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初めての戦い

『森を抜けたから一発で分かったぞ! 大人しく掴まれこのガキがっ』


 突然魔ローダーのスピーカーから大音響が出て、一同びっくりする。しかも金髪の少女はまだ倒れた魔輪をうんしょと持ち上げようとしている。早く逃げてよっ!


「お兄様、あんなのほっといて逃げましょう!」


 猫呼が必死にシャツの袖を引っ張って逃げようと促すけど、そんなのは出来ないよ。


「駄目だっ! 助けないと……猫呼(ねここ)だけ家に帰って家族に伝えるんだ」

「えっ!? そんなお兄様一緒に」

「早く行けっ!」


 僕は思い切り猫呼の背中を押した……妹までコケた。強く押し過ぎた……


『何だ、お前らはこのガキの仲間か?』


 うわ、気付かれた! 当然か……


「お前の相手は僕だっ!」


 気付くと僕は巨大な魔ローダーの足元で両手を広げて立っていた。妹と金髪の少女を守る為だ。


『バカか? お前一人でどうする気だ?』


 巨大な顔が気持ち下を向き僕を睨む。確かに普通そう思う。


「駄目、お兄様逃げましょう!」

『バカな奴らめ、邪魔するなら踏むだけだ』

「キャーーーッ!?」


 ギュッッ!

 次の瞬間、黒い影が迫り何の躊躇も余韻も無く、僕は25メートルの巨大な魔ローダーの足に踏まれた……泣き叫ぶ妹の声が聞こえる。当然僕は死んでいない。


『バカめ、よし女のガキおとなしくしとけ』


 三回目だ。何回もバカバカと。

 グギギギギギ


『え?』


 魔ローダーの操縦者は持ち上がる片足に一瞬驚いて声を上げる。僕は怪力で踏んで来た魔呂の足の裏を止めていたのだ。僕の能力は石の様に凄く硬くなったり重くなったり、その重さを支える為に怪力が出たり……でも地味過ぎて恥ずかしくて普段誰にも言わないでいる。もっと派手な魔法が使えるとかカッコいいのが良かったな。


「もう諦めて国に帰れ!!」


 僕は巨大な足の裏に踏まれるというかっこ悪い状態のまま、大声で叫んだ。


『バカか? それくらいの力が何になる??』


 そのくらいの力って結構凄いと思うが。でも男は言いながら巨大な脚を持ち上げ、もう一度踏んで来る。勢いを付けて踏めば勝てると思ったのか?


「いやーーっおにいさまぁーーーー!」


 ギューーーンバシッ!

 また思い切り踏まれるが、またまた両手で支える。


「仕方が無い」


 バチバチバシッ!!

 突然辺りにまばゆい青白い閃光がまたたいた。


 グラッ

 直後、巨大な魔ローダーが動きを止め後ろにゆらーっと倒れ込んだ。

 ドシーーーーンッッ

 轟音と共に魔呂は倒れたままピクリとも動かなくなった。

 シュ~~


「え?」

「何!?」


 見ていた猫呼と金髪の美少女も何事か理解出来ない。


「ふぅ、効いてくれたか良かった」


 僕は額の汗を拭った。


「お兄様ぁーーーもーー心配したのっ!」


 猫呼が泣きながら抱き着いてくる。


「よしよし」

「貴方凄いわ! 一体どうしたの、何の力なの?」


 うっ勝った途端に金髪の少女が近寄って来る。ちょっと現金な子だな。


「電気が出て、それを足の裏の装甲から流した」

「デンキ?」


 金髪の少女は……よく見ると薄いシャンパンゴールドの様な輝く長い金髪に、もしかしてアルビノじゃないかと思うくらいに真っ白い透明感のある肌、それに整った鼻梁に大きな緑色の瞳の物凄い美少女だった。その子がもう先程の戦闘を忘れたかの様に、小首をかしげて目を輝かせて聞いて来る。


「電気は雷みたいな物で、それを両手から出して敵を倒したんだよ」

「えお兄様そんな事が出来るの凄い?」

「手から雷が??」


 二人共さらに目を輝かせて見てくる。


「また出してとか言わないでね。これは秘密にしているから、誰にも言わないで欲しい」

「えーーっ」

「分かりました。助けて下さってありがとう」


 ようやく金髪の美少女は頭を下げてお礼を言って来た。


「君が盗んだ魔輪に拘るからこうなったんだよ? 所で君の名前は、何して追い掛けられてたの?」


 僕はとびきりの美少女に心を奪われたと思われたくないので、多少厳しめに聞いた。


「ごめんなさい、私の名前は雪乃フルエレと言います。故郷の南の小国から女王選定会議という物に出る為に旅立った所、ニナルティナ軍に何度も捕まりそうになり、こんな感じに」

「こんな感じに」

「こんにゃ感じ」


 三人は倒れた魔ローダーを見上げた。


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