僕は間違いなくこの三人に殺されたはずなのに
「じゃあ、行くか。」
「行くって、どこに?」再び祐樹が僕の発言に反応を返す。健太が続く。
「そうだよ、俺らを集めたのはいいけどよ、今日はどこに行くんだ?」
「勿論、僕の墓参りだよ。」僕がそう言うと、僕を除く全員がため息をついた。
「出たよ。」と健太。サナがあきれ顔で僕を諭す。
「あのね、あなた死んでないじゃない。今ここに立っているのは、誰なんですかー?」そう言ってサナは僕の胸を指で何度も小突いた。
「そこが不思議なところなんだよ。僕は間違いなくこの三人に殺されたはずなのに、」
「やめて。」サナが語気を強くする。「その話聞いて私たちがどういう気持ちになるのか、想像できないあなたではないわよね?」
僕は三人の顔を見回した。人を殺した人間がその話を蒸し返されてどんな気持ちになるのか、それは当人の異常性やその動機による気もしたが、確かに、三人の顔を見る限り悦に浸っている様子はなかった。
「そもそも死んでないんだから、墓なんかねぇだろうよ。」健太が(そちらの立場からすれば)当然の意見を主張する。僕はあらかじめ用意しておいた返事を提出した。
「それを探しに行くんだよ。あてはある。」
「おまえさぁ、だから」
「行かない。」健太と僕のやり取りをシャットする形で放たれたサナの一言は、これ以上誰の意見も受け付けないという、そういった強さがあった。
「僕さ、この辺でちょっと気になってたカフェがあるんだけど…、どうかな。」祐樹のその提案に、サナはうっとりと腕に手を絡ませる形で応えた。
「おぉ、いいね。前言ってたあそこだろ?俺も行ってみたい。な、いいだろ?」
眉を下げて、健太が僕の肩に手を置く。ぽん。
「今日は何曜だっけ。」僕の問いに健太が答える。「火曜。」
「なら、カフェの後は神宮に野球を観に行こう。」
僕の提案に、健太は拳に痛みが残る勢いでのグータッチで応え、サナは「えー、興味ない…。」と承諾した。祐樹はいつものように、歯を見せずに笑っていた。




