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第10話 『絶望の底、逆転の狼煙(のろし)、そして聖なる煙』

いつも物語を追いかけてくださり、本当にありがとうございます!


ついに、記念すべき第10話です!


前回、カオルとエリアーナの連携プレイで見事に瘴気獣を罠にかけた二人。


しかし、落とし穴の底から聞こえるのは、衰弱とは程遠い、怒りに満ちた咆哮でした。


絶望的な状況を、戦闘力ゼロの二人はどう覆すのか?


「燻製スキル」が、ただの料理スキルではない、その真価を証明する時が来ました。


伝説の始まり、その目撃者になってください!

 怒りと苦痛に満ちた咆哮が、落とし穴の底から響き渡る。


 俺とエリアーナは、息を殺しながら、ゆっくりと罠の淵へと近づいた。松明の光が照らし出した光景に、俺は思わず息を呑む。


「……なんだ、あれは……」


 穴の底で蠢いていたのは、熊だった。


 だが、俺の知るどんな熊よりも巨大で、その姿は禍々しいの一言に尽きる。全身の毛皮はところどころ腐り落ち、瘴気の霧をまとっている。鋭い爪は黒くねじくれ、何よりその双眸は、憎悪を煮詰めたような血の赤色に爛々と輝いていた。


 間違いなく、こいつが瘴気獣だ。


 落下の衝撃で片足が折れているようだが、その凶暴性は衰えていない。俺たちの姿を認めると、瘴気獣は再び天を衝くような咆哮を上げた。


「カオル様、危ない!」


 エリアーナが叫んだ瞬間、瘴気獣は大きく息を吸い込み――次の瞬間、その口から黒い霧状のブレスを吐き出した!


 瘴気のブレスだ!


 俺たちは咄嗟に地面に伏せ、ブレスを回避する。俺たちがいた場所の木々が、黒い霧に触れただけで、シュウウと音を立てて枯れていった。


「……冗談だろ。あんなの、まともに食らったら一発アウトだぞ」


 しかも、事態はさらに悪化していた。瘴気獣が、その巨大な爪を穴の壁に突き立て、少しずつ、しかし着実にこちらへ這い上がろうとしている。


 落とし穴の深さは十分なはずだが、奴の執念がそれを上回っていた。


「くそっ、このままじゃ……!」


「カオル様……!瘴気獣は、聖なる力に弱いはずです。ですが、私の今の力では、あの巨体を浄化しきるほどの祈りは……!」


 エリアーナが悔しそうに唇を噛む。彼女の言う通りだ。遠距離からあれだけの瘴気を浄化できるなら、彼女は国を追われたりしていない。


 聖なる力。浄化。


 その言葉が、俺の頭の中で、あるものと結びついた。


 ――煙だ。


 燻製を作る時に立ち上る、あの煙。


 煙は、気体だ。どんな隙間にも入り込み、対象を隅々まで包み込む。


 もし、あの煙に、エリアーナの聖なる力を乗せることができたなら……?


「エリアーナ!君の力で浄化の効果がある植物を知らないか!?どんなものでもいい!」


「えっ?ええと……この森なら、『銀鈴草ぎんれいそう』というハーブが……。それ自体に弱い浄化作用がありますが、私の祈りを込めれば、その力を増幅できます。ですが、それをどうやって……」


「煙で届けるんだ!俺が!」


 俺の突拍子もない言葉に、エリアーナは目を丸くした。だが、今は俺を信じるしかない。


 彼女はすぐに森の中へ駆け出すと、数分で月の光を浴びて銀色に輝く、鈴のような形をしたハーブをいくつか摘んできた。


「カオル様、これを!」


「頼んだ!」


 エリアーナは銀鈴草を両手で包み込み、再び祈りを捧げ始めた。


「聖なる光よ、我が祈りに応え、この草に宿りたまえ……!」


 彼女の全身から、淡くも温かい光が溢れ出し、その全てが銀鈴草へと注ぎ込まれていく。みるみるうちに彼女の顔は青ざめていくが、祈りをやめない。


 そして、銀鈴草がまばゆいほどの銀色の光を放った瞬間、彼女は力尽きたようにその場に膝をついた。


「……どうぞ、カオル様……。私の、今の全てです……」


「ああ、受け取った!」


 光り輝くハーブを手に、俺は再び穴の淵へ走る。


 瘴気獣は、もう半分近くまで壁を登ってきていた。


 俺は懐から火打ち石を取り出すと、銀鈴草に火をつけた。


 ただ燃やすだけじゃない。最高の効果を発揮させる。


 《スキル【燻製マスター】が発動》


 《対象:聖力を帯びた銀鈴草。浄化効果を最大化する燃焼方法を特定。最適な空気量、温度をコントロールします》


 頭の中に、燻製とは全く違う、しかし原理は同じ「燃焼と煙の最適化」情報が流れ込んでくる!


 俺はスキルに従い、手のひらで風を調整し、銀鈴草を燻すように燃やしていく。


 すると、普通の煙とは全く違う、銀色の粒子を帯びた、清浄で美しい煙が立ち上った。


 それはまるで、天からの光が煙になったかのようだった。


「いけっ……!」


 俺は、その聖なる煙を放つ銀鈴草を、落とし穴の底めがけて投げ込んだ。


 ギィィィィィィィアアアアアアアアッッ!!!


 聖なる煙に触れた瞬間、瘴気獣はこれまでで最も凄まじい絶叫を上げた。


 黒い瘴気の霧が、銀色の煙に触れるたびに、ジュウウと音を立てて蒸発していく。


 まるで、闇が光に浄化されていくように。


 瘴気獣は苦しみにもがき、壁からずり落ちた。


 穴の底は、たちまち銀色の煙で満たされていく。


 やがて、断末魔の叫びが途切れ、森に静寂が戻った。


 穴の底を覆っていた銀色の煙がゆっくりと晴れていくと、そこには――。


 黒い瘴気を完全に失い、ただの巨大な熊となって、安らかに息絶えている獣の姿があった。その表情は、苦しみから解放されたように、とても穏やかだった。


「……終わった……のか?」


 俺は、その場にへたり込んだ。エリアーナが、ふらつきながらも俺のそばに駆け寄ってくる。


 二人で支え合い、勝利を噛みしめる。


 その時、俺の頭の中に、心地よい通知音が響いた。


 《経験値が一定に達しました。スキル【燻製マスター】がLv.2にレベルアップしました》


 《新たなレシピが解放されました》


 《燻製ポイントによる生成可能アイテムが追加されました》


 俺たちの、最初の戦い。


 それは、スローライフを守るための、大きな、大きな一歩だった。

最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございます!


そしてやりました!ついに、瘴気獣を撃破です!!


剣も魔法も使わない、カオルの知識とエリアーナの祈り、そして「燻製スキル」が起こした奇跡の逆転劇、楽しんでいただけましたでしょうか?


そしてそして!ついにスキルがレベルアップ!


解放された新たなレシピとは!?追加された新アイテムとは!?


倒した瘴気獣からは、どんなすごい素材が手に入るのか!?


物語は、ここからさらに面白く、美味しくなっていきます!


「聖なる煙、かっこよすぎる!」


「これぞ生産職の戦い方!」


「レベルアップきたー!次回が待ちきれない!」


と、興奮していただけましたら、ぜひともブックマークと、ページ下の☆☆☆☆☆での最高評価を、心よりお待ちしております!


皆様の応援が、カオルの新たな燻製開発の原動力です!

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