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気の身気ままに  作者: 猫の手
1章 出会い
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1.出会い

「どこだここは・・・」


目を覚ますと見慣れない光景に辺りを見回した。どこからか光が入ってきているので薄暗い中ではあるが洞窟の中にいるのが分かった。

だが、どうしてこんな場所にいるのだろうか。


「夢・・・じゃないよな、ん?」


何か音が聞こえ、そちらに向くと大きな何かが動いていた。


「クゥ・・・クゥ・・・」


大きな何かは生き物のようだ。近づいて分かったが大きい。巨大な蛇のようなものが体を丸めているように見えた。


「クゥ・・・、ク・・?クァー・・・キュウ?」


その生き物が目を覚まし体を持ち上げた。そこで生き物の正体に気がついた。


「ドラゴン・・・?」



・・・・・・

・・・・

・・


まずは確認しようと思い、昨日までの記憶を思い出そうとした。

学校から帰って来て、晩飯を食べ、風呂も入り、空いた時間に勉強と明日の用意をして布団に潜った。もはや日課となっているいつもの行動だったはずだ。

記憶は確かに残っている。名前もだ。俺の名前は高橋涼太(たかはしりょうた)、年齢は今年で18、進学しようと勉強中の学生。よし記憶は残っている。


で、立ち上がり周りを確認する。

洞窟の中、ドラゴンが傍らにいる。普通なら恐怖しか無いはずなのに何故か俺は落ち着いていた。このドラゴンだが吼えたりしない。それどころか子犬のような少し高い声で鳴くのだ。

そのドラゴンだが起きてからずっと俺を見ている。食われる様子も無ければ襲ってくる様子でも無い。むしろ俺の様子を楽しんでいる風に見える。

一先ずドラゴンの事は置いても良いかもしれない。今度は洞窟内部を確認していった。


どうやら俺が起きた場所は入り口近くらしく光が差し込んでいる方向とは反対方向にまだ奥行きがあった。

入り口から外に出ると森が広がっていた。とにかく広大な森だ。途切れている部分が無かった。

と、後ろから先ほどのドラゴンが歩いて来た。そのまま俺の横を通過すると翼を大きく広げ飛んでいった。

飛び立つ際に大きな風圧に寄り洞窟へ向かって倒れそうになる。


風圧が収まり再度目の前の森を見つめる。


「何でこんな所にいるんだ」


ドラゴンを見た時点で嫌な予感がしていた。ここは俺の住んでいた世界じゃない。

異世界、そんな言葉が頭に浮かび上がってきた。目の前の森も俺の知っている中では見たことが無い。

ぼーっと立っていると先ほどのドラゴンが戻ってきた。手足に何か実を持っている。その実をドラゴンは俺の前に置いた。


「キュー」

「これくれるのか?」


そう聞くとドラゴンは1つ頷いた。

起きたばかりで何も食べていなかったので調度良い。食べてみると甘酸っぱい。蜜柑のような柑橘類の果物のようだ。

そしてこの果物も見たことが無い。やはり異世界のようだ。


「これからどうしようか・・・」


腹ごしらえを終え、今後について考え始めた。

元の世界に戻る方法、だが分からない。別世界に来たのなら戻る方法もあるとは思う。

それなら探す事になるが、探す間の生活はどうするか。そう考えて行くと段々と不安になってきた。


「キュー・・・」

「ん、心配してくれているのか」


ドラゴンが顔をゆっくりと近づけて心配そうに様子を伺ってきた。そういえばこのドラゴンは何故か俺の傍から離れない。

何故だろうか。そういえばドラゴンが起きた時、俺を見ても驚いた反応が無かったのも気になる。

この洞窟はこのドラゴンの住処だろう。それなら起きた時に自分以外のものを見たら普通は敵と認識して排除しようとするんじゃないか?

それが無いと言うことは、俺自身をこの洞窟に運んだのでは無いか。


「なぁ、俺を洞窟に運んだのか?」


聞くとドラゴンは頷いた。

それじゃどこから運んだと聞くと案内してくれるのか背中を向けて長い首で促してきた。

ドラゴンに乗れる機会が来るとは思わず少し興奮しながらも背中に上った。

ドラゴンは首の根元辺りで俺が足を回し座るのを確認すると翼を広げ、羽ばたきだした。

乗っているからか先ほどよりも弱い風を感じながらドラゴンと共に空へと飛び立つ。


「おー、これは凄いな」


眼下に広がる広大な森を眺めながらそんな感想を漏らした。中々早い速度を出しているが、何故か風圧を感じない。

どうしてだろうかと思ったが時折ドラゴンが目線を俺に向けて気にしている事から、このドラゴンが何かをしているようだ。

少しして目的地付近に近づいたのかゆっくりと下降していく。そこは川幅が広く浅い川だ。

地面に降り立ち、その場で俺も降りる。ドラゴンは少し当たりを見渡すと首をここだと示すように教えてくれた。


「ここに俺はいたのか?」

「キュ」


頷くドラゴンに新たな疑問が増えた。

何故ここに俺はいたのか。そもそもこんなところにいた記憶は無く、いた理由も分からない。

何か手がかりが無いかと付近を確認するが何も見つからない。


「仕方ない。ここについては置いておこう」


思考を切り替え、今後について考えた。


「まずは生活基盤を何とかするところからか」


先ほどの果物は近くにあるのだろう、ドラゴンに後で場所を教えて貰えば手に入る。

生活用水は川があるから何とかなるだろう。かなり綺麗である為、煮沸消毒すれば飲料水にもなると思う。あと魚も取れそうだ。


「俺の問題は何とかなるか・・・。ただ、このドラゴンはどうしよう」


目を覚ましてからずっと一緒にいるドラゴンについて。どういうわけか離れる気配も無く、お願いすれば言うことを聞いてくれる事から懐かれているような雰囲気を感じる。


「おいで」

「キュ」


何となく少し離れて声をかけると、ドラゴンは少し近づいて俺の傍で停止した。やはり懐かれているのだろうか。


「何で懐いているか分からないけど、寂しくは無くなりそうだ」


ドラゴンの首を摩ると気持ちよさそうにされるがまま首をより近づけてきた。正直何があるか分からない森でドラゴンがいるのは心強い。


「なぁ俺と一緒にいてくれないか」

「キュー」


即答で首を縦に振ったのを見て安堵する。そういえばドラゴンは何を食べるのだろうか、どういう生活をするのだろうか。


「元々このドラゴンのみが住んでいたんだ。何とかなるか」


そう言いながら、ドラゴンと共に洞窟へと戻って行った。

ここまでお読み頂き有難う御座います。

感想・誤字脱字受け付けております。

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