2.
「きゃあああ」
妻は悲鳴を上げながらリビングに走り込んできた。
夫も、箸を置き妻に駆け寄った。
すると、妻を押しのけるように部屋の中に入ってくる男、手には包丁を握っている。倒れ込んだ妻は、夫に手だけですり寄った。
夫もしどろもどろで
「な、なんだ君は・・・」
と言いながらも、腰が引けている。
「金を出せ!」
強い口調で男がわめき出す。 さすがに夫もこの勢いに負けて
「ひぃっ」
と言う声を上げ腰を落とす。
男は尚、強い口調で
「金だ!」
と包丁を振り回す。
「か、金はやるから、助けてくれ」
夫は妻に被さるようにしながら言った。
男も興奮しているのか、息をきらしながら
「ガタガタ言うんじゃねぇ!」
と夫に包丁を突きつける。
夫はあわてて後ろポケットにある財布を取り出すと男に差し出す。男は中を確認し、札を全部抜き取り、財布を投げ捨てる。
「も、もういいだろ」
夫は男に懇願した。
男は妻に包丁を突きつけ
「お前のは?」
と詰め寄った。
妻は、今にも泣き出しそうな顔でタンスの上を指さす。
男は、タンスの上の女物の財布を手に取り、財布の中身だけを抜き出し、またタンスの上に財布を戻した。
「まだ、あるだろう?」
男は包丁を振り回しながら、リビングの机上に並べられていた食事を床になぎ落とし、食べかけのハンバーグがケチャップの筋を残しながら転がった。
妻も夫も口を利けないのか、ただ首を横に振るだけ。
「通帳と印鑑は?」
との問いにも、ふたりとも黙っている。
「ちっ!」
男は舌打ちをして本棚、タンスの中を手当たり次第に中のものを放り出して調べている。
夫と妻は、目で男を追いながらも、ふたりで手を握り合いガタガタと震えている。
リビングの床は、ちらばった食事の上に洋服や下着、雑誌などが散乱した。
部屋の中で一番大きい洋服ダンスに手をかけて開けたとたん、何か大きなものがドスンと転げ落ちた・・・
胸に包丁を刺され死んでいる老人だ。
一瞬みんなの動きが止まった・・・
「お母さん!」
妻の声が部屋の中に響く。




