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Crazy Crazy

 日曜日の昼下がり、駅の近くにある音野珈琲店。

 ここで、俺はバンドメンバーのオーディションを開くことになった。


(……オーディションって言っても、俺がメンバーを選ぶ立場なのか?)


 軽く緊張しながら、コーヒーをすすった。

 まさか本当に応募が来るとは思ってなかったし、そもそもどんな奴が来るのかもわからない。


(普通のバンドなら、ギターソロで猛烈アピール!とかあるんだろうけど……)


 俺のバンドは電子音楽×ロックだ。

 未経験でも全然OK! なんて書いたけど、今考えるとかなり無謀だったのかもしれない。


「……ま、やるしかないか…」


 そう思った矢先、ガチャッと店のドアが開いた。


「——おう、お前が神代 迅か?」


 低くてドスの効いた声。

 俺が顔を上げると、そこには明らかにバンドっぽくない人物が立っていた。


とどろき かえで、ドラム希望」


 金髪ショート、鋭い目つき、腕を組んで仁王立ち。

 見た目、完全に元ヤンキー。


「……あ、はい。轟さん、ね……?」


「あー、タメ口でいいっしょ。“とど”でいいよ。」


(いや、どう見ても年上に見えるんだけど!?)


 戸惑っていると、轟はズイッと身を乗り出してきた。


「ドラム経験はゼロ! でも、ケンカの時に鉄パイプ振り回してたからリズム感には自信ある。」


「……なるほど?」


 なるほどじゃない。絶対バンド向いてないだろ、この人。なんでドラムしたいんだ。


「ま、実際に叩いてみねぇとわかんねぇし、やらせてくれ」


「え、えぇ……まぁ……」


 すると、またドアが開く音がした。


「お、お待たせ……」


 そこに現れたのは、対照的におとなしそうな女の子だった。


「月島 リオ(つきしま りお)……ベース希望……」


 長い黒髪に、フード付きのパーカー。

 控えめな声だけど、手にはしっかりとベースケースを持っている。


「おぉ、楽器持参ってことはガチ勢?」


「……うん。中学の時、ちょっとだけやってた。」


 リオは椅子に座るなり、店員から出された水をゆっくりと飲んだ。

 さっきの轟と比べると、すごく大人しい。


(この子なら、まともに話ができそう……)


 と思ったのも束の間。


「……でさ、質問なんだけど……」


「うん?」


「ベースって、なんで四弦なのかな? もっとあったら楽しくない?」


「……え?」


「実は昨日、五弦ベース買っちゃったんだよね。しかも、三日間寝てないからめちゃくちゃテンションおかしくてさ……」


 リオは、ぼそぼそと呟いたかと思えば、次の瞬間、急にニヤッと笑った。


「鼓膜破壊だけは私に任せて!」


「怖い怖い怖い!!」


(寝不足でハイになってる!?それとも元から!?)


 轟といい、リオといい……すでにクセが強すぎる。


 そして——最後のメンバーが現れた。


「——やぁ、面白そうなことしてるねぇ」


 現れたのは、ロングの銀髪に、黒いマントを羽織った少女。

 カフェの雰囲気に似つかわしくない圧倒的異世界感。


千鳥ちどり 透音とおね……シンセ担当。」


(……え? シンセ?)


 まさかのシンセ希望。

 俺が目を丸くしていると、透音はニヤリと笑った。


「電子音楽とは、霊界と交信するためのツールだ。お前のバンドは“Ghost Note”だろ? なら、私こそが必要不可欠な存在ってわけだ。」


「いやいや、なんでそんな厨二病全開なの?」


「シンセの音は“幽霊のささやき”……そして、私はその通訳者だ!」


(……1番やべぇやつ来ちゃったよ。)


 こうして、俺のバンド「Ghost Note」には、

 元ヤンのドラム 轟、二重人格のベース リオ、オカルト信者のシンセ 透音が加入することになった。


……まともなバンドになる気がしない。

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