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第26話 『暴走王女の工房襲来! 燻製ナッツと蜂蜜漬け、そして「お姉様」の座』

 いつも温かい応援、本当にありがとうございます!

 前回、鴨肉の美味しさで思考が飛び、エリアーナを「生き別れの姉」と認定してしまったルミナス王女。

 一度思い込んだら止まらない王女様は、なんと翌日、お忍び(バレバレ)で工房に突撃してきます!

 迎えるカオルが出すのは、貴族のフルコースとは真逆の、手軽で止まらない「魔性のスナック」。

 カリッ、ポリッ。

 香ばしい音と共に、王女様の「庶民派堕ち」が始まります!

「ごめんください! 『お姉様』はいらっしゃいますの!?」

 翌日の昼下がり。

 ランチタイムのピークが過ぎ、まったりとしていた『森の燻製工房』の扉が、勢いよく開かれた。

 入ってきたのは、フードを目深に被った少女。

 だが、その隙間から溢れるプラチナブロンドの髪と、背後に控える屈強な護衛(変装した近衛騎士たち)のせいで、正体を隠す気があるのか全く不明だ。

 第三王女、ルミナス様である。

「……いらっしゃいませ、ルミナス様。ここは一般の店ですので、もう少しお静かに……」

「あら、ごめんなさい。でも、居ても立っても居られなくて!」

 ルミナス様は、カウンターの奥にいたエリアーナを見つけると、花が咲いたような笑顔で駆け寄った。

「お姉様! 会いに来ましたわ!」

「あ、あの……ルミナス様、私はその……」

 エリアーナが助けを求めるように俺を見る。

 昨夜のパーティーの後、俺たちはレイモンドと緊急会議を開いた。結論はこうだ。

『否定しても無駄だ。むしろ、王女の庇護下に入れば、教会の過激派も手出しできない。適当に話を合わせつつ、正体だけは死守しろ』

 俺は溜息を飲み込み、王女様をテーブル席へと案内した。

「ようこそお越しくださいました。粗茶ですが」

「ええ、構わなくてよ。……あら? 何かしら、この香ばしい匂いは?」

 ルミナス様が鼻をひくつかせる。

 店内に漂っているのは、先ほどまで仕込んでいた新作の香りだ。

「ちょうど、おやつを作っていたところです。王宮の豪華な菓子には及びませんが」

 俺が出したのは、木製のボウルに山盛りにされた『燻製ミックスナッツ』だ。

 アーモンド、カシューナッツ、くるみ。

 これを、『ヒッコリー』のチップで強めに燻し、仕上げに『星屑の岩塩』と黒胡椒、そしてほんの少しの『溶かしバター』を絡めてある。

「……木の実? リスが食べるようなものではなく?」

「まあ、食べてみてください。止まらなくなりますよ」

 王女様は、恐る恐るアーモンドを一粒つまみ、口へ運んだ。

 カリッ。

 小気味よい音が響く。

「……んっ!?」

 王女様の目が丸くなった。

 燻製の煙を纏ったナッツは、生のそれとは全く別物だ。

 噛み砕くたびに、ナッツの油分と燻香が混ざり合い、濃厚なコクが生まれる。そこに岩塩の鋭い塩気と、バターの背徳的な風味が追い討ちをかける。

「な、なんですのこれ……! お砂糖を使っていないのに、噛めば噛むほど甘みが出て……それに、この焦げたような香りが、鼻に抜けて……!」

「お次は、こちらを」

 俺はもう一皿、ガラスの器に入った『ドライフルーツの燻製・蜂蜜漬け』を出した。

 干しイチジクとレーズンを軽く冷燻し、たっぷりの蜂蜜に漬け込んだものだ。

 王女様は、ナッツの塩気が残る口で、甘いイチジクを頬張った。

「んん〜〜〜っ!!」

 今度は、頬を押さえて身悶えした。

「甘い……! でも、ただ甘いだけじゃなくて、煙の香りが大人びた深みを出していて……! しょっぱいのと、甘いの……交互に食べたら、永遠に止まりませんわ!!」

 カリッ、ポリッ。もぐもぐ。

 カリッ、ポリッ。もぐもぐ。

 王女様の手が止まらない。

 いわゆる「無限ループ」に突入したようだ。

 高貴な王女様が、リスのように頬を膨らませてナッツを貪る姿は、なんともシュールで、愛らしかった。

「……はぁ、美味しい……。お城の窮屈なお茶会では、こんなに心安らぐ味には出会えませんでしたわ」

 一通り食べ終えたルミナス様は、うっとりとした表情で、隣に座るエリアーナの手を握った。

「やっぱり、ここは『楽園』ですのね。美味しいものがあって、優しいお姉様がいて……」

 ふと、王女様の表情が曇った。

「……私、お城ではいつも一人でしたの。体も弱くて、お父様やお兄様たちは政治で忙しくて……。だから、昨日お姉様の姿を見たとき、直感しましたの。この方なら、私の寂しさを埋めてくれるって」

 その言葉に、エリアーナの表情が優しく緩んだ。

 彼女は元聖女。傷ついた心を見過ごせない性分なのだ。

 エリアーナは、そっと王女様の頭を撫でた。

「……ルミナス様。私は、あなたの本当のお姉さんではありません。でも……この店にいる間だけなら、お話くらい、いくらでも聞きますよ」

「……! 本当ですの!?」

「はい。美味しい燻製とお茶を用意して、待っています」

 その瞬間、ルミナス様から目に見えるほどの「好き!」オーラが溢れ出した。

 彼女はエリアーナに抱きついた。

「大好きですわ! お姉様! 私、毎日通います! 権力を使ってでも、この店を守りますわ!」

 ……どうやら、俺たちはとんでもない「守護神パトロン」を手に入れてしまったらしい。

 店の隅で、警護をしていたレイモンド(今日も非番という体でサボっている)が、やれやれと肩をすくめているのが見えた。

『……まあ、教会の暗部もお前たちには手を出せなくなる。結果オーライ、ということにしておけ』

 そんな視線を感じながら、俺は空になったボウルに、追加のナッツを注いだ。

 王女公認の燻製屋。

 この看板は強力だが、同時に「もっと美味いものを出せ」という無言の圧力も意味していた。

 俺のスローライフは、ますます賑やかに、そして香ばしくなっていくようだ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 王女様、まさかの「ナッツの無限ループ」に陥落!

 高級料理もいいですが、こういう「やめられない止まらない」系のおつまみこそ、最強のグルメですよね。

 そして、孤独だった王女様の心も、エリアーナ(とカロリー)がガッチリと癒やしました。

 これで『王家』という最強の盾を手に入れたカオルたち。

 しかし、物語はここで終わりません。

 店が大きくなれば、新たな出会いと、新たな食材が待っています。

 次回、ドノバン様から持ち込まれる、過去最大級の『巨大食材』!?

「カオル君、ドラゴン……は無理だが、それに近い『ぬし』が獲れたぞ」

 燻製器に入り切るのか!?

 規格外の調理編、スタートです!

「ナッツ食べたい!」

「王女様ちょろい(可愛い)」

「権力ゲットだぜ!」

 と、無限ループの気配を感じた方は、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの工房を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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