第九話
お久しぶりです!
遅くなりましたが第九話、
どうぞ楽しんでいって下さい。
車を止め、優子は始めて村の土をその足で踏みしめる。
一、二歩と下がると昔ながらの黒く光る瓦屋根とその家の全貌が見渡せた。
祖父母の家は、周りの田んぼや道に比べて一段上がった所に建てられている。
そこまで続く緩い坂道をこれまた祖父に車から降ろしてもらった荷物を押しながらゆっくりと登っていく。
「懐かしいなー」
花子は久々に実家に帰ってきた喜びから周りを何度も見渡していた。
そして優子もまた、いつもとは全く見慣れない風景に周りを観察してしまう。
「優子ちゃん、珍しいかい? 」
「はい」
「そう、なんというか凄く解放的な、気分になります」
はにかみながらなんとか優子は言い切った。
祖母は、ふふっと笑う。
「そうさいな。ここを気に入ってもらえたんなら、良かった」
その笑顔を見ていると、このような未知の片田舎に戻ってきた甲斐があったと、早くもそう思えた。
「ゆうこー、何してるのー? 早くおいでー」
そう言いながら、先頭を歩いていた花子はいの一番に玄関の引き戸を開ける。
「ん?」
小首を傾げた優子は何か当たり前で大切な行動が一つ抜けていることに気付いた。
「あの、家の鍵は・・? 」
今祖母は真横に、祖父はいつの間にか居なくなっているが二人が鍵を渡した素振りはなかったはずだ。
まさか、花子は帰らなかった何十年もの間ずっと実家の鍵を所有していたのだろうか。
「ああ、鍵ねー。こっちじゃそういう習慣は、ないかな。あはは」
早速、カルチャーショックである。