第壱話 【出会い】
「おれは、ぜったいに助ける!助けて見せる!助けてやる!」
これは、とおいとおいむかしばなし。
いま、われわれの領地は危機に貧している。
我らが主君、奥坂 竜乃助。近隣の国、「米炎」に負け越している。次負けてしまえば領地もろとも奪われてしまう。
もし、このまま領地を取られてしまえば、普通なら平民は特になにも起こらず、貴族や領地の長のみ斬首にされてしまうが、今戦っている米炎のやつらは平民など関係無しに敵の民衆をすべて殺しつくし、残った領地を貴族たちで分け合っていく。いわゆる、悪党なのだ。
ある日、我々平民は最後の砦である奥前城に集められた。
そして、その中央に立つのは奥坂様だった。
「いま、われわれの国、天照は絶体絶命にある!ここまで、私の不甲斐ないことによって、平民もとい民衆全てに迷惑をかけてしまっていることを謝罪しよう。本当に申し訳なかった!!我々の軍は連戦の末、兵力が限りなくない状況にある!そこでわたしはある決断をした。平民である貴公らの中から、武士として私とともに戦ってほしい!皆も知っていると思うが、米炎、米杉 信光は、すべてのものを殺して回る。皆も例外ではない!負けてしまえば今ここにいる家族、仲間、友人、隣人のすべてが殺されてしまう。そこで、みな私とともに最後まで抗おうでわないか!ともに戦ってくれるというものがいたのなら、このあと、私の方によってほしい!以上である!」
次、負けてしまえば終わり。もとからこの小さな国では、まともに生きていくのは難しかったのだろう。それでも、我らが君主はまだ戦おうとしている。これに答えないで今までの恩はなくせない!私は奥坂様のもとで最後まで戦っていこう!
私は、勇気を振り縛って奥坂様に仕えよう。
「奥坂様!どうか私めを武士とし、戦場に連れて行ってもらえないだろうか!」
「うむ!とても助かるではないか!数は少なくともともに戦ってもらえるものが増えるのはうれしいことだ!貴公の名前を教えてはくれないだろうか。」
「ははぁ!我が名は、火乃本 魔虹宗と申します!これから何卒よろしくお願い致します!」
「気に入ったぞ!まかむねとやら!この後もお願いするぞ!次の戦までに武具を用意させてもらう。あと、少しだが訓練もしたい。また、奥前城の前に来てくれ!よろしく頼む!」
「はい!よろしくお願いいたします。」
なにもせずにやられるくらいなら、全力で戦ってやる。父から受け継いだ土地を手放してなるものか。それに、幼い頃から見てくれて、父がなくなったあとも私を支えてくれたあの村を護るためなら死力を尽くして戦える。
五日後。武具ができたという報告を受けて、奥前城に赴いた。そしたら、城門前に奥坂様が衛兵と楽しそうに会話をしながら立ち尽くしていた。
奥坂様が見えた私は焦って全力で走った。
「奥坂様、お待たせしてしまい大変申し訳ございません。」
「どうした、そんなに慌てて。」
「いえ、奥坂様がお見えになっていたので。定刻に遅れてしまったものかと。」
「あはは。別に時間は決めたつもりもないし、ワレも早めに来たというだけなのだからな。気にするでない。」
「ははぁ!もったいないお言葉であります。」
「うむ。私は小奴らともう少しだけ話してゆく。先に城内に入り訓練服に着替えてこい。今日の訓練が終わったら、武具の着付けをする。そして、来週からは城下町にいてもらいたい。だから、とりあえず次の戦いまでの分を持ってきてもらいたい。」
「承知いたしました。」
静かに門をくぐり城内に入る。そこは、とても広くきれいな場所だった。手入れのされていた。城の中に入れる場所まで歩いていった。使用人に案内されて更衣室にある服を着た。普段着るようなボロ雑巾みたいな服と似ているが生地がしっかりしている。とても、動く事に特化していて訓練や戦に使うものと言われたら納得できるレベルのものだ。
武器も持たずに訓練場に使用人とともに歩いていく。ほんの少し歩いたところに訓練場があった。全部で1500人くらいである。米炎に負け越して兵力も削がれているのだろうな。
おれ、1人の力でなにかが変わるわけではないけど、少しでも力になりたい。最後まで諦めたくない。
「おお!来たか!火乃本よ!そうだな、お前にはあの部隊のものと戦ってもらおう。」
奥坂様はどうやら兵の指導も自信でやっているように見える。
「戸浦田、犬飼、長谷永。3人とも来てくれ。」
個人名で呼び出した。まさかこの人、全兵の名前を覚えているとでも言うのか。
「「「はい!」」」
訓練をしていた3人がこちらに走ってきた。多分、この方達が戸浦田さん、犬飼さん、長谷永さんなのだろう。
「紹介しよう。右から戸浦田、犬飼、長谷永だ。」
「よろしくお願いします!」
「お前ら、火乃本だ。この間の決起集会で唯一、我らと戦うといってくれたものだ。」
「お〜平民あがりか〜。」
「やる気のあるようなものがいたのですね。」
「ここまで戦況悪いのに。」
「でも、負けたらどっちにしろ死ぬから早いか遅いかの違いだけか。」
「おい!お前ら、まだ負けてもいないのに諦めるなよ。お前らの言いたいこともわからんこともないが。」
「なら、いいじゃないですか〜」
「士気ってものがあるだろうよ。」
なんか、主君と使えるものの会話には見えない。とても楽しそうに喋っている。
「とりあえず、こいつのことはお前らに任せるぞ。」
「「「承知!!」」」
その後、奥坂様が他の部隊の様子を見に行くとともに、おれは戸浦田さんたちについていく。
「この部隊って、これで全員ですか?」
「う?うん。そうだな。今は、これで全員だな。」
『「今は、」ってことは、もしかして。』
「ああ。そうだ。この前の戦いで生き残ったのが俺等だけなんだ。悪いな、せっかく志願してくれたのにこんなにも弱い部隊の配属で。」
「いえいえ。気にしないでください。どんな部隊でも、本気で戦って見せるので。」
ちょっと訓練場内を歩いていた。
そこそこ、大きな演習場についた。そこら中に訓練をしていたのがわかるような、ボコボコ感があった。
「ここが、おれらの演習場だ。4人で使うには大きいがな。」
彼の表情は笑っているような、泣いているような顔をしていた。たくさんの仲間で訓練をしていたのだろう。
昼間の間は、基本常に訓練だった。人数が少なくてもだれもサボらずに真面目てやっている。もともと、ちゃんとした部隊だったのだろう。少人数でも真面目に訓練するような人たちがそんなにも軽々と負けるとは思えないがなにがあったのかを聞くのはとてもできない。基本的な訓練は素振りを繰り返しながら標的に向けて刀を振る練習がメインで、他にも弓の練習や長槍の練習など戦において必要な技術を習得、そして発展させていくようなものだった。最も意外だったものは柔術である。日が沈み、あたりの明かりが篝火だけになったあとに部屋の訓練場に連れて行かれて一時間くらいだが柔術の練習をして体をほぐしてから、順番の回ってきたお風呂へと行くことができる。
『風呂場の掟』
一、なにも隠すことなかれ
一、湯船によく浸かり体を休めること
一、風呂場では揉め事厳禁
一、体も魂も丸裸になること
一、仲間内での悩みはこの場で意見を言い解決すること
何なんだよこれは。
「すいません。これは、どういうことですかね?」
「『風呂場の掟』のこと?」
「これはだな。うちの主将である奥坂様が決めた風呂場での決まりだ。この風呂に入る以上はこれを守ってもらう。」
「へぇ〜。変なの。」
「お前な〜間違ってはいないけども。」
「隠し事だめって、書いてあるじゃん!」
「は!は!は!そうだ!この場で隠し事は禁止である!存分に言え!」
「お、奥坂様!なんで、この時間に。」
「いいだろ。別に私がどの時間に入ろうと。」
「構いませんが。」
「俺等は、先に体洗ってくるわ。」
「どうだ!まかむね。この国一の風呂は。気持ちの良いものだろう。」
「はい!とても気持ち良いです」
「もっと、多くのものたちで風呂に入るのも良いものだが少人数でゆっくりと入り会話をするのもなかなかに良いものだな。」
「奥坂様って、主将って感じしないですよね。こんな、元へい民上がりのやつを快く受け入れて、風呂まで一緒に入るなんて。普通では考えられないですよ。」
「おれは、あまり主将って気持ちで生きてはいないからな。みんなが笑顔で行きられる世界を作りたいだけんなのだから。」
こんななんてない言葉にも親身返答をする、主将が存在するだろうか。「風呂場の掟」のおかげなのかな。こんなやり取りを軽くするために掟を作ったのかな。
「まかむね。一日目の訓練はどうだった。そこの三人はしっかりと訓練をやっていたか?」
「三人とも真面目にやっていました。ただ、なんだか寂しそうではありましたね。」
「やはり、気づいてしまうか。まだ、気持ちの整理はついていないよな。」
「この前の戦いでなにがあったのですか?」
「あの三人はな。この部隊の隊長、副隊長なんだ。」
「え!?この部隊の隊長。」
「ああ。そうだ。お前にもなんとなくわかっただろ。戦いで指示の失敗であの三人以外がやられてしまった。元気に振る舞って入るが、心には相当な負荷がかかっているのだろうな。」
体を洗うのを終えた三人が戻ってきた。
「奥坂様。俺らはそんなに引きずり続けたりなんかしませんよ。」
「そうですよ。我々は貴方様に仕える身、どんなときもともに戦うと決めているのです。」
「辛くないと言えば嘘になりますが、いい加減切り替えないと行けないと思っているのです。なので、これ以上の心配は無用でございます。」
「よし、わかった。お前たちの言葉信じさせてもらうぞ。」
「「「「はい!」」」」
「おお!まかむねもやる気だな。」
「もちろんです!」
「ははは!やはり、お前ら面白い奴らだよ。」
湯気がのぼる暗い世界。そこには、男たちの感情のこもった笑いが鳴り響いていた。
だだだだ!風呂場に近づく一つの走る音。
「奥坂様!ご入浴中に失礼いたします!」
「どうした。そんなに慌てて。」
「米炎が攻め込んできています。明日の昼頃には視認可能な場所にいるものと考えられます。」
「明日か。わかった。総員に命令、明日の明朝までに各自休みを取り戦いに備えよ。武具の手入れを怠るでないぞ!負ければ最後、なにがなんとしても勝つぞ!負けは許されない!」
「はっ!!」
「まかむね、来た早々で悪いが戦いだ。命を落とすなと言いたいが、我々には後がない。必死に食らいつけ。わかったな!」
「はい!!」
「私は先にあがる。しっかり、休み戦いに備えよ。」
奥坂様の目が風呂に入っていたときから完全に変わっていた。
「俺等もでるか。寝る前に少人数だが我々の配置も計算するぞ。」
「御意」
全員で寝れるような大きめな部屋だったけど、我々には人数的に大きすぎる部屋になってしまった。真ん中に集まって布団を敷いていた。みんなで集まって配置の話をしていた。
「とりあえず、みんな槍衾を持つことは確定で」
「うん。そうだな」
「とりあえず、俺は弓を使うでいいよな」
「そうだな。俺等三人は槍衾と刀剣でいいよな」
戸浦田だけ弓を使えるらしい。この三人を前にして後ろから攻撃するらしい。もともとは人数がいたからこの戦法もしっかりできていたがこの少人数ではまともな攻撃ができるものなのか。
「まあ。多分奥坂様の作戦的に山の方に行かされるだろうな」
「奇襲部隊にするのと山の方の敵を制圧と早期発見が目的だろうな」
「それでも、俺等を捨て駒だと思うことはないだろうなあの人」
「さっさと寝て、明日に備えるぞ」
「はいよ〜」
みんなが目をつむり眠りにつく。
「おい、起きろ〜!」
犬飼の声で起きた。まだ日が昇る前の時間だ。
「早い時間から準備しないと間に合わなくなるぞ」
「は〜い」
寝ぼけたような声で返事をしてしまった。
気が緩んでる。しっかりしないと。
完全に戦場に出る雰囲気を出るような感じになってから部屋を出る。
外に出たがまだまだ暗い。あたりを照らすのは篝火のみ。静かな明かりの中でもヒリヒリとした空気。初めての戦場。初めての戦い。何もかもが初めて。でも、他のみんなは最後の生きるか死ぬかの戦いになる。下手したらみんなの命がかかっている。家族の命もかかってる。
奥坂様がみんなの前の台の上に立つ。
「おまえらー!負けたら最後の戦いになる。家族の命もかかっている。そして、負けたらこの国がなくなる。死んでも勝つぞー!」
「「「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」
「我々の総数は約3500人。一方、相手は40000人。圧倒的な差だ。他の国々から見てしまえば間違いなく滅びると思われている。しかし、我々の強さは人数少なくても絆の強さと最後まで諦めないことであろう!最後の最後まで諦めずに戦うぞー!」
やはり、この人のまとめる能力以上に高いよな。朝の隊長だけの会議で、我々の配置が決まった。やはり予想通り山の中。敵陣に奇襲をかける方向で行くらしい。少人数の俺等にしか頼めないらしい。
奇襲とかあまり気の乗らなないが、奥坂様の命ならしかたない。
敵陣が城から見える前に我々の部隊は先陣を切って山の中に潜る。偵察部隊が相手方の簡易城を見つけており、その中に主将である米杉 信光とその息子である米杉 小太郎の二人を確認している。この二人をやれば、相手の領土を全部奪取することができる。やるまでいかなくても致命的な一撃を入れられればあいつらの暴走を止めることができる。
「早いうちに俺らが方を付けないと、奥坂様たちが持たない。」
「そうだな。結構、俺らが重要なのは間違いないな。」
「捨て駒っていうよりも託された感じのほうが正解というか。」
「それだけ、信頼されてるのか。」
「奥坂様が引っ張るあいつら負けるとか思えないけどな。」
「俺らはあの御方を信じて敵を打つだけだ。」
「いいか。魔虹宗。敵を見つけたら俺らは全員で分散する。少しでも生存時間を延ばして、敵をやるために。一人で相当数の敵を相手にしないとならない。一人での戦いは辛いけど、お互いの生存はわからない。死ぬまでもしくは敵を制圧するまで安心できると思うな。」
「う、うん。」
「大丈夫だよ。奥坂様の選定だ。間違えはない。」
「生きてまた会おうぜ。」
「進むぞ。」
「了解!」
「承知!」
「うん!」
一時間くらい山道を歩いていた時、開戦の笛が鳴った。両軍が使う火縄銃の発砲音。お互いに竹束を扱い、防ぎじりじりと距離を縮めていた。全体的に数の少ない我々の軍は、進む距離が短いが一つに隠れている人数が少し多い。なにを狙っているのだろう。遠くにいるせいでなにがなんだかわからない。
「見てないで急ぐぞ。」
「あ、ああ。」
物音を立てずに進み、物音には敏感に反応している。
「パキッ!!」
「ん!?」
「お前ら、しゃがめ。」
「どこだ!」
「三人とも上だ。」
「クッソ!上を取られた。」
戸浦田が静かに弓を引っ張り、刀剣を構えた。
「行くぞ!」
矢が敵の一人を打ち抜いた。
「かかれー!!」
お互いの軍が一斉に切りかかる。
「俺は、木の上に上る。後でだれか降りるの手伝えよ。」
「ああ。後でな。」
「残りは散会するぞ」
思ったよりも早い散会だな。ここからは一人か。
敵は山の中で槍衾を使っている。しかし、木々に邪魔されてまたもに扱えていない。
手間取っている間に、距離を一気に詰めて一人、二人と次々に切りかかる。引いて攻めるを繰り返し、みんなと距離が離れていく。追ってきているのは全部で50人ほどであろうか。いや、それよりも多そうだ。弓を扱っているやつが遠方から攻撃をするが全部外れるか避け切れてる。1対50強という何とも不利な戦い。それでも着々と人数を減らせている。でも、まだまだ多い。さすがの相手も何度もおなじことやられていたら、槍衾の使い方を変えてきた。持ち手の部分を追って投擲武器に変えて攻撃をしてきた。近い力何度も投げられるとさすがに避けるのもつらく、できる限り距離を取る形に変えた。投げてきたものを拾って投げ合う。投げやりの合戦になってきた。でも、あっちには弓矢で狙ってくるのもいるから限りなく危ない状態。このままいけば体力的にこっちが先にくたばる。刀剣をしまって、おられている槍衾を一本か二本、回収して全力で山を横滑りに移動して、敵が見えなくなったところから一気に頂上を目指して走って上から攻撃をする。
しかし、横滑りで移動したところにまさかの敵の軍勢がもう一部隊いた。急旋回して上を目指そうと思ったが、もう一つの部隊が囲んでいるところには山の中には似つかわしくない格好をしているものがいた。よくよく見ると、真っ白な服を身に着けた女の子だった。
(女の子一人にこの人数で囲むとふざけるな!絶対に許さない。)
上に目指さないで敵陣に全力で特攻した。幸い、少し地形的には上にいたから一気に駆け下り、走っているところで回収した槍衾を思いっ切り切り投げる。投げたことによって、敵の陣営が少し崩れた。懐に入り込み刀剣を振り抜いて攻撃を仕掛ける。女の子に背中を向けて守る形を組んだ。
「へぇ~。米杉の軍にもこんなにも勇敢なやつがいたとはな。しかも、見るに見ず知らずの女の子ために特攻してくるとは。面白い。」
変な奴が言ってきた。こいつだけ、甲冑が豪華だ。
「なんだ。お前は。」
「俺の名前か。それは、お前らの敵の米杉軍。米杉 信光が息子、米杉 小太郎だ。」
米杉 小太郎だと。ふざけるな。なんで、ただでさえ不利な状況でこんな大物が来るんだよ。
「で。人に名前を聞いているんだから、お前も名前を答えろよ。」
「名前は、火乃本 魔虹宗だ。」
「マカムネとやら。その根性、気に入った。俺らの軍に入らないか?この状況のお前では、軍に入るのが一番正しい選択だぞ。」
「勝手に人の正しい選択とか決めつけるな。絶対にお前らの軍になんか入らない。」
「そうか。お前は選択は間違えだ。今ここで死ね。」
やつが刀剣を抜いて、振りかぶってきた。タイミングが完璧に合い、刀剣で防ぎきれた。足で腹を蹴ってきた。坂で派手に転がっていくが必死に踏ん張り耐える。
痛い。それでも負けらなれない。
「うおおおおお!」
「フンッ。その程度か。」
「まだまだ!!うりゃーっ!」
「あまい。がら空きだぞ」
間一髪で回避するが腹から少しだけ血が垂れている。
「ぐふっ!」
こんなやつ一人に負けるのかよ。
「なんだ、もう立てないのか。」
(絶対に嫌だ。負けたくない。体!動いてくれ!)
「この程度か。期待した自分がばかみたいじゃないか。じゃあな。」
反射的に体が動いていた。振り下ろされる攻撃を刀剣で防いでいた。
「なっ!」
「うがぁぁぁ!!!!」
決死で体を起こしながら小太郎を吹き飛ばした。
「どこにそんな余力が!なんだお前。はっ!お前が何で。」
「なんだあいつ。体に白い靄が。」
(ああ。不思議だ。なぜか力が湧いてくる。)
「ふっん!いくぞー!小太郎!!」
真っ向斬り。逆袈裟斬り。左一文字斬り。袈裟斬り。左逆袈裟斬り。連続で畳み掛ける。
「お前ら!見てないで斬りかかれー!」
「うおぉぉぉ!!!」
なんだ、こいつらゆっくり攻撃なんて。周りを囲むように来るなんて。
「てりゃぁぁぁ!!」
軽々、回転斬りで敵を一網打尽にしていく。
後方からさらに敵が増えていくが関係ない。動きが遅く見えるからだ。力強い踏み込みから、真っ向斬り。一列になっていた敵が吹き飛んでいく。一番前にいたやつは完全に真っ二つになる。
「これでは分が悪い。お前ら撤退だ。」
すごすごと、去っていく。
「お前だけは、逃がすかよ!」
自分の槍衾を真っ二つして投げる。
「うおりゃぁぁぁ!!!!!」
小太郎の右目に当たる。
「うわぁぁぁ!!目がぁぁぁ!!」
「小太郎さん!!急げ、撤退だ。」
敵が散っていく。次第に敵が見えなくなった。力が抜けていく。
「はぁはぁ。疲れた。動けねぇ。」
でも、敵の主将の息子に攻撃を入れたぞ。しばらくは攻撃を仕掛けてくることはないだろう。早く、戸浦田のところに集合しないと。そういえば。女の子は?見つけた。
歩いて向かっていく。
「いたいた。大丈夫ですか?」
「……。」
(ん!?羽!?背中に羽!?え!?もしかして、おとぎ話の天使なのか?でも、片方の羽がない。ゆっくり、手のひらを見ると、白かったであろう赤い羽。服も部分的に赤くなっている。)
「大丈夫ですか?すぐに手当てを。」
天使がゆっくりと顔を上げていく。とても、きれいな顔をしていた。こんなにも整った顔を見たことはない。青みがかった瞳。透き通るような肌。銀色の髪の毛。とても美しい。
なんだ、心臓が激しくどくどくしている。それに、変な感情だ。
「とりあえず、我々の拠点に行きましょう。治癒をしないと。」
「いえ。大丈夫です。私は人ではありません。人でもないものを助ける必要はあなたにはないはずです。」
「いいえ。あなたが人じゃないなんて関係ありません。私があなたを助けたいのです。」
「ん!」
「立てますか?」
フラッ。
「足からも血が。私の背中に乗ってください。」
「は、はい。あ、でも羽が。どうしたら。」
「なら、(水を勢いよく飲む。)これに入れていきましょう。」
「ありがとぅ…」
「大丈夫ですか?」
「はい。安心できる背中です。」
「なっ!!」
顔が一気に熱くなる。
「私の名前は奏天です。」
「俺の名前は」
「マカムネさんですよね。」
「聞いてたのですね。」
「あんなにも近い場所で話していたら聞こえますよ。」
「それも、そうですね。」
そこから、基本的には何にも話さずに歩いていた。
ちょうど、みんなが集まって、戸浦田の降りるのを手伝ていた。
「おお!魔虹宗!生きていたか!ん!?」
「お前どうした。その背中の少女は。」
「小太郎の部隊に襲われてたから助けた。」
「「は!?」」
「小太郎の部隊ってお前、米杉 小太郎とやりあったのか?」
「ああ。最後に逃げようとしてから槍衾を投げて右目を潰してやった。」
「それは、本当なのか!?」
「はい。本当です。私が見ていましてから。」
「んで!その女の子は本当になんなんだよ。」
「天使です!」
「「「はぁぁ!!?」」」
ゆっくりと背中を見せて
「ほら。」
「『ほら』じゃねぇよ。」
「まあいいや。とりあえず、まだ戦いは終わっていない。こっちからの奇襲は無理だろうな。一回、城に戻ろう。手当もしてやらないとだろう。」
「ああ。」
五人でまとまってゆっくり歩きながら城に向かった。走りたいところだがみんなともに体力が限界に近い。来るときに、開戦の笛を聞いたあたりから戦況をみんなで見たら、だいぶ優勢になっていた。
「このまま、行けば負けることはないだろう。」
「「「あぁ。そうだな。」」」
三人で同時に声が出た。
しばらくして、城に到着した。城について、奥坂様に報告に行った。周りから視線を感じたが、たぶん俺のせいだろうな。
「おう!お前たちよく帰ってきたな。ん!?なんだ、その女の子は?」
「それは、後で話します。」
「奥坂様!それで、勝てましたか?」
「ああ。勝った。なぜだか敵がいきなり撤退した。」
「じゃあ、いったんは平和になったのですね。」
「ああ。でも、撤退理由が小太郎が何者かにやられたらしい。死んではいないが痛手らしい。撤退したことで取られていた領地をある程度奪い返せた。一体、だれがやったのか。」
「あ、それ。僕です。」
「なんだと!小太郎をやったのかお前が。」
「はい。本当か?」
「はい。本当です。私が見ていました。そして彼は、異能の持ち主です。」
「火乃本。後で話すぞ。」
「は、はい。」
異能?なんだそれは。意味が分からないことばかりだ。
「全軍の死傷者数がわかったら、みんなを集める。それまでは自由にしておれ。」
「「「「はっ!!」」」」
「風呂に行きたいとこだがまずは手当からだな。」
「みんな、ひどくやられているからね。」
「それだけ頑張ってことだろう。」
「ちがいない。」
「しばらく、戦いはしたくないよなー」
「戦いなんてやりたくないよ」
「それはそうだな」
「てか、あの天使の言ってた異能ってなんだ?」
「それは、俺が聞きてえよ」
「どうせ、このあと聞くことできるんやろ」
「たぶんな~」
「「「「はぁ~~~~~」」」」
みんなで風呂を上がり三人は部屋に戻った。おれは呼び出せれているので奥坂様の部屋に向かって歩いていく。上の方に来ると、静かだな。ほぼ、頂上にきた。一つの大きい部屋なのかふすまを開ける。
そこには、清潔の白色の着物を着た天使がいた。見とれてしまっていたがすぐ隣に奥坂様と奥坂様の奥様がいた。あとは数人の使用人が。
「それでは、話を始めようか。」
「はい」
「まずは、この天使の自己紹介からだな。」
「改めまして、私の名前は空詠 奏天と申します。以後、お見知りおきを。」
「ど、どうも。」
なんか、めっちゃ変な感じする。
「それじゃあ、異能の話をしようか。」
ここからが本題だ。
「まず、異能とは日本に存在する特異的能力だ。そして、異能は五つ存在する」
「五つ…ですか…。」
「ああ。そして、その五つの具体的な能力も古く昔に解明されている」
具体的にわかっているなら、部隊のみんなとかも知っていそうなものだけど。
「異能が一般に広がっていないのは、数百年に一度だけほぼ同時に発生するからだ」
「数百年に一度。それの一つに俺が当てはまったってことですか。」
「そうだ。そして、奏天に聞いたものと当てはまる異能は『火事場の馬鹿力』であると考えられる」
「『火事場の馬鹿力』ですか。」
「ああ。たぶん、小太郎に攻撃を入れられたのは異能が働いたと考えていいだろう」
「最後の力は異能のおかげだったのか。」
異能の力をしっかり扱えれば、もっと強くなれるかもしれない。
「『火事場の馬鹿力』の名の通り、危機に直面しないと使えない。それでも、全体的な能力のすべてが上昇する」
「でも、危機の時ってことは相手も疲弊はしていますよね。そこで、爆発的な力を使うのは大逆転できるってことですよね。」
「頭がいいな。まあ、そんな危機にはなりたくないものだけどな。」
そりゃあそうだ。
「とりあえず、話は終わりだ。なにか質問あるか」
「異能の質問じゃないんですけど、奏天どうするんですか?」
「んん?はは~ん。そういうことか。そうだな。お前と一緒に暮らすでいいだろう」
「ええ?」
「まあ、別にいいよ。」
「本人もこう言ってるし」
「いいのですか。ありがとうございます。」
「顔が真っ赤だぞ」
うれしいと恥ずかしいで顔に熱が。
「まあ。仲良く暮らせよ。」
「クラスって言ってもどこで。」
「どこでもいいが、自分の家に戻るか?ほぼ間違えなく、米炎も攻めては来れないだろうしな。」
家に戻っていいんだ。
こんなにも幸せなことがあっていいのだろうか。絶対に生きて、生き抜いてやる!!二人で!!




