いつもの平日
俺はいつものように、電車に乗っていた。
朝6時に目を覚まし、顔を洗い、朝食をとり、歯を磨く。そして服を着替えて髪を整え学校へ向かう。それが俺、八尾 光の毎朝だ。平凡な、どこにでもいる17歳の高校生ってところだろう。
そしてそれらを済ませ、燦々と照らす7月の太陽に目を細めながら、家を出て、学校へ向かうために
俺はいつものように、電車に乗っていた。
俺の住む西大宮から学校のある池袋までは埼京線で1本、片道30分の道のりを俺はいつもつり革に捕まりながらipodで音楽を聞いている。今日もいつもと同じく7時45分の電車に乗ったのだが、平日にもかかわらず座席があいていたので座ると、眠くなってきた。池袋に着くまでに目を覚ませばぃぃ。
そう自分に言い聞かせ、俺は眠気に身を任せた。
『板橋~板橋~』
車内アナウンスで目を覚ますと、電車は池袋の1つ手前の板橋駅についたところだった。
乗り過ごさなくてよかった。そう思って腕時計を確認すると、なんと時計の針は7時45分を指していた。
一瞬、何が起きたかわからなかったが、すぐに、時計が壊れたんだと気づき、ケータイで時間を確認した。もちろんケータイの時計は8時10分を示している。
…はずだった。
しかし、俺のケータイは紛れもなく、7時45分を示していた。さっぱりわけがわからない。
俺の思い違いで、俺はいつもより早い電車に乗ったのだろうか。いや、そんなはずはない。
じゃあ家を出た時点で俺の腕時計もケータイも時間がずれていたのか?
俺が戸惑っていると、電車は池袋に到着した。
俺は戸惑いながらもとりあえずホームに降りた。
そこで俺はとんでもない光景を目にした。一瞬、降りた駅を間違えたと思うほどの。
文明の発展を思わせた綺麗に舗装されたコンクリートはボロボロで今にも崩れそうになっていて、広すぎて歩くのが面倒だったホームはこじんまりとし、挙げ句の果てにここが池袋駅であることを示す看板は…カビだらけの木の板になっていた。俺はさらなる異変に気づく。家を出たときはまばゆい光を放っていた太陽が見当たらない。それどころか、俺の知る東京ではありえないほど辺りは暗かった。
俺はあまりの光景に、頭が真っ白になった。なにがどうなってるのか、さっぱりわからなかった。 そのとき、俺を乗せてきた電車が次の駅に向かって走り出した。その音で電車を振り返ると、その電車も俺がいつも乗っている電車とはうって変わって、黒ずんだスミだらけのものだった。
いつものように目覚め、いつもの電車で俺が辿り着いたのは、世界の終焉のような場所だった。