浩次との再会
不可解な状況の中、俺は友人の浩次と出会う。
しかし浩次は思いもよらない言葉を口にする。
「浩次!?浩次だよな!!」
この不可解な状況の中、友人に会えた喜びが心の底から溢れ出した。
伊達浩次は高校の友人の1人で、よく隼人と3人で遊んでいる仲だ。身長は俺より少し低くて、165cmくらい、中肉中背で俺たちの中では一番のおしゃべりだ。
すぐに浩次に駆け寄って、この状況を聞こうとしたが、浩次が電光石火で抱きついてきて、先に口を開いた。
「やっぱり…やっぱり光だよな!!生きてたのか!!」
その言葉に開きかけた口が、いや開いた口がふさがらなくなった。
昨日まで普通に学校で話してたはずなのに、何を言い出すんだこいつは。心の中でツッコミを入れると同時に、少し冷静になって浩次をみると、いつもより大人っぽくなっている気がする。身長も少し高くなって…ずいぶんやせ細っている。
「ちょ、浩次」
何故か泣きじゃくる浩次を引き離してようやくしゃべれると思ったが、いつものマシンガントークが始まってしまった。
「光!光ぅ!ぐすっうぅっ、ホンドに生きででぐれてよがった、ひぐっ。
あ゛の空襲で死んじまっだと思っでだのに。
う、うぅっ、光ぅぅ。」
「浩次!?浩次!!ちょ、ちょっと待ってくれ!!泣きながらでよく聞こえなかった。お前今空襲って言ったか?そんなわけないよな。」
浩次はか細くやせた腕で涙をぬぐうと、顔に心配を浮かべていた。
「何言ってんだよ。8年前の空襲だよ。ほら、夜隼人と3人で飲んでたらいきなり爆弾が落ちてきて…。覚えてないのか!?
」
「もう何がなんだか。」そう呟いたが、2人ともテンパッててもらちがあかない。俺は混乱する頭をなんとか落ち着けて
「浩次、とりあえず俺の話を聞いてくれ。」
そう言ってこれまでのことをゆっくりと話した。
浩次が少しずつ涙を止めて平常心を取り戻すと、ちょうど俺も話し終えるところだった。
「それでここで呆然としてたらお前に会ったんだよ。なぁ、一体何がどうなってるかわかんないか?」
浩次は相づちをうちながら話を聞いてくれていたが、聞き終わるとまっすぐ俺の目を見た。
「光、お前がそんなうそ言わないのはわかってる。きっと頭でもぶつけたんだよな。うん、そうに違いない。」
浩次は全く信じてくれなかった。ムリもない、いきなりこんな話されて信じられる方がおかしい。
何か浩次にわかってもらえる方法はないだろうか。そう考えながらポケットに手を入れると、カードらしきものに当たった。なんとなく、それを手にとってみる。
「…電車の定期券、これだ!!浩次、これを見てくれ!この定期券、2010年付けになってるだろ。」
そう言って差し出すと、浩次は定期券に目をやって、今度は不思議そうな目で俺を見た。
「これは、10年前の日付じゃないか。まさか光、さっきの話、ホントなのか!?」
俺は胸を撫で下ろした。
「やっと信じてくれたか。それにしても、10年前って、じゃあ今はホントに2020年なのか?」
「お、おう。それにしてもどういうことなんだ?」
落ち着いた俺とは逆に、浩次はさらに混乱してしまった。
「だから俺にもよくわからないんだよ。とにかく、この10年で一体何があったのかさっぱりわからない。駅はしょぼくてボロボロだし、ビル街がボロい住宅街になってるし、空なんて異常に暗い。まるで戦後だ。」
そう言うと、浩次が初めて暗い顔を見せた。
「そうなんだ。…戦後なんだよ」
その暗さが伝染してくるように感じた。
「今、何て…」
「と、とにかく、近くに定食屋がある。
長くなりそうだし、そこに入って話そう」
浩次の顔から暗さが消えていた。いや、ムリヤリ消したって言うべきなのか。
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