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第21話 『燻製の王様ベーコン、黄金の朝食、そして冒険者たちの視線』

 いつもたくさんの応援、本当にありがとうございます!皆様のブクマと評価が、執筆の最大のモチベーションです!

 さて、前回は異端審問官とのヒリつくような心理戦をお届けしましたが、今回は打って変わって、平和で最高に美味しい回です。

 燻製好きなら避けては通れない、あの「王様」がついに登場します。

 ソーセージが「動」の衝撃なら、こいつは「重」の衝撃。カリカリ、ジュワッ……。

 朝食の常識を変える、破壊力抜群の飯テロ回です。空腹時の閲覧にはご注意を!

 嵐のような異端審問官の来訪から、数日。

『森の燻製工房』は、定休日を設けていた。

 理由は二つ。一つは、あまりの盛況ぶりに仕込みが追いつかなくなったこと。

 そしてもう一つは、あの「聖女の噂」を払拭するため、さらなる「味の暴力」で客を黙らせる新商品を開発するためだ。

「エリアーナ。燻製において、ソーセージが『皇太子』だとしたら、『王様』はなんだと思う?」

 工房のテーブルで、俺はもったいぶって問いかけた。

 エリアーナは、先日の一件ですっかり信頼しきった目で、首を傾げる。

「王様、ですか?……もっと、すごいお肉ということでしょうか?」

「そうだ。保存性、旨味、脂の甘み。その全てが最強の食材。それが『ベーコン』だ」

 俺の前には、ドノバン様に無理を言って調達してもらった、最高級の食材が鎮座している。

『ハイ・オークの三枚肉(バラ肉)』だ。

 通常の豚肉よりも赤身の味が濃厚で、脂身は融点が低く、口の中でサラリと溶ける。まさに、ベーコンのために存在するような肉だ。

「よし、やるぞ」

 ベーコン作りは、本来ならば一週間以上の時間を要する。

 塩漬け(キュアリング)、塩抜き、乾燥、そして燻製。

 だが、今の俺にはLv.2のスキルと、最強の岩塩がある。

 俺は『星屑の岩塩』に、黒胡椒、ローリエ、そして隠し味に少量の砂糖メープルシュガーを混ぜ合わせた『魔法のスパイス』を作った。

 それを、巨大な肉塊に、親の仇のように擦り込んでいく。

「美味くなれ、美味くなれ……」

 俺の気迫に、エリアーナも一緒になって肉を揉み込んでくれる。

 《スキル【燻製マスター】Lv.2:『急速熟成クイック・エイジング』発動》

 《『星屑の岩塩』の浸透圧効果を最大化し、一週間分の熟成を一時間に短縮します》

 肉の色が、鮮やかな薔薇色へと変化していく。

 水分が抜け、旨味が凝縮された肉を、今度は乾燥させる。

 そして、いよいよ燻製だ。

 今回使うチップは『ヒッコリー(クルミ科)』の代用となる、森の古木『鉄樫アイアン・オーク』のチップ。

 香りが強く、力強い肉の味に負けない、パンチのある煙が出る。

 燻製器の扉を閉め、じっくりと熱を入れること数時間。

 工房の外まで漏れ出す香りは、ソーセージの時とは違っていた。

 もっと野性的で、重厚で、本能を揺さぶるような「脂と煙」の香り。

「……そろそろだ」

 俺が燻製器の扉を開けると、そこには――。

 飴色に輝く、巨大な肉の延べ棒が完成していた。

 表面は脂で艶々と光り、滴り落ちる脂がチップの上でジュッと音を立てて煙になる。

「美しい……」

「宝石みたいです……」

 俺たちは、完成したベーコンをスライスする。

 包丁を入れると、断面は赤と白の美しい層をなしていた。

「さあ、エリアーナ。これを一番美味しく食べる方法を教える」

 俺は厚切りにしたベーコンを、熱した鉄のフライパンに並べた。

 油は引かない。ベーコンから溢れ出る脂だけで十分だ。

 ジューーーーーッ!!!

 暴力的な音が響く。

 脂が跳ね、香ばしい匂いが爆発する。

 カリカリに焼き目がついたところで、その脂の中に、新鮮な卵を二つ、落とす。

 パカッ、ジュウゥゥ。

 白身の縁がチリチリと焦げ、黄身がぷるん、と揺れる。

 最強の朝食、『厚切りベーコンエッグ』の完成だ。

「……こんなの、絶対においしいに決まっています……」

「ああ。理屈じゃない。本能で食うんだ」

 俺たちは皿に取り分け、焼きたての黒パンを添えた。

 フォークで黄身を突き崩し、とろりと流れ出した黄金のソースを、カリカリのベーコンに絡める。

 それを、大きな口で頬張る。

「んんっ――!!!」

 ガリッ!ジュワッ!

 噛み締めた瞬間、口の中が脂の旨味で満たされた。

 強烈な燻製の香りと、凝縮された肉の塩気。それを卵の黄身がまろやかに包み込む。

『星屑の岩塩』のミネラルが、脂の甘みを極限まで引き立てている。

「……カオル様、私、私……!」

「どうした?」

「ほっぺたが……落ちてしまいそうですっ!」

 エリアーナが、今までで一番の笑顔を見せた。

 その口元には、少しだけ卵の黄身がついている。

 俺は思わず笑ってしまい、自分の親指でそれを拭ってやった。

「……あっ」

 二人の間に、少しだけ甘い空気が流れる。

 だが、それを破ったのは、店の扉を叩く、激しい音だった。

 ドンドンドンッ!!

「おい!店主!いるんだろ!?」

「定休日なのは知ってるが、この匂いは反則だ!」

「俺たちにも、その匂いの元を売ってくれ!」

 外を覗くと、そこには剣や杖を背負った、ガラの悪そうな――いや、腹を空かせた「冒険者」たちの集団がいた。

 どうやら、この重厚な肉の香りは、肉体労働者である彼らの胃袋を、直撃してしまったらしい。

「……どうやら、新しい客層の開拓ができそうだな」

 俺は苦笑しながら、エリアーナに目配せをした。

 この『王様』がいれば、教会の目も、聖女の噂も、全て脂と煙で覆い隠せるかもしれない。

 俺たちの「飯テロ」は、街の冒険者ギルドをも巻き込んで、さらに規模を拡大していくことになりそうだ。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 ベーコンエッグ、食べたくなりましたか?(作者は書きながら冷蔵庫に走りました)

「厚切り」というのがポイントです。カリカリとジューシーの両立、これぞ燻製の醍醐味。

 さて、匂いにつられてやってきたのは、街の荒くれ者・冒険者たち。

 彼らにとって、保存が効き、塩分補給もでき、何より美味いベーコンは、最高の「ダンジョン飯」になるはずです。

 これで、顧客層が一気に広がりそうですね!

 次回、冒険者たちが殺到!

 そして、カオルの作る燻製が、ダンジョン攻略の必需品として「革命」を起こす!?

 さらに、ドノバン様から新たな依頼も……?

「ベーコンエッグは正義!」

「深夜に読むんじゃなかった……」

「冒険者も餌付け完了ですねw」

 と、お腹を鳴らしていただけましたら、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの商売繁盛を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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