妹みたいな幼馴染アイドルのために、僕が女装してアイドルユニット組む意味がどうしてもわからない
あ……、ありのまま一昨日起こった事を話すぜ!
「おれは連載の続きを書こうと思ったらいつのまにか短編を書き上げていた」
な…… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をしてるのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……
疲れだとか現実逃避だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ……
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
そんなおふざけ作品ですが、どうぞお楽しみください。
「という訳で、君には道流と組んで、アイドルユニットをやってもらうわ」
「いやごめんなさい。全く意味がわかりません」
「良いじゃんやろうよー。そうしたら良とずっと一緒にいられるしー」
田力良は、猫のように擦り付ける道流の頭を撫でながら冷静に返す。
向かい合う道流の事務所のマネージャー、真似寺慈已は大きな溜息をついた。
「ですから田力良欠乏症に罹っている道流がアイドルを続けるにはそれしかないんですよ」
「その最初の田力良欠乏症っていうところから、そもそも理解できないんですけど」
「言ったじゃーん。私ー、良から長い時間離れると、息が出来ないくらい苦しくなっちゃうんだってー」
「うん、道流。そこがわからないんだってば。今まで別にそんな事なかっただろう?」
膝枕に移行した道流の背中を撫でながら言う良の言葉に、慈已は再び溜息をつく。
「道流がアイドルとしてデビューする際に、『幼馴染の男の子が側にいたら、道流の魅力に傷が付く』、そう説明して、二人の接点を無くすようお願いしたわよね?」
「……はい。同い年で兄妹みたいに育った道流と会えなくなるのは寂しかったけど、道流の夢を応援したかったから同意しました……」
「結果としてその判断は間違いだったわ。道流は君に会えない寂しさを募らせるあまり、田力良欠乏症を発症してしまったのよ」
「うーん、そこから一気に意味がわからない」
「とにかくー、こうしてると私は元気いっぱいになれるのー」
仰向け膝枕体勢の道流のお腹を撫でながら、良は慈已に疑問を投げかけた。
「分かりました。田力良欠乏症については飲み込みましょう。問題はここからです。何故僕が女装をして道流とアイドルユニットを組む必要があるんですか?」
そう言う良の服装は、各所に白いフリルの付いた、チェック柄のミニスカワンピース。
胸には大きなリボンを飾り、ツインテールのウィッグを付けたその姿は、紛れもなくアイドルだった。
「だって道流の側に君を居させるために女装させたら滅茶苦茶似合うんですもの! それでついてるなんて最高じゃない! もう売り出すしかないのよ!」
「僕の人権が息してないんですけど」
「大丈夫だよー。良可愛いもん。絶対売れるよー」
「心配はそこじゃないんだよ道流」
道流を撫でながら今日何度目かの溜息をつく良。
「こんなのバレたら社会的に死ぬどころかファンに物理的に殺されますよね? サイリウムをビームサーベルに持ち替えて襲ってきますよね?」
「大丈夫! 私の化粧技術は世界一ィィィだから絶対バレないわ!」
「声とかどうするんですか。この通り、僕もう声変わりしてますよ」
「今の技術ってすごいのよ! マイクを通すと可愛い声に自動で変換できる機械があるの! これ付けてみて!」
「ヘッドセット型なんですね。『こんにちは。田力良です』。うわ、気持ち悪い」
「うん、こんなに可愛いんだもん。男の子だって思う人いないよー。それにこれだったらどんなにくっついても、女の子同士の仲良しにしか見えないしー」
膝に乗り、頬を擦り寄せる道流の頭を、良は諦めたように優しく撫でた。
「……最悪の場合、国外逃亡の手筈だけは整えておいてくださいよ」
「モロッコはダメよ! この可愛さでついてるというのが最高なんですから!」
「何でこの姿で居続ける事前提なんですか」
こうして良は道流のために、女装してアイドルユニットを組む事になった。
彼は知らない。
二人のユニット『百合ですが何か?』が世界を動かす程のアイドルになる事を。
そして道流よりも良の方が若干人気が高くなってしまう事も。
「良、だーいすきー」
「僕も道流の事大好きだよ」
めでたしめでたし?
読了ありがとうございます。
ここのところ男装女子よく書いてたなーと思って、女装男子で何か書けないかな、と思っただけなんですよ。
そうしたらこんな事に……。
多分献血のせいか何かだと思います。はい。
お楽しみいただけましたら幸いです。