第22話 『ダンジョン飯革命!携帯食(レーション)の常識を覆すベーコン』
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前回、香りに釣られて店を取り囲んだ強面の冒険者たち。彼らにとって「保存食」といえば、硬くて塩辛いだけの干し肉か、味のない堅パンが相場でした。
そこに、カオルの「厚切りベーコン」が投入されたらどうなるか?
答えは明白。――「革命」です。
胃袋を掴まれた冒険者たちの熱狂と、新たなビジネスの匂いをお楽しみください!
「おい兄ちゃん!さっきの美味そうな匂いの正体、まだあるか!?」
ドンドンドンと扉を叩く音は止まらない。
俺は一度深呼吸をして、エリアーナに安全な場所へ下がるよう合図してから、扉を少しだけ開けた。
そこには、武装した男たちが十数人。革鎧を着た剣士や、杖を持った魔術師らしき者もいる。テルムの街を拠点にする冒険者パーティーだ。
「……本日は定休日ですが」
「わかってる!だが、あの匂いを嗅がされて黙って通り過ぎろってのは無理な相談だ!」
「金ならある!言い値でいい、売ってくれ!」
彼らの目は血走っていた。空腹という名の獣が暴れている。
俺は苦笑し、工房から焼き上がったばかりの『ハイ・オークのベーコン』のブロックを持ち出した。
「……商品はこれです。『厚切り燻製ベーコン』。そのままかじってもいいし、焼けばさらに美味い。何より、保存が効きます」
俺がそう説明して、試食用の小皿を差し出した瞬間、先頭にいたリーダー格の大男が、分厚い指で一切れをつまみ、口に放り込んだ。
「んぐっ……!?」
大男の動きが止まる。
そして、次の瞬間、彼は天を仰いで吠えた。
「うぉぉぉぉッ!!なんだこれはッ!!」
周囲の仲間が驚いて彼を見る。
「おい、ガストン!どうしたんだ!」
「……脂だ!極上の脂が、口の中で溶けやがった!それにこの香り……燻製の香ばしさが、疲れた体に染み渡るようだ……!」
ガストンと呼ばれた男は、俺に詰め寄った。
「兄ちゃん!これ、ダンジョンに持っていっても腐らねえのか!?」
「ええ。俺の燻製技術と『星屑の岩塩』で処理してますからね。常温でも一ヶ月は持ちますよ」
その言葉を聞いた瞬間、冒険者たちの目の色が変わった。
ただの「美味いもの」を見る目ではない。「生き残るための必需品」を見る目だ。
「おい、聞いたか!?一ヶ月だぞ!」
「いつもかじってる、あの石みたいに硬い干し肉とは大違いだ!」
「これがあれば、遠征中の食事が楽しみになるぞ!」
そこからは、まさに争奪戦だった。
定休日のはずの店内は、即席の販売所と化した。
「ブロックでくれ!3本だ!」
「俺たちは来週から深層に潜るんだ!あるだけよこせ!」
「スープに入れる端切れでもいい!売ってくれ!」
俺とエリアーナ(結局、手伝ってくれた)は、てんてこ舞いでベーコンを切り分け、包み、手渡した。
用意していたハイ・オークのベーコンは、瞬く間に冒険者たちの背嚢へと消えていった。
「……また来るぞ!兄ちゃん!」
「『森の燻製工房』……いい店を見つけたぜ!」
嵐が去った後、店には再び静寂と、ずっしりと重い売上金が残された。
「……カオル様、すごいです。冒険者の方々があんなに喜んでくださるなんて」
「ああ。彼らにとって、食事は士気に直結するからな」
一息ついていると、入れ違いに、いつもの豪快な笑い声と共にあの人がやってきた。
ドノバン様だ。すれ違った冒険者たちが持っていたベーコンを見て、飛んできたらしい。
「カオル君!君はまたやったな!?」
ドノバン様は興奮気味に、残っていたベーコンの切れ端を口に放り込むと、ニヤリと笑った。
「……やはりか。このベーコン、ただ美味いだけじゃない。食べた直後に、腹の奥から熱が湧いてくる。微弱だが『スタミナ回復』と『体温上昇』のバフがかかっているな?」
さすがはギルドマスター、目ざとい。
ハイ・オークの肉質と、燻製による成分濃縮が生んだ副次効果だ。
「カオル君。これは『革命』だ。ダンジョン攻略における食糧事情を根底から覆すぞ」
ドノバン様は真剣な表情で、俺に提案してきた。
「ギルドとして、このベーコンを『推奨携帯食』として認定したい。そして、将来的にはギルド専売で、遠征隊への大量納入を頼みたいのだが……どうだ?」
ギルド専売。つまり、安定した大口顧客の獲得だ。
断る理由はない。
「喜んでお受けします。ですが、生産が追いつくかどうか……」
「そこは任せろ!肉の仕入れルートは私が確保する。君は『燻製』という魔法をかけることだけに集中すればいい!」
こうして、俺の作ったベーコンは、テルムの街の冒険者たちの間で「奇跡の携行食」として爆発的に普及することになった。
「あの店のベーコンを持っていくと、生存率が上がるらしい」
「美味すぎて、ダンジョンの中でキャンプするのが待ち遠しい」
そんな噂と共に、『森の燻製工房』の名は、食通だけでなく、屈強な戦士たちの間でも伝説となり始めていた。
だが、俺たちのスローライフ(大忙し)は、これで終わりではなかった。
ドノバン様が、悪戯っぽい笑みを浮かべて、懐から一枚の羊皮紙を取り出したからだ。
「ところでだ、カオル君。君のその腕を見込んで、ある『貴族様』から、個人的なパーティー料理の依頼が来ているんだが……」
冒険者の次は、貴族。
どうやら、俺の燻製スキルは、身分を超えて人々の胃袋を侵略し始めているらしい。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
冒険者たちの胃袋も完全攻略!
「不味い保存食」とおさらばできるなら、そりゃあ並びますよね。
しかもバフ付き。これでダンジョンの攻略難易度も下がることでしょう。カオルくん、影の功労者です。
そして、ドノバン様からの新たな案件。
今度は「貴族」からの依頼です。
庶民、冒険者、と来て、ついに特権階級へ。
しかし、ただの料理依頼で終わるはずがありません。
カオルが出す「貴族を唸らせる燻製料理」とは一体……?
次回、華やかな貴族のパーティーに、燻製の香りが殴り込み!?
優雅で、かつ野性的な、カオルのフルコースにご期待ください!
「ベーコンは飲み物(錯乱)」
「冒険者にとっての神アイテム確定」
「貴族編も楽しみ!」
と、お腹を空かせつつワクワクしていただけましたら、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの快進撃を後押ししてください!
よろしくお願いいたします!




