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第30話 『求人募集と小さな応募者。嗅覚鋭いコボルトの少年、そして肉汁溢れる燻製ハンバーグ』

 いつもたくさんの応援、本当にありがとうございます!

 前回、スイーツ女子たちの襲来により、カオルとエリアーナの体力は限界を迎えていました。

 猫の手も借りたい状況で現れたのは、猫……ではなく、犬っぽい耳を持つ小さな魔物「コボルト」の少年。

 一般的には最弱モンスター扱いされる彼ですが、実は燻製職人にとって最高の才能を持っていました。

 新しい仲間の加入と、みんな大好き「ハンバーグ」の回です。

 空腹注意でご覧ください!

「……カオル様。もう、腕が上がりません……」

 とある日の閉店後。

 エリアーナが、テーブルに突っ伏してとろけていた。

 無理もない。冒険者、貴族、狼族、そしてスイーツ目当ての女性客。客足は途絶えるどころか増える一方だ。

 俺も、仕込みと調理で睡眠時間を削っている状態だ。

「……限界だな。人を雇おう」

 俺は翌朝、店の前に一枚の張り紙を出した。

『従業員募集。年齢・種族不問。やる気があり、鼻が利く者。※まかない付き』

「賄い付き」の文字は強力だった。

 すぐに数人の屈強な冒険者がやってきたが、彼らは「つまみ食い」が目的だったり、繊細な火加減ができなかったりで、丁重にお断りした。

「なかなか、いい人材はいないな……」

 夕暮れ時。諦めて張り紙を剥がそうとした時だ。

 店の軒下に、うずくまるような小さな影があった。

「……あの」

 おずおずと顔を上げたのは、ボロボロの服を着た、犬の耳と尻尾を持つ少年だった。

 身長はエリアーナの腰ほどしかない。

 下級魔物モンスターとして扱われることの多い、『コボルト』族だ。

「……ぼく、はたらけます。お掃除、できます」

「君は……名前は?」

「……ロロ、です」

 ロロと名乗った少年は、痩せ細り、お腹をグゥと鳴らしていた。

 普通の店なら「シッシッ」と追い払われるところだろう。

 だが、俺は彼のある行動に目が止まった。

 彼は、店の前に積んであった「まき」や「チップ」の匂いを、興味深そうに嗅ぎ分けていたのだ。

「ロロ。この木の違い、わかるか?」

「……はい。こっちは甘い匂い(サクラ)。こっちは、ちょっと苦い匂い(ナラ)。……こっちは、お酒の匂い(ウィスキー樽)がします」

「!!」

 俺は驚いた。

 まだ火をつけていない、乾燥したチップの状態だけで、木の種類を完璧に言い当てたのだ。

 コボルト族特有の嗅覚に加え、彼個人の才能だろう。

「……合格だ。ロロ、採用する」

「えっ……? ほんと、ですか……?」

「ああ。だがその前に、まずは腹ごしらえだ」

 俺は彼を厨房へと招き入れた。

 痩せっぽちの彼には、栄養満点の肉料理が必要だ。

 俺が取り出したのは、ベーコンやジャーキーを作る際に出た、様々な肉の「端切れ」。

 ハイ・オークの脂、ロック・バイソンの赤身、鴨の皮。

 これらを包丁で叩き、粗挽きのミンチにする。

「いいか、ロロ。燻製屋のハンバーグは、焼く前に『煙』を食わせるんだ」

 ねた肉だねを成形し、フライパンに並べる。

 そして蓋をする前に、隙間からサクラの煙を注入し、短時間だけ冷燻れいくんする。

 生肉の段階で香りを纏わせることで、焼いた時に香りが爆発するのだ。

 そして、強火で一気に焼く。

 ジュワァァァァァァッ!!!

 肉が焼ける音と共に、厨房内に芳醇な香りが充満する。

 両面に焼き色がついたら、弱火にしてじっくりと火を通す。

 仕上げに、特製のデミグラスソース(燻製野菜を煮込んだもの)をたっぷりとかける。

「さあ、食え。『特製・燻製粗挽きハンバーグ』だ」

 皿の上で、熱々のハンバーグが湯気を上げている。

 ロロは震える手でスプーンを握り、ハンバーグをすくった。

 パクッ。

 その瞬間、ロロの犬耳がピン! と立った。

「……!!」

 粗挽き肉のゴロゴロとした食感。

 噛み締めるたびに溢れ出す、数種類の肉汁のハーモニー。

 そして、鼻から抜ける上品なサクラの香り。

 ただの挽肉料理ではない。これは「肉の旨味爆弾」だ。

「……おいしい……おいしいですぅ……ッ!」

 ロロの目から、大粒の涙が溢れ出した。

 彼は泣きながら、夢中でハンバーグを口に運んだ。

「ぼく、群れの中で一番チビで……役立たずだって捨てられて……。こんなに美味しいごはん、初めてで……」

「役立たずなんかじゃないさ。お前のその鼻は、俺の店にとって最高の宝物になる」

 俺が頭をポンと撫でると、ロロは涙でぐしゃぐしゃの顔で、でも一生懸命に頷いた。

「はいっ! ぼく、がんばります! ご主人様!」

 こうして、『森の燻製工房』に新たな家族が増えた。

 翌日から、ロロは小さな体で薪を運び、チップの管理をし、その鋭い嗅覚で「燻製のベストなタイミング」を俺に知らせてくれるようになった。

「カオル様、ロロちゃん、働き者ですね」

「ああ。それに、彼がいるとエリアーナも少しお姉さんに見えるな」

「むっ、どういう意味ですか!」

 賑やかな厨房に、笑い声が響く。

 戦力も充実した。

 これでどんな客が来ても対応できる――そう思っていた矢先だった。

 今度は、店の外ではなく、「地面の下」から、予期せぬ訪問者が現れようとしていた。

 燻製の香りは、空だけでなく、地底深くに眠る種族さえも目覚めさせてしまったらしい。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 新スタッフ、コボルトのロロ君が加入しました!

「いじめられていた才能ある少年を拾う」というのも、なろう系の醍醐味ですよね。

 彼の嗅覚は、繊細な温度管理が必要な燻製において、カオルの右腕となるでしょう。

 そしてハンバーグ。端切れ肉のミックスミンチは、絶対に美味しいやつです。

 さて、空(鳥)、森(狼)、町(人)と来て、次は「地底」です。

 地面の下から現れる、ものづくり種族といえば……?

 そう、頑固で酒好きな「ドワーフ」の職人たち!

 彼らが求めているのは、最高の酒に合う、最高のおつまみ。

 燻製屋の本領発揮です!

 次回、ドワーフたちが床を掘り破ってご来店!?

「おい人間! この素晴らしい匂いの元はどこだ!」

 工房、物理的な危機!?

「ロロ君よかったね(涙)」

「ハンバーグ食べたい……」

「ドワーフきたー!」

 と、ロロの採用を祝っていただける方は、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルのお店を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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