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第28話 『強面(こわもて)の狼族、スパイス香るビーフジャーキー、そして揺れる尻尾』

 いつも応援ありがとうございます!

 前回、巨大ウナギで街中を元気(過ぎる状態)にしたカオルたち。

 その噂は風に乗って、森の奥深く、人間があまり立ち入らない領域にまで届いていたようです。

 今回のお客様は、森の狩人「狼族ウェアウルフ」。

 鋭い牙、逞しい筋肉、そしてフサフサの尻尾。

 肉食の彼らが求めているのは、ただの肉ではありません。

「硬いのに美味い」という、矛盾した最強の保存食。

 噛み締めるたびに旨味が溢れる、大人の味をお楽しみください!

 巨大ウナギ騒動が落ち着き、平穏な日常が戻ってきた……と思っていた数日後。

『森の燻製工房』の前に、またしても異様な気配が漂っていた。

 ただし、今回は騒がしい冒険者や煌びやかな貴族ではない。

 静寂。

 まるで森そのものが移動してきたかのような、張り詰めた空気。

「……たのもう」

 低く、唸るような声と共に扉が開く。

 逆光の中に立っていたのは、身長2メートルを超える巨躯。

 人間のような服を着ているが、その頭部には獣の耳があり、腕は剛毛に覆われている。

 森の奥地に住む戦闘種族、『狼族ウェアウルフ』の戦士たちだ。

 店内にいた客たちが、悲鳴を上げる寸前で凍りつく。

 だが、俺は冷静だった。彼らから殺気を感じなかったからだ。むしろ、彼らの鼻はピクピクと店内の香りを嗅ぎまくっている。

「いらっしゃいませ。お客様、テーブル席へどうぞ」

「……む。我らを恐れないのか、人間」

 先頭に立つ、群れのリーダーらしき男――ヴォルグが、金色の瞳を細めた。

「美味いものを食べに来た客に、種族は関係ありませんから」

「……いい度胸だ。そして、噂通りの良い匂いだ」

 ヴォルグたちは席に着くと、単刀直入に用件を切り出した。

 彼らは森で狩猟をして暮らしているが、悩みがあるという。

「獲物は獲れる。だが、保存が効かん。干し肉にすると硬すぎて味気なく、すぐに飽きる。……お主の作る『腐らない魔法の肉』の話を聞いてな。我らにも分けてもらえないか?」

 なるほど。ベーコンの噂か。

 だが、彼らは狩猟民族。移動しながら、手軽にかじれて、しかも塩分と活力が補給できるものがいいはずだ。

 ベーコンもいいが、もっと適したモノがある。

「わかりました。ベーコンよりもさらに保存性が高く、噛み応えのある『携帯食』を作りましょう」

 俺が取り出したのは、赤身の味が濃厚な『ロック・バイソン』のモモ肉だ。

 これを繊維に沿って薄くスライスする。

 そして、ここからが重要だ。

「狼族の方々は、濃い味がお好きですか?」

「ああ。血の滴るような濃い味が好みだ」

 ならば、スパイスだ。

 醤油と赤ワインをベースにしたタレに、粗挽きの黒胡椒ブラックペッパーをこれでもかと大量に投入する。さらに、ピリッとした刺激を加えるためのカイエンペッパー、風味付けのガーリック。

 この「特製スパイス液」に肉を漬け込み、しっかりと味を染み込ませる。

「……刺激的な匂いだ」

 ヴォルグの鼻が忙しなく動く。

 漬け込みが終わったら、表面の水分を拭き取り、乾燥させる。

 そして、燻製。

 今回は『ヒッコリー』のチップを使い、低温でじっくりと時間をかけて水分を極限まで飛ばす。

 《スキル【燻製マスター】Lv.2:『ドライ・ハード』》

 《水分子を強制的に排出し、旨味成分のみを結晶化させます》

 数時間後。

 完成したのは、黒褐色に引き締まった、板のような干し肉。

『スパイシー・ビーフジャーキー』だ。

「さあ、どうぞ。かなり硬いですが、噛めば噛むほど味が出ます」

 皿に山盛りにされたジャーキー。

 ヴォルグは一枚手に取り、その硬さを指で確認すると、鋭い牙でガリッとかじりついた。

「……むぐッ。……硬いな。だが……」

 噛み千切り、口の中で咀嚼そしゃくを始めた瞬間。

 彼の表情が変わった。

「……!? なんだこれは……噛むたびに、肉の中から旨味が湧き出してくるぞ!?」

 最初は岩塩とスパイスの強烈なパンチ。

 次に、凝縮されたバイソン肉の野性的な旨味。

 そして最後に鼻へ抜ける、スモーキーな燻香。

 噛む。美味い。

 飲み込みたくない。まだ味がする。

 でも、次の一枚が食べたい。

「……んぐっ、んぐっ、ガツッ……!」

 ヴォルグの食べる速度が上がっていく。

 そして、俺とエリアーナは見てしまった。

 強面で、歴戦の戦士であるはずのヴォルグの背後で。

 フサフサの灰色の尻尾が、バッタンバッタンと音を立てるほど激しく左右に振られているのを。

「……リーダー、尻尾、尻尾」

「む……!?」

 部下に指摘され、ヴォルグはハッとして尻尾を押さえたが、もう遅い。

 エリアーナが「かわいい……」と目を輝かせている。

「……コホン。……人間、いや、店主殿。これは危険だ。止まらなくなる」

「気に入っていただけて何よりです」

「取引だ。我らが狩った希少な獣の肉や、森の奥でしか採れない香草を持ってくる。それと交換で、この『ジャーキー』を定期的に作ってくれ」

「ええ、喜んで」

 狼族との契約成立だ。

 彼らが持ってくる素材は、間違いなく一級品だろう。

 こうして、俺の店には「冒険者」「貴族」に続き、「亜人種」という新たな常連客(供給ルート)が加わった。

 帰り際、ヴォルグは大量のジャーキーを袋に詰め込み、少しだけ照れくさそうに言った。

「……また来る。……次は、酒も頼む」

 どうやら、狼族の晩酌革命も始まってしまったようだ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 強面の狼族も、美味しいものには勝てなかったよ……。

 ビーフジャーキー、美味しいですよね。

 特に黒胡椒が効いたやつは、エンドレスで食べられます。

 ヴォルグさんの尻尾がちぎれんばかりに振られている姿をご想像ください。

 さて、狼族とのコネクションもでき、素材の供給ルートが盤石になりました。

 スローライフ(という名の飯テロ無双)はさらに加速します。

 次回、エリアーナがぽつりと呟いた「甘いものが食べたい」という一言から、燻製の常識を覆す「スイーツ」回!?

 燻製×甘味。

 禁断の扉が開きます!

「ジャーキーとビールくれ!」

「尻尾もふもふしたい」

「素材ゲットでさらに新メニューが!?」

 と、口の中がスパイシーになった方は、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの工房を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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