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第4話 『銀貨の使い道と工房計画、そして聖女の祈り』

前回、カオルの燻製が初めて「銀貨5枚」という価値に変わりました。


さて、手にした大金(?)を元手に、二人の生活はどう変わっていくのか?


今回のテーマは「未来計画」。そして、長編の幕開けにふさわしい「新たな目標」の設定です。


もちろん、とろ〜り熱々の新作飯テロもご用意しましたので、お楽しみに!

 その夜、俺とエリアーナは焚き火を囲みながら、手にした5枚の銀貨を眺めていた。


 ずしりと重い、本物の銀。これが、俺の燻製がもたらした、この世界での確かな成果だった。


「すごい……銀貨5枚なんて、普通の村なら家族がひと月暮らせる金額ですよ」


 エリアーナが感嘆の声を漏らす。ひと月……マジか。あの商人は本当に気前が良かったらしい。


「これで、塩やスパイスが心置きなく買えるな。あと、ちゃんとした鍋とかも欲しいし……」


「カオル様。そのお力があれば、もっと……」


「ん?何か言ったか?」


「……いえ。カオル様のお料理は、本当に素晴らしい、と改めて思っただけです」


 エリアーナはそう言って微笑んだが、その瞳には何か、俺の知らない未来を見ているような強い光が宿っていた。


 このままテント暮らしを続けるわけにもいかない。特に、エリアーナは女の子だ。雨風をしっかりしのげる場所が必要だろう。


「よし、決めだ。小屋を建てよう」


「えっ、小屋、ですか?」


「ああ。簡単なものでいい。拠点になる場所を作るんだ。いずれは、燻製を作るための工房にもなる」


 俺の提案に、エリアーナはぱっと顔を輝かせた。


「工房……!カオル様の、燻製工房……!」


「気が早いな。まずは小さな小屋だよ。そのためには、道具がいる。斧とか、釘とかな」


「それなら、麓の街へ買い出しに……」


「その通り。明日、準備して街へ行ってみよう」


 街、という言葉に、エリアーナの表情がわずかに曇るのを俺は見逃さなかった。そうだ、彼女は追われる身の可能性があるんだった。


「大丈夫だ。フード付きのローブでもあれば、顔は隠せる。俺が守るから」


「……はいっ!」


 俺の言葉に、彼女は力強く頷いた。


 翌日、俺たちは街へ行く準備を始めた。道中の食料として、新しい燻製作りに挑戦することにする。


 《スキル【燻製マスター】Lv.1》


 《製作可能なレシピが増加しました:燻製チーズ、燻製ナッツ》


 どうやら、新しい食材を手にしたり、経験を積んだりするとレシピが増えるらしい。


 チーズの材料は、森で偶然見つけた野生のヤギの乳だ。スキルが「発酵させれば極上のチーズになる」と教えてくれたので、数日かけて作っておいたものだ。


「すごい……ミルクが固まって、こんなに美味しそうなものになるなんて……」


「これを燻すと、もっと美味くなるんだ」


 俺は出来立てのフレッシュチーズを金網に乗せ、煙をかけていく。


 この金網は、スキルを使って生成したものだ。どうやら俺には経験値のような「燻製ポイント」が溜まっていて、それを消費することで簡単な道具を取り寄せられるらしい。便利すぎる。


 チーズと同時に、森で拾ったクルミに似たナッツも燻していく。


 やがて、チーズは美しい黄金色に染まり、ナッツからは食欲をそそる香ばしい匂いが立ち上ってきた。


 熱々の燻製チーズをナイフで切り分ける。とろり、と溶け出した中身が、湯気とともに濃厚な香りを放った。


「う……んまっ!」


 口に入れた瞬間、ミルクの芳醇なコクと、スモーキーな香りが爆発する。これは……酒が欲しくなる味だ。


 エリアーナも、小さな口にチーズを運び、幸せそうに目を細めている。


「こんな食べ物、王宮の晩餐会でも出てきませんでした……!」


「大げさだなあ」


 腹ごしらえを済ませ、俺たちは小屋を建てる場所を探し始めた。


 日当たりが良く、川にも近い開けた場所がいい。


 森を歩いていると、一際、薄暗く空気がよどんだ一角があった。


 動物の気配もなく、植物の育ちも悪い。いわゆる、嫌な感じの場所だ。


「カオル様、ここは……」


 エリアーナが眉をひそめ、何かに気づいたように立ち止まった。


 彼女はそっと目を閉じ、両手を胸の前で組む。そして、澄んだ声で、祈りの言葉を紡ぎ始めた。


 すると、どうだろう。


 彼女の体から、柔らかな淡い光が溢れ出し、よどんでいた空気が、まるで浄化されるように澄んでいくのが分かった。


 重苦しかった気配が消え、温かい木漏れ日がその場所に差し込む。


「……すごいな、エリアーナ。今のは?」


 俺が驚いて尋ねると、彼女は少し恥ずかしそうに頬を染めた。


「……私は、元聖女、ですから。少しだけ、聖なる力で土地を浄化することができるんです。でも、もう国を追われた身……こんな力、何の役にも……」


「役に立たないもんか。最高じゃないか」


 俺は心からそう言った。


「ここにしよう。俺たちの工房を建てる場所は、君が清めてくれた、この場所に」


 俺の言葉に、エリアーナはハッとしたように顔を上げた。その瞳が、みるみるうちに潤んでいく。


 彼女は、自分の力が誰かの役に立ったことが、心から嬉しいようだった。


「はいっ……!」


 その笑顔は、今までで一番輝いて見えた。


 こうして、俺たちの目標と、そのための拠点となる場所が決まった。


 明日はいよいよ、初めての街へ買い出しだ。どんな出会いが、そしてどんな食材が待っているだろうか。


 俺たちの「燻製工房」計画が、今、本格的に始動したのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


今回は今後の物語の土台となる、大切な回でした。


小屋(工房)を建てるという目標ができ、エリアーナの聖女としての能力も少しだけ明らかに。彼女がただ守られるヒロインではないことが、お分かりいただけたかと思います。


そして……次回、ついに初めての街へ!


カオルの作る燻製が、森の外でどんな騒動を巻き起こすのか?


新たな出会いは、二人にとって吉と出るか、それとも――?


物語が大きく動き出します。ぜひ、お見逃しなく!


「エリアーナの祈り、尊い!」


「燻製チーズ、絶対うまいやつ!」


「街編、楽しみすぎる!」


と、少しでもワクワクしていただけましたら、ブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、二人の旅支度を応援してやってください!


よろしくお願いいたします!

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