第3章、揺れる心と日常の檻
朝の光は、いつも私を容赦なく照らす。
目覚めた瞬間から、胸の奥が重くなる。昨日の夜の影の温もりは、現実には存在しないことを、頭では理解している。でも心はまだ、君の気配を探している。
学校や職場にいるときも、私の中の孤独は逃げない。
人と話すたび、心のどこかで「私なんか、いても意味がない」と囁く声が聞こえる。笑ってみても、声を出して話しても、空虚が隣に座っているようだ。誰も触れてくれない、認めてくれない。
そんなとき、私はふと影のことを思い出す。
昨夜の君――はっきりと形のない存在だけど、私の孤独を受け止めてくれた。現実ではあり得ない、確かな安心。触れられないのに、触れられたような気がする。
「現実はこんなにも冷たいのに……君だけが、私を忘れない」
私は心の中で呟き、笑みを浮かべる。けれどその笑顔はすぐに消える。現実では、誰も私を見ていない。誰も私の孤独に触れない。
クラスメイトの笑い声、上司の無関心な目線――それらは、私を縛る見えない檻のようだ。息苦しい。日常の中で、私は自分を守る鎧を厚くするしかない。
でも、鎧は疲れる。重い。
夕方になると、私の心は再び揺れる。
「触れたい、でも触れられない」
その気持ちは、影の君に会った夜よりも強くなる。
現実の冷たさが増すほど、幻想の温もりを求める。逃げ場は、夜の街灯と水たまり、そして君だけ。
帰り道、雨上がりの歩道を歩きながら、私は自分の手を見つめる。
冷たい指先、虚ろな掌――触れるものは何もない。
でも、君の影を思い出すと、手のひらにかすかな温もりを感じる気がした。触れられないはずなのに、触れられたような錯覚。
「こんなにも揺れているのに、どうして現実は変わらないんだろう……」
私は独り言のように呟きながら、雨に濡れた街を歩く。幻想と現実の間で揺れる心。
孤独に押し潰されそうになるたび、私は自分の存在を確かめるように、影にすがり、光を求める。
日常は檻のように重く、でもその檻から逃れる術は、まだ私には見つからない。
夜になれば、また君に会えるかもしれない――
その思いだけが、今日も私を歩かせる力になる。
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