プロローグ
はじめまして、初めての投稿です。
面白いと思ってもらえる作品を書いていきたいと思ってます。読んでいただけると嬉しいです。
ずっとこんな能力あると良いなと思ってたものを書いてみました。
今日もまたいつも通りの毎朝の恒例行事、というより見慣れたやり取り。
「おはよ〜う」
「おはよう、華!素は?もう起きてる?」
「まだじゃない?いつも知らない間に起きてるじゃん」
「あれ怖いのよ!影が薄すぎて後ろにいても気付けないの」
「………おはよう」
「「きゃあっっ!!」」
「ちょっと素!いつもいつもビックリさせないでよ」
「そんな事言われてもさ、普通に起きて普通に降りてきてるんだけど」
「というか、自分の息子の存在感じ取れないってどうなの?」
そう、俺、空見素は普通の家庭で育ち普通に暮らしているのに何故かどこにいても空気のようになってしまう特殊な男なのだ。
いや、昔からそんな人間は一定数いるか!
「まぁいいわ、起きたなら朝ごはん食べてからゴミ捨てお願いね」
「分かったよ」
大学講師の父と、医療事務の母、中学生の妹と、今年高2になる俺の4人家族の中で俺の仕事がゴミ捨てと風呂掃除なのだ。
朝食を手早く済ませて学校へ行く準備をする。
家を出てゴミ捨てを済ませ、俺の高校と同じ方向にある中学に通う妹と一緒に登校する。
道ゆく人たちはスーツを着て仕事に向かうであろう人や、作業着のおじさん達。
俺と同じような制服を着て通学している学生達が歩いている。
普段からこの住宅街をこの空気を感じながら歩くのが、変わり映えはしないが落ち着いて好きだった。
今日もいつもと変わらず好きな空気が流れている。
ここまではいつも通りの日常だった。
だが、今日はいつもと違っていた。
「きゃあ、ちょっとやめてよ」
「うるせぇ、俺はまだ認めてないつってんだろうが」
朝の澄んだ空気の中、いつもは聞こえない怒声が響いてくる。
いかにもヤンキーみたいな車を停めて、いかにもヤンキーな男が大学生風のお姉さんを捕まえて叫んでいた。
「なにあれ、喧嘩?」
「みたいだな、関わらない方がいい。避けて行こう」
俺たちは朝から痴話喧嘩中のカップルなのか、諦めきれない男の未練を引きずった行動なのか、とにかく離れるように道の反対側に渡ろうとした。
「てめぇ何見てんだよ」
『えっ?』慌てて妹を見るが妹は顔を背けてそちらを見ていない。
俺は見てはいたが普段から空気扱いで人に気付かれにくいから俺ではない筈だ……でもこっち見てるよなー。
なんでこんな時だけ気付かれるんだよ。
「いえ、見てません、何でもないです」
「嘘つけ見てただろうが、何かあんのかてめぇ」
「華、危ないから先に行け」
「お兄ちゃん、危ないよ逃げよう?」
「とりあえずお前が逃げてくれたら俺も逃げるから」
「分かった、すぐ逃げてね」
「あぁ」
朝の通勤通学に使われる道だからそれなりに人通りはあるが、皆んなこの男を怖がって我関せずを貫いている。まぁそれが正しいけどな。
何人かは通報しようとしてくれてるのか、携帯を手に持って慌てているようだ。
何となくそんな他人事のように周りを見ていたら急に『ドンッ!!!!』「うっっ」なんだ?突き飛ばされたのか?
倒れ込んだその先にガードレールの柱があった。
あぁ、ダメだこれは避けれない。
『ガンッッ!!!』
鈍く響く音と強烈な痛み、痛みが強すぎてもう何処をどう打ったのか、どのくらい自分がヤバいのかも分からない。
でもまぁ意識は遠くなっていく。つまりこれは思いっきり頭を打ち付けたんだろう。
あぁ、走馬灯って意外と見れないもんなんだな、そんな風なことを考え、アスファルトを歩くアリを見ながら俺はゆっくりと意識を失った。
どうか次の人生では普通に人に気付かれますように。




