第17話 『初出荷とギルドマスターの絶叫、そして伝説の前夜』
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さて、前回ついに完成した究極の逸品『楽園のソーセージ』。
そのとんでもない代物を手に、二人は満を持してテルムの街へと向かいます。
百戦錬磨の商人ギルドマスター・ドノバンは、この「楽園の味」を前に、一体どんな反応を見せてしまうのか?
そして、この一本のソーセージが、街にどれほどの衝撃を巻き起こすことになるのか……。
歴史が変わる瞬間を、お見逃しなく!
俺たちが街テルムに帰ってきたのは、それから数日後のことだった。
以前のように徒歩ではなく、街で買った頑丈な馬車に、自慢のソーセージをたっぷりと積んでの凱旋だ。移動が格段に楽になっただけでなく、エリアーナが楽しそうに景色を眺めているのを見ると、買ってよかったと心から思う。
商人ギルドの門をくぐると、俺たちはもはやVIP待遇だった。
連絡もなしに訪れたにもかかわらず、ドノバン様はすぐに時間を空けてくれ、例の豪華な応接室へと通された。
「カオル君!待っておったぞ!……ほう、今日はなにやら、とんでもなく良い匂いをさせておるな?」
鼻の利くドノバン様は、俺たちが持ってきた荷物に気づいているようだった。
俺は笑みを浮かべながら、麻布に包んでいた『楽園のソーセージ』を一本、テーブルの上に取り出した。
「ドノバン様との約束を果たすべく、工房の初商品を作ってまいりました」
「おお!これが!……見た目はただの干し肉のようだが……この凝縮された旨味の香りは、尋常ではないな……」
ドノバン様が、鑑定するようにソーセージを眺める。
俺は、許可を得て応接室に備え付けられていた暖炉の火を借りると、持参した鉄板の上で、ソーセージを一本、焼き始めた。
ジュウウウウウウ……ッ!
皮が張り、脂が溶け出す音とともに、暴力的なまでの香りが部屋を満たす。
それは、先日俺たちが味わった、「楽園の香り」だった。
ドノバン様の喉が、ゴクリと鳴るのが見えた。
焼き上がったソーセージを切り分け、ドノバン様に差し出す。
彼は、先日の『星光のジャーキー』の時とは違う、純粋な食への探求心に満ちた目でそれを受け取ると、ひと思いに口へ放り込んだ。
そして、叫んだ。
「う、美味ぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!!!!」
ギルドマスターの威厳など、そこにはなかった。
一人の食いしん坊なオヤジが、人生最高の美味に出会った瞬間の、魂の叫びだった。
「なんだこれはッ!なんだこの、肉汁の洪水はッ!噛んだ瞬間に弾ける皮の食感!そこから溢れ出す、どこまでも純粋で力強い肉の旨味!後から追いかけてくるスパイスの刺激と、鼻に抜ける熟成された燻香!全てが……全てが完璧だッ!!」
一通り叫び終えたドノバン様は、はあはあと息を整えると、商人の目に戻って俺に詰め寄った。
「カオル君!君は、またしてもとんでもないものを創り出してくれた!これは売れる!間違いなく売れるぞ!」
「ありがとうございます。ですが、このソーセージの真価は、これだけじゃないんです」
俺はそう言うと、持参した黒パンと、鍋を取り出した。
焼いたソーセージをパンに挟んで、即席のホットドッグを作る。
さらに、輪切りにしたソーセージを野菜と一緒に煮込み、シンプルなスープ――ポトフを仕立てた。
「……なっ!?」
ソーセージから溢れ出した旨味が、スープ全体に溶け出し、ただの野菜スープを、王侯貴族が食すコンソメスープのような、深い味わいへと昇華させている。
ホットドッグにかぶりついたドノバン様は、言葉を失っていた。
「……一本で主役になり、料理に加えれば最高の出汁にもなる……。万能すぎる……。カオル君、君は、この街の食文化を、根底からひっくり返すつもりか……?」
ドノバン様は、わなわなと震えながら、一つの提案を持ちかけてきた。
「……カオル君。言葉で説明するより、この街の連中の舌に、直接叩き込んでやるのが一番だ。明日、君に与えたあの拠点で、このソーセージの、一日限定の試食販売会を開かんか!宣伝は、ギルドが総力を挙げて行う!」
願ってもない提案だった。
その日の午後、俺とエリアーナは、街の拠点――俺たちのもう一つの城で、明日の準備を進めていた。
大量のソーセージを焼く準備をしながら、エリアーナがぽつりと言った。
「私たちのお店、名前が必要ですね」
「……そうだな」
俺は少し考えると、一枚の木の板に、ナイフで文字を彫り始めた。
『森の燻製工房』
「どうかな?」
「はい!素敵です!私たちに、ぴったりです!」
エリアーナが、嬉しそうに微笑む。彼女は、その看板に、森の草花をあしらった可愛らしい装飾を描き加えてくれた。
準備は、万端だ。
明日は、俺たちの工房の、記念すべき船出の日となる。
そして、翌朝。
俺とエリアーナは、自分たちの店の前に広がる光景に、完全に度肝を抜かれることになった。
「……な、なんだ、これ……」
開店まで、まだ一時間以上あるというのに。
俺たちの店の前には、道の角を曲がり、その先が見えなくなるほどの、とんでもない長さの行列ができていたのだ。
商人ギルドが流した『ギルドマスターが絶叫した、伝説の肉料理、限定販売』という噂は、どうやら俺たちの想像を、遥かに超える勢いで街中を駆け巡っていたらしい。
俺とエリアーナは、顔を見合わせた。
その顔には、困惑と、恐怖と、そしてそれを上回るほどの、武者震いが浮かんでいた。
伝説の始まりは、いつも少しだけ、騒がしいものらしい。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ドノバン様の完璧なリアクション芸、いかがでしたでしょうか(笑)。
そして、ついに自分たちの店の看板を掲げた二人。しかし、その門出は、とんでもない大騒ぎで幕を開けることになりそうです!
果たして、カオルとエリアーナは、この長蛇の列を捌ききることができるのか!?
『楽園のソーセージ』を口にしたテルムの民衆は、どんな反応を見せるのか!?
次回、ついにオープン!『森の燻製工房』伝説の初日!
「ドノバン様、毎回期待を裏切らないw」
「店の名前、シンプルでいい!」
「この行列はヤバすぎる!伝説の始まりだ!」
と、大行列の最後尾に並びたくなった方は、ぜひブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、二人の門出を応援してください!
よろしくお願いいたします!




