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最強の少年、海を渡る  作者: silver
10/20

天才魔術師

 ……どうやら俺は5分程気を失っていたらしい。


 その頃にはロルシーとユリアも落ち着いたようで、申し訳なさそうに俺に頭を下げていた。…その二人の背後で仁王立ちしていたアンナさん。何があったかは分からないが当然無視だ。



 気を取り直して楽しいティータイムが再開されたのだが、ディーノは俺が気絶している間に帰ったらしい。相変わらず空気も読まず俺の邪魔しそうになったんだから、ハッキリ言って同情の余地は無い。



 ユリアもすっかり素の自分をさらけ出し、俺、ロルシー、ジークと楽しい時間を過ごした。ロルシーにしてもジークにしても、王女であるユリアに、親しみを込めてタメ口を話をしている。うん、良かった良かった。


 最後は、今度俺が皆に自家製うどんをご馳走すると言う約束をしてお開きとなった。



 俺とジークは男子寮、ロルシーは女子寮に住んでいる為、同じユリアの馬車で送迎。ジークもロルシーも貴族で、実家もそう遠くないらしいのだが、独り立ちの意味も込めて寮生活を選択しているようだ。




 翌日、いよいよ今日から本格的な授業が始まる訳だが…不安しかない。だって俺、マトモに学舎に通った事なんて無いんだもん。



「おはようリョーマ!昨日は楽しかったな!」


「おう、そうだな。」


 学園迄の道を歩いていると後方からジークが声を掛けて来た。ジークとは昨日一日で一気に打ち解けたし、やっぱ気の置ける友達がいるっていいなぁ。



 歩きながらも、周囲の視線が気になる。そういやジークもディーノに並ぶ有望株だし、昨日ロルシーと一緒にいた時と同じ様な視線だ。


「…なんか周りの目がウゼェな、まとめてシメてくるか?」


「やめろ!尚更俺の評判が悪くなる。」


「俺は完全実力主義だからな。俺やクソ勇者より遥かに強いお前が蔑まれるのが気に喰わないんだよ。」


「おいおい、俺がどの位強いかなんてまだ分かってねーだろ?」


「昨日のディーノとの件だけでも分かるさ。悔しいがディーノは俺よりも少〜しだけ上なハズだからな。多分マイルもディーノと同じ位だし、学年最強はお前だよ。」


 やっぱ分かってない。俺がその気になったら学年最強どころじゃ無いんだもん。


「別にいいよ。ロルシーにユリア、ジークもいるし、孤独って訳じゃ無いから。」


「リョーマ…お前、ハート強いな。流石は俺が認めた男だぜ!」



 ジークと談笑しながら教室に入る。既にロルシーとユリアも登校していた。


「おはよう、リョーマ君!」


「おはよう、リョーマ!」


 お?ユリアの雰囲気が明るい。完全に素で行く決心がついたのかな?



「昨日はありがとうね、リョーマ。おかげ様で今日からは楽しく学園生活を満喫させてもらうからね!」


「ハハッ、やっぱユリアはその方が良いよ。」


「うん!ありがとね!」


 そんなやり取りを、ロルシーも嬉しそうに見守っている。もう周囲の視線なんかどうでもいいよ。うん。



 授業が始まる。


 文学、数学、科学…と、やはり俺にはハードルの高い授業が続いたが、それでも思った程ではなかった。文学や数学の基礎は隊員に習ってはいたのだが、案外その隊員の教え方が上手かったんだろう。科学に関してもそうだが、戦時や日常生活で既に実践していた事が多く、例えるなら応用を覚えてから基礎を学ぶような感じだった。


 で、次の魔法学だったのだが…俺は、魔法の概念がイマイチ分かってないからチンプンカンプンだったのだ。ヒノクニでは魔法の事を”オーラ”って言うんだが、少しだけ発動条件が違うからなんだが…。



 昼食を取るためにジークと食堂に向かう道すがら…


「え?リョーマ、魔法使えねーの!?」


「いや、幾つかは使えるが、理屈は分かってない。」


「だってお前、昨日魔力で身体能力上げてたじゃん!?」


「あれは…本能っーか、ヒノクニではオーラって言ってたから。」


 そんな話をしていると、何者かが俺の服の裾をちょいちょいと引っ張って来た。振り返ると、そこにはスッポリとフードを被った小柄な女の子がいた。確かこの娘…。


「……今の話し…オーラ…興味がある。」


 俯いたままだが、何故か眼鏡がキラリと光る。天才魔術師ネメシス・ロンダリングだった。



「魔法と東洋のオーラは呼び方が違うだけだと言われてるけど、私はそうは思わない。理屈を調べると、ほんの少しだけ発動に誤差がある…。」


 ネメシスが顔を見上げる。その表情は完全に俺を実験対象として見ながら不気味にニヤリと笑みを浮かべている…。黙ってりゃ可愛らしい幼顔なのに、それが逆に不気味だった。



「ネ……ネメシスが喋った…?」


 何故かジークが信じられないという表情を浮かべる。


「…うるさい、脳筋。ワタシが興味があるのは東洋の素材だけ。話し掛けないで。」


 え?俺、素材扱い??


「おい、おい、リョーマ。このネメシスは研究馬鹿で滅多に他人に話し掛けてなんて来ないんだよ。」


 そうなのか?でも、研究対象としてロックオンされただけみたいなので全然嬉しくない。



「ちょっと…オーラを発動してみて。さぁ、早く。」


「いきなり、教室じゃ無理だって!昨日は怒りのあまりに発動してしまったが、校則で基本的に魔法の使用禁止だろ?」


「あなたのはオーラ。魔法じゃ無い。さぁ、さぁ。」


 同じ事だっつーの!!



 困り果てた俺の元に、ロルシーとユリアがやって来る。そして…


「………チッ、邪魔が入った。」


 ネメシスは残念そうに俺から離れていった。



「ネメシス…?リョーマ君、ネメシスとも知り合いなの?」


 既に去っていったネメシスの背を見ながら、ロルシーは驚いたように俺に聞いてきた。


「いや、今初めて喋ったんだけど…。」


「ネメシスと喋っただけでも凄いじゃないですか!?」


 ジークと同じ様な反応。どんだけ無口なんだよネメシス。


「ネメシス・ロンダリングですか…。弱冠14歳で魔法学の最高権威である大賢者の称号を得た天才魔術師。今年の一年は豊作だと言われてるけど、ロルシーやジークには悪いけど私はあのネメシスこそが最も逸材だと思ってるわ。」


 ユリアが太鼓判を押す程か…。そんな奴にロックオンされちゃったの?しかも、良い研究材料みたいな感じで!?



 食堂には俺、ジーク、ロルシー、ユリア、ユリアの側で影の様にアンナさん。周りから見たらやはり俺の存在だけが悪目立ちしている様だ。


「…リョーマ、俺、やっぱちょっとシメてくるわ。」


「やめぃ!逆効果だっつーの!」


「分かってるよ、冗談だ、冗談。」


 冗談と言いつつも、ジークの目はマジだった。俺の事を思っての行動なんだろうが、本当に逆効果なので止めていただきたい。



「能力鑑定でもすればお前が只者じゃねーって誰でも分かる結果が、出るんだろうけどな。。」


 …能力鑑定。そんなの行われたらとんでもない事になりそうだな。ヒノクニでは鑑定の文化など無かったので、鑑定によって俺の能力がどの程度まで詳細に分かるのか俺には想像すら出来ないのだから。


「なあ、能力鑑定って、どの程度の能力が分かるんだ?俺の国では鑑定なんて義務は無かったから分からないんだ。」


「そうなのか?鑑定は…まず称号。これは自分で決められるものじゃない。もって生まれた資質と、これまでの積み上げてきた能力が参考にされる。ディーノやロルシーなんかの称号もそうやって決められたものだ。

次に総魔力量。持って生まれた魔法を使う為のエネルギーだな。これもある意味持って生まれた資質だが年齢と共に増減するし、努力次第では総量を増やす事は可能だ。

後はレベル。レベルは細かい数値を合算させた数値で、パワーやスピード等の細かい部分を鑑定するのは国でも一人二人しかいないから普通には出来ないがね。

つまり、レベル・称号・魔力量の三つが今日の鑑定で分かるんだ。」


 レベルと魔力量と称号か………俺の鑑定はどういう結果になるんだろう?まぁ、今後そんな機会があっても、なんとか隠蔽しないととんでもない結果になりそうな気配がするので気を付けないとな…。



「ま、来週には模擬戦の授業もあるし、そこで見返してやれよな。」


 模擬戦か〜…ある意味それも鬼門だな。まぁ、適度に勝つつもりではあるし、学生相手ならそれが可能な位の実力差はあるとは思ってるが。



 ここで、ジークが何か考え込んでるようにして、俺に提案して来た。


「……なぁリョーマ、模擬戦の相手…俺じゃ駄目か?」


「お前と?なんで?」


「あんまり弱い奴とやってもお前の力が存分に発揮されないだろ?俺とやればお前の強さを多少なりとも引き出せると思うし。つーか、俺がお前の本当の実力を知りたい。」


 ジークとか…。でも、ジークはディーノやマルスって奴と同等の強さと認められているんだよな。そんなジークと互角、いや、負けるつもりは無いので勝ったりしたら、今度は別の意味で目立っちゃいそうだな。


「ん〜気持ちはありがたいが、お前の相手は遠慮しとくよ。折角友達になれたんだし、俺は仲間とは戦わない主義だから。」


 嘘です。模擬戦なら牙狼の仲間と死ぬ程やってました。


「そいつは残念だな。俺としては純粋にお前と戦ってみたかったんだが。」


 うん、でも諦めてくれ。



 模擬戦か…どの程度の加減で戦ったらいいのかなあ……あ!こんな時はあのヒトに聞いてみよう!!

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