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第24話 『再訪の審問官、告げられた王族の名、そして鴨肉の燻製ロースト』

 いつも応援ありがとうございます!

 前回、男爵の胃袋を掴み、パーティー料理を任されたカオルたち。

 順風満帆に見えた二人の前に、あの男が再び現れます。

 異端審問官レイモンド。

 しかし今回の彼は、敵としてではなく、重要な「情報」を持ってやってきました。

 明かされるパーティーの真の主賓。その名は、エリアーナにとって最も危険な人物かもしれず……?

 緊迫の展開と、それを吹き飛ばす「極厚の鴨肉」をご堪能ください!

 男爵家での試食会から数日後。

 俺は工房で、パーティーに向けた試作品の香りと格闘していた。

 今回の相手は貴族。豚や鮭もいいが、メインにはもっと「特別感」のある食材が必要だ。

 そんな時だった。

 チリン、とドアベルが鳴る音ではなく、裏口の勝手口がコンコンと控えめに叩かれたのは。

「……誰だ?」

 俺が警戒しながら扉を開けると、そこには見覚えのある灰色のローブが立っていた。

 異端審問官、レイモンドだ。

 だが、今日はいつもの殺気立った雰囲気はなく、どこか手持ち無沙汰な様子だ。

「……安心しろ。今日は非番だ」

「レイモンドさん……? ここへ何のご用で?」

「……近くを通ったからな。ついでに、その……例のベーコンとやらが、まだ残っているかと気になってな」

 どうやら、この強面の審問官様は、完全に俺の燻製の虜になっているらしい。

 俺は苦笑しながら彼を招き入れ、売れ残っていたベーコンの端切れと、試作中のチーズを出した。

 レイモンドは、それを無言で、しかし至福の表情で平らげると、ふぅと満足げな息を吐き、急に真剣な眼差しを俺に向けた。

「……さて。礼代わりに、一つ忠告をしておこうと思ってな」

「忠告?」

「ああ。お前が料理を担当することになった、ゼフィル男爵の誕生パーティーのことだ」

 レイモンドの声が、一段低くなる。

「あのパーティーには、お忍びだが、王都から『第三王女・ルミナス様』がご臨席されることになった」

「……王女様、ですか?」

 その名を聞いた瞬間、奥で作業をしていたエリアーナの手が止まり、カタリとスプーンを落とした。

 俺は振り返り、彼女の蒼白な顔を見て、事の重大さを察した。

「……店主。お前の連れているその娘……やはり、訳ありのようだな」

 レイモンドはエリアーナを一瞥したが、すぐに視線を外し、独り言のように続けた。

「ルミナス王女は、敬虔な聖教徒だ。そして何より、病弱だった幼少期に『聖女』の祈りで救われた過去を持つ。……聖女の顔を、誰よりも鮮明に覚えているお方だ」

 俺の背筋に冷たいものが走った。

 もしパーティー会場で、エリアーナが王女と鉢合わせたら?

 正体がバレれば、教会に連れ戻されるか、あるいは「聖女をかどわかした」罪で俺が処刑されるか。

「……どうして、そんな情報を俺に?」

「俺は、美味いものが食えなくなるのが嫌なだけだ。……当日は、俺も警備として会場に紛れる。だが、もし王女が騒ぎ出せば、俺も職務上、動かざるを得ない」

 レイモンドは立ち上がり、フードを目深に被り直した。

「一番いいのは、娘を連れて行かないことだ。……だが、あの『マント』の気配遮断があれば、遠目なら誤魔化せるかもしれん。あとは……」

「あとは?」

「王女の注意を、他の何かに釘付けにすることだ。例えば……『料理』とかな」

 レイモンドはニヤリと笑い、裏口から姿を消した。

「……カオル様……私、お留守番します。私のせいで、カオル様に迷惑は……」

「いいや、エリアーナ。君は連れて行く」

 俺は震える彼女の肩を抱き寄せた。

 一人にする方が危険だ。それに、最高の料理を作るには、彼女のサポートが不可欠だ。

「レイモンドの言う通りにしよう。王女様が、君の顔を見るのも忘れるくらい、とびきりの料理を出してやる」

 俺は保管箱から、取っておきの食材を取り出した。

真鴨マガモの胸肉』。

 脂の乗った極上の赤身肉だ。

「作るぞ。王族の舌すらも支配する、最強のメインディッシュを」

 俺は鴨肉の皮目に、ナイフで細かく切り込みを入れる。

 塩、黒胡椒、そしてすりおろした『オレンジの皮』をまぶし、一晩マリネする。

 鴨とオレンジ。これは前世のフレンチでも王道の組み合わせだ。

 そして、燻製だ。

 今回は、甘くフルーティーな香りのする『リンゴ』と『サクランボ』のチップをブレンドして使う。

 《スキル【燻製マスター】Lv.2:『香気浸透アロマ・インフュージョン』発動》

 《果実チップの甘い香りを、鴨の脂身に完全に定着させます》

 じっくりと熱燻ねつくんで火を通す。

 皮から余分な脂が落ち、その脂がチップで燻され、再び肉を包み込む。

 黄金の循環。

 数時間後。

 完成したのは、深い飴色に輝く『真鴨の燻製ロースト』だ。

 俺はそれをスライスした。

 断面は、鮮やかな薔薇色ロゼ

 溢れ出す肉汁は、燻製の香りとオレンジの爽やかさを纏っている。

「……味見だ、エリアーナ」

 一切れ口に入れた彼女は、目を見開いたまま、動かなくなった。

 そして、ゆっくりと、その瞳に恍惚の色が浮かぶ。

「……すごい……。噛んだ瞬間、お肉の甘みと、フルーティーな香りが……。これは、お肉料理なのに、まるでデザートのような……」

「よし。これならいける」

 ソースには、燻製した蜂蜜とバルサミコ酢を煮詰めた特製ソースを使う。

 甘味、酸味、塩味、そして燻香。

 この複雑怪奇なハーモニーは、きっと世間知らずの王女様の度肝を抜くはずだ。

「待っていろ、王女様。俺の燻製で、君の世界を塗り替えてやる」

 決戦の日は近い。

 俺たちは、最強の武器(鴨肉)を携え、貴族と王族の待つ戦場へと向かう。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 レイモンドさん、完全に「近所の口の悪いけど世話焼きな兄ちゃん」になりつつあります(笑)。

 しかし、もたらされた情報は致命的。

 第三王女ルミナス。聖女オタク(?)の王女様が登場です。

 迎え撃つは、鴨肉の燻製ロースト・オレンジ風味。

 鴨×ネギならぬ、鴨×燻製×オレンジ。

 この破壊力で、王女の視線を釘付けにできるのか!?

 バレたら即終了の、ハラハラドキドキのパーティー編が始まります!

 次回、いよいよ男爵邸へ!

 煌びやかな会場、並み居る貴族たち。

 そこでカオルの燻製が放たれた時、会場は「煙」ではなく「歓声」に包まれる――はず!

「レイモンド、いい奴だなw」

「鴨のロースト……ワイン必須だ」

「王女様の前で正体バレ!? 緊張してきた……!」

 と、続きが気になっていただけましたら、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの挑戦を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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