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第二話 春休みの補習 その1

四月。


厳しい冬を越え、新しい変化を優しく抱擁する暖かな春は、私──近江春花このえはるか──が一番好きな季節だった。春の日差しを浴びていると、私自身が新しく生まれ変わる気がする。静かに吹く暖かな風が、桜色の花弁を優しげにさらっていく。私の長い黒髪も同じく風に誘われて、柔らかにたなびいた。


正門から校舎までの間に少し距離がある。そこには幅の広い一本道が通っており、両脇には桜の木々が満開の花を咲かせていた。私は一人歩きながら、私の名前である春花の象徴である桜の祝典を満喫していた。


腕を持ち上げて、「うーん」と背筋を伸ばす。気持ちよさに、思わずため息が出る。

やっぱり、春はいいなぁ。


私が通うこの東雲しののめ中学校は、地域に根差し百年近くの歴史をもった公立校だ。歴史の重さを感じさせる濃厚な雰囲気を漂わせながらも、新風を快く受け入れる風通しのよい校風をもち、時代の変化にも上手く適応してきた学校である。


現校長の親戚である市長の英断で、五年程前に校舎も徹底的な改修が行われており、外観に古い建物特有の味わいを残しつつ、学生の意見を参考にして、使いやすい綺麗な内装にしたため、学区外の学生からも羨まれるほど、東雲らしい見事な校舎と相成ったらしい。


ここまで、あのメガネ女に聞いた話である。


「はぁ。春休みなのに、なんで学校に来なきゃいけないのよ」


この春休みの真っ昼間から私が学校に来ている理由。それは、あの憎きメガネ女教師、香山瑶子かやまようこが原因である。


「おい。去年の三月にした期末試験を覚えているか。おまえが悲惨としか言いようのない点数をたたき出したテストだよ。このままだと二年生の授業にも支障がでる。本当は終業式までにきちんと補習をしておきたかったんだが、お前がさんざんサボってくれたおかげで出来なかった。だから、学校が始まる前にお前がサボった分の補習をする。これで来ないなら、お前の家で強制補習だ!」


こんな電話が家に掛かってきたのだ。まったく、教師が自宅に脅迫電話をかけてくるなんて思いもしなかった。本当はサボってやりたかったが、母さんを心配させるわけにはいかない。仕方がないので、こうやってしぶしぶ出向した次第である。


「仕方ないわねー」


なんて呟きながら、これからの数時間を思い、春花はため息をついた。

第一話:一年生秋頃

第二話:一年生終了した後の二年開始までの春休み

を想定しています。


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