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モンスターテイマー 〜リョーガと愉快な仲間たち〜  作者: 紫龍院 飛鳥
第七章 リョーガとエルフ

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第五十二話 ユーリとユラ


…あれから三日が経った、あの日以来ユラは俺に対して冷たい態度をとるようになり、こっちから話しかけてもあからさまに無視をして遠ざけるようになった。

そして…任務にも一緒についてこなくなり、一人で任務に出て怪我を負って帰ってきた日も俺に血を求めなくなり、勝手に治るからいいと言って部屋に篭ってしまう。


俺に対してだけでなく、ユーリに対しても挨拶しても無視するし挙げ句の果てには噛みつきそうな目でキッと睨みつける始末…一度じっくりと話し合おうにも一向に取り合ってもらえず取り付く島もなし…最早お手上げ状態なのであった。


そんなある日のこと…


「…ハァ、ハァ、ハァ」


ユラが傷だらけのボロボロの状態で任務から帰ってきた。


「ユラ様!?だ、大丈夫ですか!?」

「ルリか…悪い、ちょっと部屋まで運んでくれ…血ぃ流しすぎてもう、立てねぇ…」

「かしこまりました、私の肩に掴まってください…」


ルリの肩を借りて自室まで戻るユラ…その数時間後に俺達も任務から戻る


「ただいま」

「あ、旦那様!実は…」

「ん?」


ルリから状況を伝えてもらう


「何だって!?ユラが!?」

「はい、それはもう…酷い出血の量でして」

「参ったな、ユーリは用事があるって言ってエルフの村に一旦戻ってるみたいだし…仕方ない、ここは俺の血を…」

「あの、ユラ様が…旦那様だけは呼ぶなと、おっしゃってました」

「チィッ!んな悠長なこと言ってる場合か!」

「あっ!旦那様!」


俺はユラの自室へ駆け込む


「おい!ユラ!無事か!?」

「リョーガ…?余計なお世話だ!入ってくんな!ぐふっ!」

「おいユラ!?大丈夫か?開けるぞ!」


俺は有無もなしに扉を開けて中へ入る、するとユラはベッドの上で血を吐いて疼くまっていた。


「ユラ!?ユラ…おいしっかりしろ!」

「ハァ、ハァ、ハァ…」

「このままじゃ不味い…ユラ、早く俺の血を飲め!飲んで回復を!」

「いらねぇ…こんなもん、寝てりゃすぐに…ゲホッ!」

「おいユラ!馬鹿なこと言ってないでとっとと飲め!」

「やめろ馬鹿…これ以上、アタイに構うな」

「ユラ…お前、一体どうしちまったんだよ?」

「………」

「言いたくないなら別にいい、とにかく今は血を飲め…俺はお前に、死んでほしくない!」

「リョーガ…」


観念したのか、ユラはややあって少しだけど血を飲んでくれた…

血を飲んだ後は少し落ち着いてそのまま眠ってしまった。


「ただいま帰りました」


夕方になって、ユーリが戻ってきた。


「あぁ、おかえりユーリ…」

「あれ?どうかしましたか?浮かないお顔をされてますけど…」

「あぁ、実は…」


俺はユーリにユラのことを包み隠さず話した。


「…なるほど、でしたらここは一つ私に任せてください」

「そ、そうか?分かった…」


ユラの自室へ向かうユーリ


「ユラさん?少し、よろしいですか?」

「ユーリ…か?」

「リョーガさんから聞きました、お加減は如何ですか?」

「……」

「少し、診させていただきますね…」

「…勝手にしろ」


ユラの診察を始めるユーリ


「…内臓が少し傷ついていますね、アンデッドは痛覚がないので気づかなかったでしょう、それに血液も不足されているので回復も大分遅れてるようですね」

「…分かるのか?」

「はい、『診断眼スキャン』といいまして医療専用の補助系スキルです、このスキルを使えば疾患のある箇所が目に視えるようになるんです」

「へぇ…」

「でも大丈夫、もう心配いりません…」

「言っとくけど、アタイらアンデッドには癒しの術は…」

「分かっています、こんなこともあろうかと…作っておきました」


と、ユーリは一つの丸薬を取り出す


「それは?」

「これはヴァパイア専用に調合した丸薬です、治癒能力を高める効果と血液を促進する効果があります」

「なんで、そんなもんを?」

「リョーガさんに頼まれたんです、もしもの時の為にヴァパイアにも効く薬を作っておいてくれって…いつも俺が側にいて血を飲ませられるとは限らないからって」

「リョーガ…なんで、なんでなんだよ?なんでそこまでアタイに優しくすんだよ?」

「リョーガさんは、それだけ仲間想いの優しい方だということですね…」

「それは分かってる、それがアイツの良いところだから…」

「ユラさん?」

「でも、それじゃダメなんだよ…そんなんじゃ、いつまで経ってもアイツのこと、嫌いになれないじゃねぇか…うっうっうぅ…」


嗚咽を漏らしながら泣き出すユラ


「ユラさんは、リョーガさんのことが大好きなんですね…」

「ああそうだよ!好きだよ、大好きだよ!でももう、リョーガにはアンタがいる…アタイがこのままリョーガのこと好きでいても意味なんてない、だからアタイは…わざと嫌われようとして冷たくつけ離して、アンタのことも散々無視したり…ごめん」

「私のことはいいんです全然!気にしないでください!」

「…怒ってないのかよ?」

「はい、ちっとも…」

「そっか…それにさ、リョーガのことももちろん好きなんだけどさ、やっぱり…ジンユのことも忘れられないんだよ」

「ジンユ…?」

「アタイと昔結婚を約束した男、その前に戦争で死んじまったけどな…」

「そう、でしたか…あなたも一度、愛しい人を失った過去をお持ちなんですね…」

「あぁ、リョーガはさ…ジンユとどことなく似てるんだよ、馬鹿正直でやたら正義感が強いとことかさ、それにリョーガの匂いってジンユの匂いとそっくりで一緒にいるだけでなんか…心がホッとして安心した気持ちになるっていうか、胸の奥がポカポカする感じがするんだよ…もう心臓なんてとっくの昔から動いてねぇのに、アイツの傍にいるとなんか胸がドキドキするような感じがして…こんな体になってから初めて生きてるって実感するんだよ」

「分かります、私も最初はリョーガさんに亡き夫の面影を感じて…そこから段々好きになっていって、私達って案外似たもの同士かもしれませんね?」

「そ、そうかな?」

「それで…リョーガさんを諦めようとしたのは、一つはリョーガさんと私の仲を邪魔したくなかったからと、もう一つはジンユさんへの想いを断ち切れない為?」

「…うん、ジンユ…怒ってねぇかな?俺というものがありながら他の男に靡くなって」

「ユラさん…」


と、ユーリはユラの手を優しく握る


「ユ、ユーリ?」

「…そのジンユさんがどんな方かはともかくとして、もしも私がジンユさんと同じ立場であれば、ユラさんの幸せをまず第一に優先すると思います」

「アタイの、幸せ?」

「はい、好きな人が幸せに過ごすこと…誰だってそう思うものです…今の泣いてるユラさんの顔を見たら、きっとジンユさん悲しむと思います…」

「ユーリ…で、でも仮にジンユが許したとしても、リョーガにはお前がいるじゃねぇか…」

「うーん…そうですよね、かと言って私もリョーガさんを諦めたくありませんし…」

「もういいよ、ここまで考えてくれただけで…十分だからさ」

「ユラさん…」

「もう疲れた、さっきの薬くれ…もう少し寝る」

「分かりました…おやすみなさい」



・・・・・



一方その頃、俺はというと…


「ねぇ、リョーガちん…」

「メリッサ?どうした?」

「あのね、ユラちんのことなのだけど…」

「??」

「ユラちんあの時、すごく『悲しい匂い』がしたのだ…多分、ユーリちんのことで相当ショックだったと思うのだ…」

「そうだよな、ユラには本当に申し訳ないことをしたと思ってる…けど俺は、今はユーリのことも大切にしたいと思ってる…両方いっぺんになんてそんな…」

「大丈夫!そこは問題ないのだ!ねっ?ぷよちん?」

「ぷよ!その通りぷよ!」


と、ひょっこりと顔を出すぷよたん


「ど、どういうことだ?」

「現在、この国において『重婚』を禁止するという風な法律はないぷよ!現に奥方を複数娶っている貴族も沢山いるぷよ」

「そ、そりゃ法律では合法と言われてはいるが…俺の気持ち的に二人いっぺんなんて、やっぱり…」

「もう、リョーガちんったら変なとこ真面目ちんなのだ…少しは欲張りちんになってもバチは当たらないのだ…」

「そうぷよ!法律的にも何も問題ないから罪に問われることもないぷよ!」

「…分かった、少しだけ…考える時間がほしい」


そう思い立った俺は、とある場所へ向かった。



・・・・・



「おや?リョーガ君…どうしたのかね?」

「すみません、アルカイルさん…こんな夜分に」


俺が訪れたのは冒険者ギルドの本部、俺はアルカイルさんにユーリとユラのことについてどうすればいいか相談しにやって来た。


「…なるほど、そういうことか」

「はい、俺どうしたらいいか…」

「そうだな、たしかにこの国では重婚は身分関係なく合法とされている、現に我々王家も『五夫一妻制』で陛下には私も含めて五人の夫がいる…だが陛下は我々五人の夫に対し決して優劣などつけることなく皆平等に愛してくれている…」

「そういう、もんですか…」

「あぁ、現に昨夜だってそれはもう激しく…おっと、つい口が滑ってしまった…今のは聞かなかったことにしてくれたまえ」

「ハハハ、随分とお盛んなようで…」

「だから君も、どちらかを選ぶ必要なんてない…その二人のことを平等に愛してあげなさい…」

「アルカイルさん…ありがとうございます」

「どうやら、決心はついたようだね?」

「はい…」



…翌日、俺は早速二人を集めて話をすることに



「二人とも、聞いてほしいことがある…」

「はい」

「…あぁ」

「俺は…ユーリのことも、ユラのことも分け隔てなく平等に大事にすると決意した!」

「へっ?」

「えっ…?」

「つまりその、こんな俺で良ければ…二人とも、俺と付き合ってほしい!頼む!」


二人に深々と頭を下げる


「あ、頭を上げてくださいリョーガさん!」

「そ、そうだぜリョーガ…頭上げろよ!なっ?」

「二人とも…」

「それとさリョーガ、最近ずっと冷たくしてごめん…それだけは謝らせてほしい」

「あぁ、いいんだって…ユーリから聞いた、俺の為にわざと嫌われようとしてたんだろ?それぐらい別にいいよ、全部水に流すさ」

「リョーガ、マジで優しい…好き!」


と、俺に勢いよく抱きつくユラ


「すぅー…ハァ、イイ匂い…ここ何日もずっと嗅げてなかったから今日はたっぷり補充しとかないとな!」

「あっ!ユラさんずるいです!私もリョーガさんとぎゅーしたいです!」

「だそうだ、ほらユラ…代わってやれ」

「ちぇー…」


ユラと交代して抱きつくユーリ


「フフフ、嬉しい…あぁ、好き…リョーガさん♡」

「もういいだろ?そろそろ代われよ」

「もうちょっと…もうちょっとだけ」

「くぅ…そっちがその気なら、こうだ!」


と、次の瞬間…ユラは俺に後ろから抱きついてきた。


「へへ〜んだ!前がダメなら後ろがある!これなら平等だな!」

「おぉ、グッドアイデアですね!ねっ?リョーガさん?」

「あ、あぁ…」


俺は前後から二人の大きな胸をムニィっと押しつけられ恥ずかしさと興奮のあまり脳みそがオーバーヒートして気絶してしまった。


「あ、おい!リョーガ!」

「リ、リョーガさん!しっかりして!誰か、お医者様を…」

「落ち着け!医者はお前だろ!」

「そうでした!しっかりして!リョーガさーーん!」



・・・・・



その後、みんなにも事情を説明し…みんなは普通に受け入れてくれた。


ということで、今夜は色々あってやり損ねたユーリの歓迎会と俺達の交際記念のパーティーをすることになった。


「フフ、今日も頑張っちゃいますよ〜!」

「期待してるぜ、ルカ」

「あ、ユーリ様食べられないものとか苦手なものってありますか?」

「そうですね、私達エルフ族は肉や魚を食べてはいけないという掟がありまして…卵や乳食品なら大丈夫なんですが…後、お酒も弱いので飲み物はアルコールの入ってないものをお願いします」

「かしこまりました!では、少々お待ちください!」


出来上がった料理は野菜と卵料理中心でどれもすごいご馳走だった。


「それじゃ、乾杯するっす!」

「そうでやんすね!それじゃあ…ユーリの姐さん!オイラ達の家にようこそでやんす!」

「そして、リョーガはん…ユーリはんにユラはん、末長くお幸せに!」

「みんな、ありがとう!乾杯っ!!」

「乾杯っ!!」


…その夜、今までで一番盛り上がった楽しい宴会となり、みんな朝になるまでどんちゃん騒ぎとなった。








To be continued…

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