レコードノイズ
バンド結成から数週間。俺たち「Ghost Note」は、めちゃくちゃながらも少しずつ音を合わせられるようになってきた。
轟はドラムスティックをまともに握れるようになり、リオは「起きている時間が増えた」という謎の成長を遂げた。
透音に至っては、シンセの音がますます怪しくなり、時々本当に異世界と繋がりそうな雰囲気を醸し出している。
そんなある日——。
「ライブ、出てみない?」
スタジオ「Beat Garage」の店長が、俺たちに突然そう言った。
「……え?」
「駅前でさ、『路上音楽祭』っていうのがあるんだよ。定期的に地元のバンドとかが演奏してるやつ」
「あー、聞いたことあるかも……」
「せっかくだから出てみたら? ちょっとヤバい音してるし、ウケるかもしれないぜ」
店長は軽いノリで言うが、俺たちにとっては大問題だった。
「ちょ、ちょっと待って! 俺たちまだちゃんとした演奏すら——」
「大丈夫! 俺たちの音を世に解き放つ時だ!」
「解き放たなくていい!!」
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しかし、轟とリオ、透音のテンションが上がりまくった結果、なし崩し的に初ライブが決定。
数日後、俺たちは駅前の特設ステージに立つことになった。
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ライブ当日
駅前の広場。
予想以上に人が集まっている。
地元の高校生や家族連れ、通りすがりの人々が足を止めて、ステージを見つめていた。
「ヤバい、緊張してきた……!」
「ふふ……観客たちが、霊界の使者に見える……」
「もうマジでやめろ!!!」
そんな中、俺たちの順番が回ってきた。
「次のバンドは、初登場! Ghost Note!!」
司会者が紹介すると、俺たちはステージに立つ。
緊張で手が震える。
(やれるのか……? 本当に……?)
そんな俺の不安を吹き飛ばすかのように、轟がスティックを握りしめた。
「いくぜぇぇぇ!!」
そして、ライブが始まった——。
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ライブ本番——事件発生
俺がギターを鳴らし、リオがベースを刻み、透音のシンセが不穏な音を響かせる。
轟がドラムを叩き始め、曲が走り出す。
(よし……悪くない!)
しかし——
バチン!!
「……あれ?」
俺のギターの音が消えた。
(まさか……)
確認すると、アンプの電源が落ちていた。
(よりによってこんな時に!?)
慌てて電源を入れ直そうとするが、その間もバンドは進行中。
そして——
「おわあああ!!」
轟のスティックが宙を舞い、派手にぶっ飛んだ。
「ヤバい、ドラムが……!」
「……仕方ない、こうなったら——この音で補う!」
透音がシンセのつまみを回し、突然、「ピピピピピピ!!」と謎の電子音を響かせた。
そして、リオがそれに合わせて即興でベースを弾く。
(マジか……こいつら、こんな状況で……!?)
俺もギターのアンプを繋ぎ直し、再び音を鳴らす。
そして、轟は——
「いけぇぇぇぇ!!!」
素手でドラムをぶん殴った。
「バァン」という音がこれでもかという程響いた。