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第四十九話 リョーガと再生治療


…前回のあらすじ、右腕を失った俺は治療の方法を求めてどんな怪我や病気も治すことができるという神秘の種族『エルフ族』を探しに南大陸の秘境『不可進の森』へとやってきた。


何度も迷った末に、森の中で偶然怪我を負ったエルフの青年『オルフェ』と出会い、命を救った恩返しということで彼にエルフ族が住むという村まで案内してもらうことに。

ところが村の門番にせき止められ、最早ダメかと思った矢先…そこへ現れたエルフの戦士長に何故か村に入ることを許してもらえたのだった。



そして俺達は、戦士長の案内でエルフ族の村の村長さんの家へやってきた。


「村長、私です…戦士長の『ラウル』です、少しお話がございます」

「うむ、入れ」

「はい、では入ってくれ」


そう促され家の中へ入る


「失礼します、村長」

「うむ、如何したかな?戦士長よ…」


囲炉裏のようなものを前にして鎮座しているエルフ族の男性、見た感じ三十代ぐらいだろうが落ち着いた雰囲気からして年齢的にはもっと上だろうな…何せエルフ族は老いることもないっていうぐらいだしな。


「んん?その者は…人間じゃな?何故村に入れた?」

「そのことで、お話がございます…」

「…申してみよ」


それから戦士長…基、ラウルさんは村長に俺達のことを説明する


「なるほど、あい分かった…そこの人間、リョーガ殿と申したのう…まずは我が同胞の命を救っていただき感謝いたす、ありがとう」


深々と頭を下げる村長さん


「いや、俺達は人として当然のことをしたまでで…」

「なんと謙虚な…よもやまだ人間の中にもこのような美しい御心の持ち主がおったとは」

「は、はぁ…」

「分かった、そなた達の村への滞在を許可する!」

「あ、ありがとうございます!」


話の分かる人達で助かったな…やっぱり誠実に話し合えば分かってくれるんだな


「時にそなた、腕の治療をする為にここまで遥々やってきたと申しておったな?」

「はい、そうです」

「なら丁度良い、そこのラウルの妹は村でも一番の治療の腕を持つ優秀な医師なのじゃ、彼女に診てもらうとええ」

「ありがとうございます」

「では、妹の診療所まで案内しよう…」

「はい」



・・・・・



ラウルさんについて診療所まで案内してもらう、それまでの間中すれ違う村の住人達に好奇の目で見られる。


「見てあれ、人間だわ…」

「ホントだ、初めて見た…」

「変な耳…それに人間ぽくない人もいっぱいいる」

「あの娘はエルフかしら?でも角が生えてるわね…何かしら?」

「あの男の人、人間だけどハンサムじゃない?」

「そうよね、私もそう思った!勿体無いわぁ~」


などとひそひそと話している


「なんか、すごく注目されてるっすね」

「無理もないでやんす、何百年もずっとここへ閉じこもっていたわけでやんすから…オイラ達のことが珍しいんでやんしょう」

「そうぷよね」

「ガウッ!」

「まぁ、ただでさえ儂らは人間の町でも目立っておるしのぅ…これぐらい慣れっこじゃ」

「ウフフ、そうでありんすね…」

「にしても、こうして見るとホントに若い奴しかいないんだな…エルフ族スゲー」

「まぁ年老いることがないという点では、我々アンデッドも共通でありますな」

「おぉ、すごいのだ!お揃いなのだ!」

「そりゃちょっと違うんじゃねぇの?あんまよく分かんねぇけど、似て非なるものってやつ?」


そんなこんなで診療所まで到着した


「さ、着いたぞ!おーい!『ユーリ』!」

「はい、お兄様」


出てきたのは黄緑色の長い髪を三つ編みに束ねた見た目二十代後半ぐらいのエルフ族の女性、その容姿は噂に違わぬ美しさでスタイルも服の上からでも分かるほどのナイスバディで一目見た瞬間ドキッとした。


「患者を連れてきた、診てやってくれ…」

「はい、分かりまし…っ!?」


すると、女性は俺の顔を見た途端にハッとした顔をして急にボロボロと涙を流し始めた


「…そんな、まさか…『リュウゼン』!」


そういっていきなり俺の胸に泣きながら飛び込んできた


「うわっと!?は?」


訳も分からずパニックになる


「リュウゼン…リュウゼン!うわぁぁぁぁん!」


そのまま俺を抱きしめて号泣する


「お、落ち着けユーリ!よく似ているが、彼はリュウゼンじゃない…」

「っ!?、す、すみません…初対面の方にとんだ失礼を…」


恥ずかしさから耳まで真っ赤になる


「いや、いいんだ…それより、たしかアンタも最初出会った時俺のこと『リュウゼン』って呼んだよな?」

「ん?あぁ、そうだったな…」

「誰なんだ?リュウゼンって?」

「リュウゼンは、私のかけがえのない大親友であり…妹の、ユーリの『夫』だったんだ」

「えっ?」



・・・・・



ラウルさんと妹のユーリさん、そしてリュウゼンさんは生まれた頃からずっと一緒に兄弟も同然に育った間柄だった。

後にラウルさんとリュウゼンさんは村の戦士となり、ユーリさんは医者となった

当時はまだ村を守る結界もなく、戦士として村の平和を守る為、命を懸けて戦うリュウゼンさん…その為いつも傷が絶えなくてその度にユーリさんに治してもらっていた。

やがて更に月日は経過し、ユーリさんとリュウゼンさんは恋に落ちめでたく結婚した。


そんな幸せな時間を過ごしてる束の間、今から二十年ほど前…事件が起きたのだった。


二人が結婚して一年が経ったある日のこと、村は大嵐に見舞われて大惨事となっていた…。


『マズイ!このままでは村が…』


『ラウル!こっちは避難完了だ!今、怪我人をユーリが診てくれている』


『そうか、分かった!』


『た、助けてー!』


『今の声は…』


『くっ…!』


『リュウゼン!』


駆けつけると、川で子供が溺れかけており今にも流されそうになっていた。


『あっ…』


『なんてこった…あのままでは流されてしまう、急いで助けなければ!』


『お前泳げないだろ?ここは俺がいく!』


何の迷いもなく雨で激流と化した川に飛び込んで子供の元へ必死に泳いでいく


『もう大丈夫だ、心配いらない!』


子供を抱え込み、岸まで泳いでいく


『リュウゼン!こっちだ!』


『ラウル!うわっ!』


突然、川の流れが早くなり二人とも流されてしまう


『リュウゼン!』


『このままでは…くっ!『風衝波ウインドバースト』!!』


力を振り絞って魔術で子供を吹っ飛ばす


『おっと!』


ラウルは子供を受け止める


『リュウゼン!』


『後は頼んだぜ、ラウル…』


『リュウゼン!リュウゼーーーン!!』



…嵐が去った次の日の朝、下流の川で水死体となったリュウゼンの遺体が発見された。


『そんな…リュウゼン、いや…いやぁぁぁぁぁ!!』


『ユーリ…』


最愛の夫を亡くし、嘆き悲しむ妹の背中をただ見つめることしかできないラウル



・・・・・



「以来、妹は氷のように冷たく心を閉ざしてしまってな…仕事以外では外へ出て人と会うこともしなくなり、心から笑うこともなくなってしまった…」

「そうだったのか…それで、そんなに似ているのか?俺とリュウゼンさんは?」

「あぁ、耳の形や髪と瞳の色は違えど…それをなしにしても本当にそっくりだ、まるでリュウゼンの生まれ変わりのような…」

「そんなにか…」


世の中には自分とそっくり同じ顔をした人間が三人はいるって話は聞いたことがあるけど…まさかこっちの世界でも通用するんだな、不思議なこともあるもんだ。


「お待たせしました、診察室へどうぞ」

「あぁ」


治療の準備が整い、診察室へ通される


「では、診察を始めます」


白衣に着替え、まずは俺の失った右腕を観察する


「なるほど…これなら、ふむふむ」

「治せそうか?」

「はい!問題ありません、大丈夫!私に任せてください」


と、俺に向けてニコッと微笑むユーリさん

その笑顔はとても穏やかで美しい笑顔だった。


『あれ以来、妹は氷のように心を閉ざしてしまい…心から笑うこともなくなってしまった…』


(…ユーリさん)


「では、少し血を取らせていただきますね…」


注射で俺の血を採取して試験管に入れる

そして、何かの薬と混ぜ合わせる


「よし、できた!後はこれを…」


と、カプセルに入った培養液につけ置きにする


「何をしているんだ?」

「あなたの遺伝子細胞を使って新たに義手を作成しているんです…」

「義手?」

「はい、まぁ義手と言ってもあなた自身の細胞を培養して作った義手なのでほとんど本物の腕と言っても過言ではありません」

「マジか…そんなことできんのか…」

「はい、エルフ族の独自の技術なんです…」

「すごいな…ぷよたんの言う通り人智を超えた技術や知識がここにあるんだな…」

「フフ、腕が出来上がるまで少し時間があるので…その、少しお話しませんか?」

「あ、あぁ…」

「リョーガさん、でしたっけ?」

「ん?あぁ…えっと、ユーリさん」

「ユーリで構いません…そう呼んでください」

「えっ?あ、あぁ…ユ、ユーリ」

「…嬉しい、フフ」


そう言って俺に抱きつくユーリ


「ちょ、ユーリ?」

「ごめんなさい、少しの間だけ…こうさせてください」

「………」


俺はそのまま何も言わずに黙って彼女に胸を貸してやった。




【ラウルの家】



一方で、俺が治療している間にみんなはラウルさんの家に招かれていた。


「んっ!このクッキー美味いっす!」

「そうか?美味いだろう?私の手作りなんだ、どんぐりの粉と豆乳で作ったクッキーなんだ」

「アンタ料理とかするんだな、見た目によらず」

「失礼だな…キミ」

「ん?これ…」


見ると部屋の壁に絵が飾られていて、描かれていたのはラウルとユーリ、そしてリョーガに瓜二つな顔をしたエルフの男


「これ…!?リョーガ!?」

「これはたまげた、この男が…先程申していたリュウゼン殿か?」

「まぁ!リョーガはんとほんにそっくりでありんす!」

「それはユーリとリュウゼンが結婚した際に記念に描いてもらった『写し絵』だ」

「へぇ…にしても驚いた、そりゃアンタらが見間違えるのも頷けるな」

「そうだろう、ところで…その、君らはリョーガ君とはどういう関係なんだね?失礼だが、君達は人間ではないように見えるのだが…」

「うぃっす、リョーガの兄ちゃんは『魔獣使い(モンスターテイマー)』でウチらはみんな兄ちゃんの子分なんす!」

「魔獣使い…ほぅ」

「旦那は、世界を股にかける凄腕の冒険者なんでやんすよ!」

「冒険者か…なるほど、それで君達は彼とともに冒険をしたり、モンスターと戦ってきたわけか」

「うぃっす!」

「ちなみに聞くが、彼はどんな人物なんだ?」

「兄ちゃんは、とても優しくて強くてカッコイイっす!」

「普段はめんどくさそうにしてやんすけど、人一倍正義感の強いお方で…」

「それで、何かを守る為であれば迷わず自らを犠牲にすることすら厭わない方なのであります…」

「メリッサもみんなも、そんなリョーガちんが大好きなのだ!」

「ガウッ!」

「ぷよ!」

「そうか…やはりそっくりだな、何もかもリュウゼンに」

「ふにゃ?」

「リュウゼンもな、人一倍心の優しい男で、誰よりも正義感が熱く、そして誰よりも強かった…私は過去何度も彼と手合せをしたのだが、一度も勝つことができなかった…でもそんな彼のことを私はとても誇らしく思っていて、ユーリもそんな彼のことを心から愛していた…」

「ラウルのおじちゃん…」

「リョーガ君は、歳はいくつだね?」

「ん?たしか今年で二十一になるって言ってたな…」

「そうか、もしかしたら…彼は本当にリュウゼンの生まれ変わりなのかもしれないな」

「たしか、リュウゼン殿が亡くなられたのも…二十年ほど前であると…」

「あぁ、だとしたら…とんだ運命の悪戯だな」



・・・・・



一方その頃、俺の方はというと…俺の細胞を培養して作成した義手が出来上がり、新たに接合してもらっていた。


「…はい、終わりました」

「おぉ、すごい…綺麗にくっついてる、ホントに俺の腕みたいだ…」

「まだ接合部分と神経が上手く馴染んでいないので動かすことはできませんが…一晩経てば馴染んで少しですが動かせるようにはなります」

「そうか、ありがとう…」

「後は繰り返しリハビリをしていけば、元のように動かすことができるようになります」

「あぁ、分かった…」

「では、病室まで案内しますね…」

「あぁ」


こうして、今晩は病室で一夜を明かすことになった。


「ユーリ」

「お兄様…」

「リョーガ君は?」

「えぇ、手術は無事に成功しました…後は経過観察をしてもし良ければリハビリを始めたいと思います」

「そうか、それは何よりだ…それより、お前のそんな嬉しそうな顔は久しぶりに見るな」

「えっ?」

「気づいてなかったのか?まったく、リョーガ君には感謝しかないな…」

「はい、まだ少ししか話せてませんが…ホントにリュウゼンと話しているみたいで夢みたいです」

「あぁ…彼のお仲間の話を聞く限り、やはり彼とは初めてあった気がしないんだ…もしかしたら本当に神様が私達に彼を会わせてくれたのかもな…」

「もしそうなら、神様に感謝ですね…ウフフ」

「そうだな…」






To be continued…

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