第1章、青い光と幼い日
幼い頃、私はいつも一人だった。
母は家事と仕事に追われ、父は遠くの街で働いていた。家の中の空気は、温かさよりも静けさに支配され、笑い声はまるで別の世界のもののようだった。私はその静けさに、小さな違和感を覚えていた。誰も手を差し伸べてくれない。誰も見てくれない。
だから、私は小さな光を探した。
雨の降る窓辺、街灯の黄色い光、窓際に置かれた小さなランプ。小さな影が揺れるたび、胸に、ほんの少しだけ安心が広がった。けれど、それも長くは続かない。光が消えれば、孤独も戻ってくる。
学校でも状況は変わらなかった。友達の輪に入る勇気はなく、声をかけても返ってくるのは無関心や嘲笑。教室の隅で机に顔を伏せ、心の奥で自分を責めていた。
「どうして私は……ここにいてはいけないんだろう」
時々、廊下の角で見かける同級生の笑顔を羨んだ。彼らは軽やかに手を取り合い、声を交わし、何も恐れず世界と触れ合っている。私は、その勇気も、明るさも、届かない。手を伸ばすたびに、虚無の壁にぶつかるだけだった。
家に帰ると、再び孤独が待っていた。
台所の匂い、壁に映る影、階段の軋む音――すべてが胸を締めつける。母の「おやすみ」の声はあるけれど、心に響かない。父の帰宅は週末だけで、抱きしめられることも、言葉を交わすこともほとんどない。
だから私は、心の中に小さな世界を作った。
家具や窓の光を友達に見立て、声にならない言葉を交わす。夜になると布団にくるまり、雨の音を聞きながら、自分だけの空想に浸った。そこでは誰も傷つけない、傷つかない、完璧に安全な世界が広がっていた。
それでも現実は残酷だった。
ある日、学校の帰り道、私は濡れた歩道に座り込み、泣いた。誰も見ていないと思っていたけれど、背後で靴音が止まった。振り向くと、少し年上の少年が立っていた。手を差し伸べられた瞬間、恐怖と安堵が混ざった感情で体が硬直した。触れられることへの怖さと、触れたいという欲求が交錯する。
その夜、窓の外を見ながら考えた。
「人は……触れることで、安心できるのかもしれない。でも私には……それがわからない」
孤独は恐怖であり、同時に慣れ親しんだ安心でもあった。誰にも届かない孤独。触れられることを望む心。幼い私は、その矛盾の中で揺れ続けた。夜が更けるたびに、光と影の間で、自分の存在を確かめるように、小さく息をついた。
そして、いつか自分の名前を思い出す日が来る――その名前は、雨の匂いと光の揺らめきの中に、静かに隠されているのだと、私はまだ知らない。
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