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よん!

「それよりも私、お逢い出来なくて本当に寂しかったですわ」

「私もですわ。お忙しいとお聞きしてはおりましたが……」


 も う 帰 り た い 。


 ホント女って好きじゃないわぁ。ああ、これじゃあ語弊があるか。『陰険な女』が好きじゃない、です!可愛い子大好き!美人大好き!!だもんねー。

 目の前の人達、綺麗ではあるんだけどね、あたしを見る目がねー?今は無視する方向みたいだけど、せめてセドリュカ王子いないとこでしようよ。セドリュカ王子も気付いてんよ。

 あたしに対する興味よりセドリュカ王子に話しかける方が大事なんだろうけど、ちょくちょく嫌味も挟んでくるし……。


 溜め息吐きそうになったあたしは別に悪くないよねぇ。困ったような微笑みに隠して出さないようにはしてるけど。困ったようなって、わざわざ作るまでもなく、この状態にお疲れなせいで勝手に出ちゃってるんだけどね。

 ラノベとかで読んだ通り、貴族って面倒臭いねぇ。やっぱりあたしには合わないや。

 本当にこんな時間を過ごすより妄想してたい……切実に。

 だけどいつまでもこうしているわけにはいかない。エミリーヌさんなんて言ってたっけなぁ……。



「うぉぉぉぉ……!」

「まだ締まりますね、もう少しいきますよ」

「出る出る出る出る出る!」


 奇声が止まらない止まらない。今現在女官さんがコルセットの紐をこれでもか!ってぐらい締めてくれています。正直口から色々出そうです。

 そんな瀕死状態のあたしを見て、アクセサリーとか準備してくれている侍女さんはくすくす笑ってる。くっ、代わってくれてもいいのよ!?


 女官さんの名前はエミリーヌ=コン=エマニエルさん。あたしの部屋付で、身の回りだけじゃなく、本来なら仕事の補佐までもを任せられる人材らしい。あたしは今仕事をしていないから、ほぼ身の回りの世話を御願いしているという状態だ。とても有能らしく、わからないことは彼女に聞いたり任せれば問題ない、とはセドリュカ王子と王妃様のお言葉だ。

 そしてマナーだとかをあたしに教えてくれたのも彼女だ。にっこり笑顔で否と言わせない有能さ、理解し切れないホント申し訳ないあたしの脳みそにもしっかりと教えてくれる有能さは、身を持って体験させていただきました。

 栗色の髪を解れなくきっちり編んで纏めていて、見た目もキャリアウーマンみたいで美人さんです。


 侍女さんはサクラ=コン=ルドフォアさん。彼女もあたしの部屋付で、衣装やアクセサリー、靴等の管理を主にしてくれている。エミリーヌさんの部下になるらしい。そして驚いたことに、彼女の御先祖様に、黒髪黒目の日本人がいたんだって。御先祖様といっても彼女のお婆ちゃんのお爺ちゃんだそうだ。その方とお逢いしたかった、とも思うけど、もう故人だしね。

 そう、彼女はこの世界に『落ちた』日本人の子孫になる。見た目は日本人でもないんだけど。彼女の家系では日本人風というのか、黒髪だったり黒目だったり、彫りの浅い日本人風顔の人は……えーっと、彼女のお婆ちゃんのお兄さんの子供の1人の子供だから……はとこ、かな?今生きてる人では、その人がこの世界に『落ちた』人に1番似てるらしい。他に似てた人はもういないとか。先祖返りのようにふと、そういう人が産まれるんだって。その人は冒険者として放浪してるとか。いいなぁ、冒険者。あたしも魔法や剣が使えたら色々な所へ旅してみたいと思ったんだけどね。無理ぽー。


 そして今現在、誰でもあたしの部屋に入れる理由にはいかなくて、彼女達2人が全てをこなしてくれている。掃除とかお茶の用意とかね。本来はメイドさんがやってくれる仕事も彼女達に御願いしている状況なんだって。

 別にあたしは貴族じゃないし、こうして色んな人に傅かれることになるのも好きでもないんだけどね。皆の仕事だから口を挟むわけにもいかない。いや、お風呂に関しては全力で口挟んだんだけど。洗ってもらうとかただの拷問なもので。他人様に見せられる体じゃないもん。たるたるのぷにぷにっすわぁ……。ここしばらくは運動らしい運動が、ダンスとか歩き方とかそういうのしかなかったし。いや、意外と運動になるよ?今まで気にしたことないような場所が緊張も合わせて筋肉痛になったしね。でもね……幼児体型とまでは言わないけど……うん、うん。……もう少しお胸様があったら……。少しわけて。


「大丈夫ですか?」

「ああ、はい、大丈夫でふ……」


 遠い目しちゃってたかな。心配されてしまった。へらりと力なく微笑んでエミリーヌさんの方を向く。


「トーコ様はもう少しお食事の量を増やしても良さそうですわね」

「ええ!?これ以上ぷにぷには嫌です」

「いえいえ、トーコ様は細身すぎですわ」

「いやいや、どこがですか!?」

「色々、ですわ」


 ああ、胸っすか。お胸様っすか。確かに皆さんに比べたらないっすわぁ。今日は朝から磨かれて磨かれて磨かれて、お肌はぴっかぴかですけどね。お肌だけは自分のだけど素晴らしいよ、ホント。


「確かにトウコ様は華奢ですよね」

「華奢!?」

「ええ」


 華奢とか言われて自分の体をまじまじと見下ろしてみるけど、どこが華奢なのかさっぱりわからない。これは華奢っていうんじゃなくて、薄いっていうんじゃないかな。筋肉もう少しつけるべきかなぁ……。


「ああ、骨格からして違うのかも。ここの人達ってあたしと比べて皆さん身長もありますし。基本的な所から違うんだろうなぁ……。どこから見てもあたし子供にしか見えない」

「お可愛らしいじゃありませんか」

「もう成人する人間が子供にしか見えないのは残念すぎですよ」

「そうでしょうか?」

「そうなんですよ。こう……もう少しぼん、きゅ、ぼん、と……」


 手で空中にふわりと瓢箪の形を表すと何故か2人に笑われた。


「折れてしまわないか心配にはなりますが、トウコ様は今で十分魅力的ですわよ」

「折れませんよー、流石に」


 3人で他愛ない話をしながら着々と準備が進む。着せられたドレスが……いや、着せられたっていうかドレスに着られてるっていうか……。ドレス自体はとっても素晴らしいんです。素晴らしすぎてあたしに合わないっていうね。ドレスに申し訳ないわこれ。ってなるぐらい。

 薄いグリーンを基調に裾に向かって濃くなっていくグラデーション。ドレープたっぷりで刺繍された花が光に当たるときらりと光る。

 ささやかな胸元にはレースたっぷりで、ついでに宝石っぽいものが見える。宝石だと思いたくないんだけど、宝石にしか見えなくてホントこのドレス着てるの怖い。これでいくらするのかも怖くて聞けない。分不相応だよこれ。

 お姫様とか子供の頃には憧れたものだけど、似合わなさ過ぎて辛い。


 若干死んだ目をしながらサクラさんに化粧をされる。化粧はどこも一緒だ。だけど1度閉じた目を開いて鏡で見てみれば、素晴らしいビフォーアフター。化粧怖い。化けてるわあたし。自分でするより少し濃い目だけど、浮いてない。

 髪はハーフアップで、下ろした毛先は軽く巻かれてる。結い上げてある部分は花で飾られている。

 耳には小さな石のイヤリングが光り、首元も同じ石のついたネックレスがある。イヤリングよりは大きい石ですがね。

 最後に手袋をつけてもらって出来上がり。いやぁ、どこのお嬢様ってぐらいの仕上がりにしていただきました。元があたしだから詐欺にしかならないんだけど、見た目だけならお嬢様でもいける!別に着飾るのも嫌いじゃないし、こんな機会でもなけりゃ絶対しないけど。


「お綺麗ですわ、トーコ様」

「本当に」

「ありがとうございます。お2人のおかげです」

「会場ではセドリュカ王子のお傍から離れてはいけませんよ?」

「勿論です。怖くて離れられませんよ」


 くすくすと笑い合える相手がいるって素晴らしい。お披露目会は気が進まないけど、こうして2人がいてくれるから心がちょっと軽くなる。


 ――コンコン――


「はい」

「セドリュカ王子のお越しです」


 ああ、とうとう時間が来てしまったか。エミリーヌさんが扉を開くとそこには煌びやかに輝く王子様がそこにいらっしゃった。

 いや、比喩でもなく王子様なんだけど。もうキラッキラの王子様がいたよ。なにこの眩しさ。直視出来ない!いや、勿体ないからガン見するけど!

 髪形はいつもと一緒かな。いや、微妙に固められてるか何かしてるのかもしれない。キラってしてる。

 服は上下真っ白。タキシードじゃないな。どう表現したらいいのかな……白い派手な学ラン?詰襟できっちり着こなしてて、背筋もぴん、としてるしイケメン軍人っぽくて鼻血出そう。これが王族の正装、ってやつなのかな?肩から腰に赤い紐が2本付けられていて、その肩からマントが背中に垂れている。胸元にはブローチ、じゃないな、勲章なのかな、これ。金色に輝く勲章が1つ付けられている。

 白い手袋に白い靴と全身真っ白だよ。いや、ちょこちょこ違う色味で飾られているんだけども。眩しくて目に痛い。

 そんなキラッキラなセドリュカ王子もあたしをじっと見てる。目が見開かれてるからきっとあたしの化け具合にビックリしてるんだろう。サクラさんの腕のおかげだよ!凄いでしょ!

 あっ、フェルナンド王子は何色なんだろ!?同じ白なのかな?対の黒とかもいいんじゃない!?2人並んだらきっと素晴らしいと思うんだけど!は、早くフェルナンド王子と並んで欲しい……!腹黒宰相様でもいい!ホントどんな衣装なのか気になる!!


 1人そわそわしていたらエミリーヌさんに脇腹を小突かれてセドリュカ王子が小さく身動いだ。


「その……似合っている……」

「え、あ……ありがとうございます。セドリュカ王子もとても素敵です!」


 無表情なのに目が泳いでるし、あたしを見てないセドリュカ王子にちょっと笑える。ビフォーアフターにビックリしてるのはわかる。でもいつもならちゃんと目は合わせてくれるんだけどな……。変わりすぎて落ち着かないのかな?ま、いいんだけどね!お披露目会で浮かなければいいのさ!お世辞でも褒められたら嬉しいからね!

 綺麗な格好にしてもらえて、目の前に鼻血もののセドリュカ王子がいてめちゃくちゃテンション上がってる自覚あるよ!早くフェルナンド王子とか腹黒宰相様の姿も見たいんだけどね。ああ、軍服着てる人いるかな!?軍服も最近ハマってきてるの!早く絡みが見たい!!

妄想してない(´ω`)

物凄く落ち着いてるなぁ(´ω`)

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