。それこそが優雅というものでしょうか」

「人間の言葉をしゃべれ」

 たまりかねたミロが言うと、メヒティルトがすかさず応じた。

「一から十までしゃべらず、黙ることを覚えろという意味ですね。失礼しました」

 

 何でそうなる。

 本当にこの少女は頭がいいのだろうか。

 ミロは心底疑問に思った。

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