表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

2-17 アポリューシュ四騎士組 ──戦時下なので如何なる残虐行為も肯定されます─

※この作品はフィクションです。実在するあらゆるものに関係はありません。


 普通の人間の生命が弓矢よりも安いような世界、バサルム。新興国であるアポリューシュ帝国は、『宿印』と呼ばれる身体に刻まれた能力を持つ人材を集め育成する事で大国相手でも武力を以て制す程に成り上がった。特に帝直属の側近の四人のことはアポリューシュ四騎士と呼ばれ、その全員が強力な宿印を持つ。

『青騎士』グラディエは[生死反転(アンリアル)]、死域より生に近づく屍。

『黒騎士』セレンは[一方通行(ラフレシア)]、魂を壊し依存させ支配する。

『赤騎士』レイアは[意識調律(スパルタン)]、自らの意識を他者にも強制させる。

『白騎士』ジルは[占利司界(ウアジェト)]、彼女の左目は凡ゆる処を映す。


 此度もまた、アポリューシュによって新たな地獄が作られるのだろう。四騎士には戦時下に於ける全ての権利が認められているのだから。

アポリューシュ四騎士組(書き出しver)

-ノスラム王国国境 AM8:00



『誉れ高きアポリューシュ帝国軍の(つわもの)達よ!我らが王の召集によくぞ集ってくれた!我は此度の大戦に於いても帝国軍総指揮権を預かる『赤騎士』レイアである──!』


 耳がトんちゃいそうな音量でレイアが演説してる。何言ってるか興味もないけど聴覚を劈いて響くからレイアの演説を愛してる。皮膚を突き破って血管に穴が空いて血という温かみが失われていく感覚も素晴らしく生の実感をくれるけど、やっぱり飽きちゃうからたまにしか聞けないこっちの方が好きだな。


『──諸君の健闘を願っている!ノスラムの[スラング]共から我らが領土を取り戻すぞ!』


『『『──────!!!!!』』』


「ひゃーっ…心地いいなぁー…♪」


 そろそろ耳の感覚が治っちゃうからナイフで左腕を切り落とす。暫くしたら溶けて無くなるから掃除はしなくていい。これで何もしなくても1時間くらいは死んでいられる。あぁ……神経が空気に触れて生まれる幻肢痛、癖になっちゃってる…♡


「あぁ、疲れたわ。グラディエも静聴ありがとう」


「いいよー♪レイアのこと好きだもん♪」


「そ。ありがと。呪布巻いてあげるからじっとしてなさいよ」


 "再生"を抑える為の不死鳥の呪布を切断面に密着するようにレイアが巻いてくれた。ただ宿印を抑制するだけじゃなくて、ずぅーっと燃えてるから皮膚が焦げ落ち肉も焼けてすっごくいい痛みをくれる。じわじわと生きてるなぁって、まるでカイロみたいに感じるの。


「熱っつ……いつもいつも私に巻かせてるけどそろそろ自分で巻きなさいよ」


「えー?」


「……もういいわ。セレンとジルは?」


「セレンはスパイさがしー、ジルはていさつちゅー」


「ほんっ……はぁ、演説の時ぐらい大人しく本陣にいられないのかしらあの二人」


「ピリピリしてて気持ちいいのにねー」


「アンタもアンタで特殊なの認識しておきなさいよ」


「えへー」


 この身体は呪われている。"生死反転(アンリアル)"って宿印に犯さ…侵されてる。死んでなきゃ生きられない、身体が傷ついて、治れ治れ治れ――って頑張ってる時しか、グラは動けない。けど、いつもいつもいーーっつもこうして痛みを感じられるんだから、グラにとっては祝福だよね。あははっ♪


「ほんっと、あの二人は王国の顔だってこと理解してるのかしら……」


「だいじょーぶ!グラはレイアちゃんと一緒にいるからね!」


「そういうことだけどそういうことじゃないのよ……まぁいいわ。グラディエのおかげで私も助かってる。ありがとね」


「ん?そうなのー?ならうれしいな〜♪レイアちゃんこそ、いつもグラと一緒にいてくれてありがと♪」


「……どうしてそういつもいつも笑ってられるのよ」


「んー?何か言ったー?」


「なんでもない。司令部で二人が来るまで待つわよ」


「りょーかーい♪」

 


――同上 AM8:40



 陣地の中でも一際豪華でおっきなテント。私たちにとっての城にあたる司令部。グラお気に入りの円卓をグラの座る青い椅子、レイアちゃんの赤い椅子、そしてまだ来てないセレンの黒椅子とジルの白椅子で囲んでる。コレも全部皇帝陛下の贈り物なんだよね〜♪


「〜♪」


 けど暇なのは嫌だから、ナイフでグラの太腿に落書きしながら遊んでる。勝手に治しちゃうから治る前に描かなきゃいけないけど、チクチクって来る痛みがグラのインスピレーション?を刺激する。使い方合ってるかな?


「もう10分過ぎてるのに……」


 レイアちゃんはぜーんぜんこない二人に対してお冠。いつもならこういう時ほっぺぷにぷにってしたら殴ってくれるんだけど、今はいっかな〜…


「二人とも私みたいにバカじゃないから覚えてるって〜♪」


「アンタほんっと呑気ね……」


 んっふ〜♪いつもは熱いレイアちゃんの冷たい目、かーわい〜っ♪


「グラはこれが取り柄なので!」


 呆れた顔のレイアちゃんも好き。だって可愛いし!って、足音?誰だろ?


「遅れてごめんなさぁ〜い♡今日は演説にも顔を出そうと思ったのだけど、この薄汚い北の子犬ちゃん(ノスラムのスパイ)が頑固で"おはなし"に手間取っちゃったの〜♡」


「あっ、セレンおっかえりぃ〜♪」


 セレンは大人のお姉さん。スパイや捕虜と"おはなし"が得意で、どんな人でも仲間にできちゃう。グラにもやって欲しいっていつも言ってるんだけど、グラちゃんにやっても気が乗らないのよ〜と断られちゃう。うぅ、気持ちよさ(痛た)そうなのに…


「遅っそいのよ……無駄に楽しんでたんじゃないでしょうね?」


「そんなことないわよ〜♡……オマエのせいよオマエも謝りなさい何ヘコヘコしてるのよ」


「ひぃぃっ、ごめんなさっごめんなさぃっ!わたしがっ、せれんさまにさからったわたしがばかでしたっ!」


 リードに繋がれた裸のノスリム人が、セレンのヒールで蹴られていっぱい鳴いてて羨ましい。いいなぁ〜、グラにもやってくれないかなぁ…♪


「はぁ〜……犬が人語を話すんですか?もう再教育する必要があります?」


「わ、わんっ!わふっ!」


 レイアちゃんの冷たい目は可愛いけど、セレンの冷たい目は恐怖で威圧で心がどうにかなっちゃいそう。きっとあのノスリム人も、セレンに壊されて従属しちゃったんだろうなぁ、いいなぁ…


「……いいから座って」


「あら、ついお熱が入っちゃった♡」


 ふんわりとした雰囲気に戻ったセレンが黒い椅子に座って、手をパンと叩く。これはおやつの時間の合図。ワクワクして待ってたら、前に落したカラニア公国のお姫様がグラ達にワインとチョコを持ってきてくれた。ん〜…美味しい〜…


「アンタ…いつの間にカラニアのリート姫を?」


「だってぇ…女の子を檻に入れたままなんて可哀想じゃない?だからおはなしして立場を教えてあげた上でこうして使ってあげてるの♡」

 

「はぃ…セレン様に使っていただけて私は光栄です…♡」


「ほら、本人もこう言ってるもの。別にいいじゃない」


「そーそー、おはなししたんだからいーじゃなーい♪」


「ああもう……」


 セレンは…右手の宿印にキスさせたら能力が発動するんだっけ?ちなみにグラは心臓に宿印があって、レイアちゃんはなんと舌の上!もし切られたらどうなるんだろ?怖いから試さないけど、気になるなぁ……


「注視してたら遅れた」


「わっ、ジルいつのまにっ!?」


 いつの間にか白い椅子におっきなスナイパーライフルを背負ったジルが座ってた。ジルは左目の中に宿印があるの。いつも眼帯してるから見えないけど。


「セレンが手を叩いた辺りから。あ、ボクはワインは要らないから下げておいて」


「……注視って事は仕事してたのね」


「勿論。それじゃあ報告するね――」


 ……うん、聞いてもよくわかんないから後でレイアちゃんに教えてもらおっと。チョコパクっ、ワインごくっ…おいし〜♪


「――ありがと。もう陣地展開されてるのね……よし、グラディエ。お願いがあるの」


「あ、終わった?グラは何したらいーい?」


「また聞いてなかったのね…まぁいいわ。グラディエは突撃。丘と丘に挟まれた場所の先に本陣があるから、いつものように正面突破ね」


「はいは〜い、わかった!指揮官はどうしたらいーい?」


「戦術的価値はないから殺して晒し首。徹底的に酷くしてね」


「了解!いってきまーす♪」


 ゾクゾクってくるレイアちゃんのマジボイスでテンションアップ。相棒のナイフを持って、いざ出陣っ!



──ノスラム王国 名無しの丘陵地帯 PM9:10



 鼻歌混じりに国境超えて、やってきたよノスラム王国。もちろん目的は侵攻!また生えてきた左手で不死鳥の呪布をバンダナにして、まずはご挨拶。


「アポリューシュ四騎士が一人、『青騎士』グラディエだよ!よろしくねー!」


 挨拶は大事だってよく言われてるもん。それに挨拶した方がお相手さんも沢山歓迎してくれる。今だって矢がピューンっと飛んできて、グラの膝に刺さった。


「〜っ♡」


 皮膚が貫かれ筋肉が潰されて神経がブチブチと千切れて、激しい痛みが脳の鐘を鳴らす。ドクドクと流れ出る血の赤さが地面を濡らして、グラは歩けなくなって前のめりになって倒れる。けど身体はそれを全部無視して神経を繋いで筋肉を作って皮膚が隠す。


「こんなのじゃグラは止まれないよ〜?」


『――――!』


 また立ち上がったグラを見て、ノスラム軍は本気を出したみたい。矢があちこちに刺さって、弾丸がグラの身体を貫いて、石礫が埋まって。けどけどけどグラの足が止まるには弱すぎて。お仕事中だから今は引き抜いちゃうけど石もポロポロと落ちてゆく。


「こんなものなの〜?もう走っちゃうからね〜?」


 断裂する感覚に震える足を唸らせて、突撃してくるみんなに飛び込んで。


『殺せぇぇぇ!!!』


「うんっ、殺せるものなら殺してよ!」


 すれ違いざまにナイフを振るって、崩して、大連鎖。グシャッて音が聞こえてきそう。いいなぁ、グラがいっぱいいたらそうやって死ねるんだろうなぁ…


「お返しだ青のクソ騎士っ…!」


「ぁっ……」


 そんな儚い想いに耽っていたら、伏兵に首を刎ねられ――


 


――たけど、グラの頭は繋がってなくても問題ない。少し耳と目と鼻と口が使えないだけ。脳は信号増幅用だからちょっと寂しいけど。皮膚を撫でる空気を感じれば、ちゃんと戦える。早く指揮官殺して、お菓子食べよっ♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 第17回書き出し祭り 第2会場の投票はこちらから ▼▼▼ 
投票は2023年1月14日まで!
表紙絵
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ