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第16話 『工房、本格稼働。そして楽園のソーセージ』

 いつもたくさんの応援、本当にありがとうございます!

 皆様からの温かい感想や評価が、二人の工房を動かすエネルギーになっています!

 さて、前回は甘い甘い雰囲気で幕を閉じましたが、いつまでもニヤニヤしてはいられません!

 商人ギルドとの約束を果たすべく、ついにカオルの燻製工房が本格始動します!

 最高の素材、最高の道具、そしてLv.2のスキル。全てが揃った今、カオルが最初に生み出す「キラー商品」とは一体……?

 飯テロ警報、再び最大レベルで発令します。ご注意ください!

 エリアーナの頬に残した感触を時折思い出しては、一人で赤面する。そんな甘酸っぱい日々が数日続いた、ある朝。

 俺は、香ばしい燻製ナッツのかゆをすすりながら、決意を固めていた。

「エリアーナ。今日から、俺たちの工房を本格的に動かす」

「はい、カオル様!私、何でもお手伝いします!」

 聖女のマントを身にまとった彼女は、やる気に満ち溢れていた。その姿は、もう森で倒れていた頃の儚さなど微塵も感じさせない。

 商人ギルドとの約束。それは、俺の作る燻製を安定的に供給すること。

 そのためには、まず、この世界の誰もが驚き、唸るような、工房の顔となる「看板商品」が必要だった。

「作りたいものは、決まってるんだ。『ソーセージ』っていう、ひき肉を腸に詰めて燻製にした料理だ」

 俺がそう説明すると、エリアーナは不思議そうに首を傾げた。この世界には、まだソーセージという概念がないらしい。ならば、俺が作るものが、この世界のソーセージの常識になる。

 俺は早速、スキルに意識を集中した。

 《スキル【燻製マスター】Lv.2が、所持する素材から最適なレシピを構築します》

 頭の中に、完成された調理法が流れ込んでくる。

 《レシピ名:楽園のソーセージ(パラダイス・ソーセージ)》

 《材料:『浄化された極上獣肉』(赤身7:脂身3)、『星屑の岩塩』、『炎山椒』、そして森に自生する『岩パセリ』。腸詰用の腸は、猪のものが最適》

「よし、完璧だ」

 俺たちは早速、材料の準備に取り掛かった。

 俺が、ミスリル製のナイフで極上獣肉を叩き、完璧な粗挽きのひき肉を作っていく。その隣で、エリアーナは猪の腸を、彼女の聖なる力で丁寧に浄化・洗浄してくれていた。おそらく、世界で一番清浄な腸だろう。

 ひき肉に、刻んだ岩パセリとスパイスを混ぜ合わせる。

 肉の赤、パセリの緑、そしてスパイスの褐色が混じり合い、それだけで食欲をそそる芸術品のような見た目になっていく。

「次は、これを詰めていくぞ」

 腸詰めは、二人での共同作業だ。

 俺が肉を押し込み、エリアーナが腸を支える。慣れない作業に時折失敗しては、二人で顔を見合わせて笑い合った。工房には、幸せな時間が流れる。

 全ての腸詰めが終わると、いよいよ燻製だ。

 ここで、俺はLv.2で解放された新技――『熟成燻製エイジング・スモーク』を使うことにした。

 低温の煙で、長時間、じっくりと熟成させながら火を通していく。そうすることで、肉の旨味成分が爆発的に増加し、保存性も香りも、通常の燻製とは比べ物にならないレベルにまで昇華されるのだ。

 特製の燻製器に、ずらりと吊るされたソーセージ。

 桜と、ほのかに甘い香りのする白樺のチップをブレンドした煙が、それらを優しく包み込んでいく。

 そして、丸一日後。

 工房の扉を開けた瞬間、俺たちは言葉を失った。

 工房内には、これまで嗅いだことのないような、複雑で、芳醇で、抗いがたいほどに官能的な香りが満ち満ちていた。

 燻製器の中で、飴色を通り越して、美しい赤褐色に輝くソーセージが、完成を告げていた。

「……これが、俺たちの、最初の商品……」

 俺は完成したソーセージの中から一本を手に取り、フライパンで軽く焼き目をつける。

 パチパチと脂がはぜる音。皮が張り詰め、今にもはち切れそうだ。

 焼き上がったそれを、ナイフで切る。

 パリッ!

 小気味よい音とともに、薄い皮が弾けた。

 瞬間、肉汁が滝のように溢れ出し、凝縮された旨味の香りが、湯気とともに立ち上る。

「……いただきます」

 俺とエリアーナは、同時に、熱々のソーセージを頬張った。

 ――その瞬間、俺たちの脳は、幸福な衝撃に焼かれた。

 なんだ、これは。

 噛んだ瞬間に弾ける、肉汁の洪水。浄化された肉が持つ、どこまでも純粋で力強い旨味。炎山椒のピリッとした刺激と、岩パセリの爽やかな香りが鼻に抜け、そして熟成された燻香が、それら全てを王様のようにまとめ上げている。

 美味い、という言葉では、あまりにも足りない。

 これは、人の手が生み出していい領域を超えた、「楽園の味」だった。

「……おい、しいです……。一口、食べただけなのに……体の中から、力が湧いてくるみたいです……」

 エリアーナが、恍惚とした表情で呟く。

 俺も、同じ気持ちだった。

 俺は、ずらりと並んだ完成品のソーセージを見つめた。

 その一本一本が、黄金に輝いて見える。

「……よし。エリアーナ、準備をしよう」

 俺は、自信に満ちた笑みを浮かべて言った。

「テルムの街に、衝撃を与えに行くぞ」

 最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 工房本格稼働、そして第一号商品『楽園のソーセージ』、ついに完成です!

 さて、このとんでもない代物を、テルムの街は、そして商人ギルドマスター・ドノバンは、どう受け止めるのでしょうか? 『星光のジャーキー』が「静」の衝撃だとしたら、このソーセージは、街の食文化そのものを根底から揺るがす「動」の衝撃となるでしょう。

 次回、再びテルムの街へ!市場の歴史が、変わります。

「このソーセージは、罪!」

「共同作業、ごちそうさまです!」

「ドノバン様、また気絶しちゃうんじゃ……w」

 と、腹ペコになっていただけましたら、ブックマークと☆☆☆☆☆の評価で、カオルの初出荷を応援してください!

 よろしくお願いいたします!

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