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神の泉  作者: 中村いな
第二章
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第六話

第六話です!

遅くなって、すみません。

 花子と優子の二人分の荷物を詰めたキャリーケースを引いて、新幹線のターミナルを二人は歩いていく。

 その周りには同じように大きな荷物を持った人が沢山いた。

 優子が最後に旅行をしたのは中学三年生の修学旅行だったと記憶している。

 あの時からまだ、一年も経っていないはずなのに随分前のことのように感じた。

 祖父母の家へ、今回は母方のことを指すのだが、二人に会うのはかなり久しぶりのことだった。

 否、久しぶりというより初めてという方が優子の感覚に近かった。

 というのも、父の仕事の関係で転勤の多かった村上家は、優子の長期休みに合わせて出来る限り引越しをしていた。引越し後はどうしても忙しく、帰省する機会を作れなかったのだ。

 そういうわけで、なかなか会う時間がなかったのだ。

母の花子によると、

「最後に会ったのは、まだ赤ちゃんだった頃くらいだったかな」とのこと。


 一方で、父方の祖父母のことは優子の記憶に残る程度には会っていたのだった。

 けれど、母方の祖父母、つまり二人の苗字をとってこれからは川上の祖父母と呼ぶが、その川上の祖父母とは何か理由があって会いに行けないのだと思っていた。

 なかなか普段でも川上の祖父母の話が持ち上がることがなかったため、優子は勝手にそのように解釈していた。

 身内のことなのに何も知らずにいたのを不思議に思うかも知れないが、すっかりそう思い込んでいたのだ。

 優子はなぜ川上の祖父母に会いにいかなかったのかと初めて花子に尋ねた。


「会いに行かなかったのじゃなくて、会いに行けなかったの。」


 いつもの笑顔で花子は言ったが、優子はいまいちその意味が分からなかった。


「病気とかで入院してたとかじゃないのよ。家がね、田舎にあるの」


 田舎。そう聞いて浮かんだのは緑が一面に広げられた田んぼやその間を縫う細い土の道。人が全てを自給自足する現代とはかけ離れた生命力の満ちた空間だった。

 優子はビルやアスファルト、町の喧騒のないまだ見ぬ「田舎」に思いを馳せた。


「それが、ちょっとの田舎だったらよかったんだけど」


 花子は困ったように笑った。


「超、が付くほどの田舎なの。」


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