泥棒ドロボー
年末の慌ただしい商店街では、近頃物騒な事案が相継いでいる。
店員の少ない店や惣菜の無人販売店等を標的とした売り上げを盗まれる被害が立て続けに発生しているのだ。
店員が品だしをしている間にレジの中から売り上げ金をゴッソリ持っていくパターンがあれば、無人販売店に設置されてある現金入りの箱ごと運び出されたりするパターンもある。
盗みをはたらくやからの姿を見た人はおらず、犯人像も不透明だ。
「このままじゃ、年を越せない‼
犯人の顔さえ見れれば、捕らえる事が出来るんだ」
「そこで君を読んだわけだ。
どんな奴でも捕まえる事が出来ると云われている『泥棒ドロボー』の縫角枡友くん。商店街を脅かす泥棒を、泥棒ドロボーの君に捕まえてほしいんだ!」
泥棒ドロボーの称号をもつ枡友は、商店街の皆を思い、泥棒を盗む事を引き受ける。
「商店街の平和を乱すやからは、僕が許さない!
泥棒は絶体、僕の手で盗み出してやる」
泥棒を盗む交渉は決まった。
商店街の皆は普段通りに店に出て、商売を始める。
辺りを見渡せる商店街の中心に位置する『家具屋』の二階に潜んで、枡友は。不振な人物を探していた。
上から見張っていると、人の動きがよく分かる。
(ん……あのおじいさん、なんだろう?)
弱々しい感じの男性老人が右往左往と道を歩いている。
弱々しいが、動きはかなり俊敏。
「……あ!」
男性老人の目が光ったかと思えば、彼は無人販売店に設置されてある売り上げ金が入った箱を片手で引ったくった。
「見つけたぞ」
枡友は男性老人が走ると、二階から素早く飛び降り男性老人の背後に迫った。
「泥棒、盗んだり!」
枡友の両手が男性老人の腰にまわされ、彼を盗む事に成功した。
男性老人は若い頃から体を鍛えており、働けなくなる年になれば泥棒をするつもりでいたらしい。
「泥棒ドロボー、君のおかげで商店街に平和が戻ったよ!」
「泥棒いる所に、泥棒ドロボーあり‼
盗みをはたらくやからは、盗んでやるさ!」