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死神さん、人になる。

はじめに

この作品がご都合主義的展開を含むこと。

また、作者が未熟なために人によっては耐え難い矛盾や違和感を感じる可能性があることが予想されます。


百合描写があります。

苦手な人はブラウザバックを。


これらに対し、不快に思った際は速やかにページを閉じ、この作品を切ることをお勧めします。無理して読むことは息抜きや趣味の読書では無いと思います。

また、その後他の楽しい作品を探しに行くことを推奨します。

以上のことを踏まえた上でどうぞご覧ください!

草木も眠る丑三つ時。

町から光は消え、人々も眠りにつく。

そんな中、一つの人影か動いていた。

その人影は奇妙なことに空を飛んでいる、さらには手に大鎌を持ち、月明かりを反射して鈍く光っていた。

真っ黒なローブ、そのフードが風で時折外れるたびこれもまた真っ黒な長い髪が見える、人影は少女だった。

空を飛びつつ紅い両目で眼下の森を見渡すこの少女。




死神である。




「今日も一日疲れました…」

そういって少女が伸びをする。

実のところ、死神である彼女に肉体的疲労など存在しない。気分の問題である。


「こういう時は…あれに限ります」

少女はそう言うと森に降り、自分の背丈程の鎌を振るった。

それと同時にいくつもの青白い魂が浮き上がってくる。


「おー、大量です」

基本、死神は生物を無闇に殺しはしない。

死を見届け、送ることが仕事である。

しかし、ごく稀にこの少女のような殺しを好き好む死神が生まれる。

もちろん発覚すれば罰を受ける。


「うーん……快感です。神様は無能ですし、バレなきゃいいんです」

少女は死体を手慣れた手つきで片付けると、空を飛び、天へと帰っていった。

その姿を小さな鼠が草むらからじっと見ていた。



「はぁ…ただいまです」

少女が自宅の玄関の扉を開けて、呟く。

もっとも、返してくれる相手はこの家にはいないのだが。

大鎌をソファに投げ捨て、ローブを脱ぎ捨てると、少女は椅子に体を投げ出した。

少女はポケットから先程の魂を取り出し、眺める。


「はぁ……綺麗です」


「えぇ、綺麗ね」

少女の体が驚きで跳ね上がる。そのまま全力で玄関へと逃走を開始した。


「ちょっと、逃げちゃ駄目よ」

逃げ出した少女の両手足に鎖が巻きついて縛り上げる。


「ど、どうしたんです。イムル様、急に」

イムル様と呼ばれたこの女性。死神を統べる死の神である。

死神とは似ているが別物である。死神の上司のようなものと言える。


「特に理由なんて無いの。そんなことより、シルヴィア?さっきの魂、どうしたの?」

少女、シルヴィアの背に冷や汗が流れる。


「え、えっと、それはですね。さっき迷っていた所を保護したんです」


「本当?」


「は、はい」


「本当にそう?」


「そうです」

イムルが大きく溜息をする。

俯くシルヴィアはイムルが残念そうな目をしていることに気づかなかった。


「この映像を見てくれる?」


「は、はいもちろんです」

イムルが映像を壁に映し出す。

そこには、先程のシルヴィアが映っていた。

シルヴィアの顔がサッと青くなった。


『うーん……快感です。神様は無能ですし、バレなきゃいいんです』

映像が消える。


「これについて、どう思う?」

イムルがシルヴィアに問いかける。

シルヴィアは黙って震えるだけになってしまった。


「シルヴィア、あなたには罰を受けてもらうわ」

シルヴィアの肩がビクリと震える。

命を奪った代償は、何千年もの拘束または。


存在の消滅。


「あなたへの罰は…」

シルヴィアが恐る恐るイムルを見る。


「下界への追放にするわ」


「へ?」


「何?もっと重い罰にしようかしら?」


「充分、充分です!」


「じゃあ、詳しく言うわね、あなたは人間として死ぬまで下界で生きてもらうわ、寿命がきたらここに戻ってくる」


「寿命は、どれ位なんですか?」


「きっかり100年よ」

これを聞いた時シルヴィアは内心歓喜していた。死ぬかもしれないと思っていたのだから当然である。




「じゃあ、行ってらっしゃい」


「はい」

シルヴィアの姿が消える。下界へと向かったのである。

それと同時にイムルの肩に座っていた小さな妖精が声をかけた。


「イムル様、少し甘過ぎるのでは?」


「そうね、でもシルヴィアは新人ながら、最も魂の回収率が良かったわ、あの不正を覗いてもね、だから消しちゃうのも、勿体無いと思って。それに私のお気に入りだしね。大丈夫よ。きっといい子になって帰ってくるわ」


「だといいですけど……」


「こっちからは、シルヴィアのことも見えるし駄目なら……消しましょう」

そう言ったイムルの顔は、凄く悲しそうだった。




シルヴィアが、そろそろ到着する頃だと考え始めた時、ちょうど体が具現化した。


『何だか、狭いです』

シルヴィアは話そうとして声が出ないことに気づいた。


『な、何でですか?』

話そうとすることは全て声にならない。

それだけじゃなく、何も見えないぐらい真っ暗である。


『ここは何処でしょう?』

シルヴィアがそう思っていた時、この場所から体が押し出される。シルヴィアも合わせて動いて外にでる。


『外にでたけど、い、息ができないです⁉︎何とかして、息を…』


「お、おぎゃゃあああ」


「無事生まれたみたいだね」


「えぇ、元気そうで良かった……」

金髪の青年と、黒髪の女性に見つめられながら。こうして、シルヴィアは誕生した。



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