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誉め言葉じゃないっつーの!

と、思ったけれど口には出さなかった。

「まあそれでも、その時が来りゃどこそこ関係なく飛ばされる云々ってのはさぁ〜…正直、ちょっと分かる気ィするわ」

「…清水?」

それは清水にしてはか細い声音だったような気がする。

僕はほんの少しそれが気になって聞き返してみたが、答えは返ってこなかった。

問いに答えない代わりに、清水がある行動に出始める。それはこれまた予想だにしなかった行動だった。

ガサリッ。

今まで指先で弄んでいた紙切れを、風に煽られながら一折り一折り丁寧に折り始めたのだ。

と言っても、思えばここは屋上だ。

周りに張り巡らされたフェンスの手摺りですら、折り紙に適しているとはお世辞にも言えない。

「…おい、清水」

そう問い掛ける僕の声を気持ちいいくらいに無視して、清水が夢中になり(本当にそうかは分からないが)折り上げたものは、一枚の紙飛行機だった。

「じゃーん!完成〜」

作り終えた後、清水は満足そうにそれを掲げる。

その表情はまるで新しい事を発見した時の子供のようだ。

清水の表情は、男は心の奥にずっと少年のような部分を持っているという説が、あながち嘘ではないと思えるほどのものだった。

「不安定な所で、これだけ精巧に作れるってすごくねぇ?職人技だぜ、これ」

「にわかの、な」

「あ、ひでぇ」

「だって、角つぶれてんじゃん」

「仕方ないだろ。平らなとこではないし、ここまで出来れば上出来」

清水は本当にその紙飛行機の出来栄えが気に入ったようだ。それを持つ手首をクイクイッと捻っては、出来栄えを吟味している。

…幸せな奴だ。

「あのさ、何でいきなり紙飛行機なんて思いついたワケ?」

無邪気さ極まる清水を前に、僕はため息をついて尋ねてみた。

どうせ、また答えねえつもりかもな。そう思いながら。

でも今度はそうではなかった。

「そんなん、いちいち理由あるかよ。思い付きよ、思い付き」

「…だよな。そう言うと思った」

「なら聞くなよ」

「で、どうすんの?それ。清水、書いて出すんじゃなかったのかよ」

「……」

僕が聞くと、また返事は返ってこなくなった。

何なんだ、一体。

そうは思ったけれど、言うに言えなかったし聞くに聞けなかった。

今日は清水には、どこか僕の入り込めない一面があるように思えて仕方ない。

さらにその感覚を増大させたのは、清水が口にした次の言葉だった。

「なぁ、加持はさ。1年後や5年後の自分って、どうなってると思う?」

「は?」

「そういうの考えたことある?」


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