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熔解

 恋とは空気のようなもので、鉄のようでもある。熱しやすく冷めやすいなんて失礼だが、香は英一にそう言われた。

「あ、そう。でも友達と言われて肯定したんだから、英一はわたしの友達でしょ。」

 英一は何も言わずにぼうっとしていた。

 冬。河原で。夏には夢見ていた河原で。あれから、ほとんど会う日はなく、香は不安で過ごした。英一の調子が悪かったからだ。それは分かるが。でも、香にはだめだった。だめだったのだ。

「香は、俺の調子が悪いとき、待ってはくれないんだな。」

「うん。待てなかったよ。不安だったよ。」

「不安て事は信じれないんだな。」

 香は後ろを向いて、缶のしるこを飲んだ。あれから、太った。不安で。もともと不安症状を持っている香が、恋で不安になって薬が増えて。その薬に食欲のコントロールを失わせる作用があって。

 だが英一は香が太っていても気持ちは変わらないようだった。

「あなたから、付き合ってと言うことだったよね。香さん。」

「もう無理だよ。病気も悪化したし。」

 英一の具合の悪いのはまだ治っていない。それでも無理して外に来ていた。

「分かった。友人同士と言うことで。関係は続けたい。俺は。香さんは?」

「わたしも、友達同士と言うことで。」

 それぞれ帰路に着く。

 途中から現実なのか妄想なのか分からなくなっていた。香には妄想症状がある。わたしは、英一と付き合ったんだろうか。分からない。

 草を踏んで歩いていると、雲の上にいる感覚になった。まわりには雲、雲雲。

 はっきりしないことは苦手だ。そう言う意味では辛い恋だった。

 あたらしい朝、君は僕を見つける。

 香はまた、付き合おうと言ってくるだろう。英一には予感があった。それは、英一には喜ばしかった。

 香は直感で動くところがある。もう少し理性も鍛えた方が良いが、英一にとっては香の不安定さは魅力だった。不安定な女性を文章で作り出すのが好きな英一にとって香はモデルなのかも知れない。

 ときどきメール添付で送られてくる香の絵は、英一を思わせる。香は男性を描くアーティストだ。

 また日常が過ぎていき、あたらしい朝が来たとき、迷う心の中で香は英一を見つける。不幸なのは、お互いに精神病だと言うことだが、お互いの出会いが精神病だからなのでそれは幸運でもあったのだ。

 幸運なのだ。



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