第四十二話 リョーガと忍者
…あれから数週間が経過し、俺達は順調にはぐれ冒険者達を捕縛していった。
だがそんなある日のことだった…俺とアレクさんはギルド本部から呼び出しを受けた。
「失礼します」
「おぉリョーガ殿!待っとったぜよ!」
「ん?…あ、アンタは」
待っていたのは首脳会談の際に控え室で知り合った東大陸の冒険者総ギルド長のソウ十郎さんの甥で冒険者の『辰巳 リョウ三郎』とその仲間と思しき面々
「ん?知り合いかねリョーガ君?」
「あぁ、まぁ…こないだの首脳会談の時にちょっとな…つか、なんでアンタらこっちにいるんだ?」
「それは、私から説明しよう…」
椅子から立ち上がり俺達に歩み寄るアルカイルさん
アルカイルさんの話によると、東大陸のはぐれ冒険者の一味が船に密航して西大陸の方まで逃亡してきたという話らしい。
「それで、アンタ達は西大陸まで追いかけてきてウチに助けを求めてきたってわけか…」
「そうじゃき、話が早くてまっこと助かるのぅリョーガ殿は!がっはっはっは!」
「で?俺達を呼び出したのも、その逃亡中の一味を捕縛するのを手伝ってもらう為、か?」
「おぉ、流石はリョーガ殿!そこまでお見通しとは恐れ入ったぜよ!」
「それで、リョウ三郎殿…東大陸から密航した一味というのは?」
「おぉそうじゃ、これを見るぜよ」
と、懐から何枚かの人相書きを取り出すリョウ三郎
見ると、全員忍者のような頭巾を被って顔を隠していた。
「こやつらは東大陸の元 Aランク冒険者パーティーの『目黒一家』っちゅう全員腕利きの『忍』で構成された一味ぜよ」
「忍者…」
侍がいるなら忍者がいても不思議ではないな…
「かつては数々の任務をこなし、国の為に滅私奉公しておったそうじゃが…今となってはあちこちで盗みやら殺しやら悪事を働くような不逞の輩になってしもうたがじゃ…」
「なるほどな…」
「何とか協力してくれんかのう?」
「あぁ、いいだろう…丁度俺達の方もあらかた落ち着いてきたところだしな…」
「ん〜、それもそうだね…私もその忍者というのに興味がある、是非見てみたいね」
「真かえ!?いやぁ恩に着るぜよおんしら!」
…ということで、リョウ三郎のパーティーと一緒に目黒一家を捕まえることとなった。
リョウ三郎のパーティー…Sランク冒険者パーティー『龍刃会』、メンバーはリョウ三郎を含む四人
回復や結界法術が得意な法師の『ソウカイ』、デッカい金砕棒を振り回して戦う怪力無双の『ゴン座衛門』、弓矢の名手の『カン吉郎』、そしてリーダーのリョウ三郎といった面々
飄々としているがこれでもリョウ三郎は東大陸でも指折りの優秀な冒険者らしい。
古今東西、少年漫画でもこういう普段おちゃらけたキャラこそ、ここぞという時にカッコいいところを見せることはよくあることなのだが…果たしてその実力は如何なものか?
・・・・・
「がっはっはっは!また会ったのう!べっぴんの女子達〜!」
「おい、それ以上近づいたら脳天かち割って殺すぞ?」
「もしも長生きをしたいのならば…分かっておるな?」
リョウ三郎に対して敵意剥き出しで警戒するフウラとユラ
「わ、分かっとるぜよ…あん時はスマンかったきに」
「…一体、彼は彼女達に何をしたんだい?すごく嫌われてるようだが?」
「別に、説明すんのもめんどくせー…アンタの想像に任せるよ」
「ん〜…分かった、なんとなく察したよ」
「よろしくな、嬢ちゃん…ワシはゴン座衛門じゃき、嬢ちゃんの名前は?」
「ウチ、ミーニャっていうっす!」
「おうおうそうか、ほれ飴食うか?」
「わぁい!」
熊のような大きな体と髭面の強面に反し、優しい笑顔でミーニャに接するゴン座衛門
「ゴン座衛門は子供好きじゃきにのぅ…こっちじゃたしかそういう輩は『ロリコン』っち呼ぶそうじゃのぅ…気をつけた方がえぇがじゃ」
「失礼なことを言うでないわリョウの字!節度ぐらいわきまえておるわ!」
「あらあら、こちらさんはたしかカン吉郎はんといいましたなぁ…よろしゅうお願いいたしんすえ」
「………」
襟巻きでキュッと顔を隠しハナビから目を逸らすカン吉郎
「おや?」
「あぁスマンのぅ、カン吉郎は大の女子嫌いなんじゃき…女子に対してはまともに口もきけんきに」
「変な奴ばっかだな…まともな奴いねぇのか?お前らのパーティー」
「安心召されよ、その点拙僧はまともですぞ?拙僧は心の鍛練を積んでおる故、女子などに心を惑わされたりはせぬ」
「あぁ、一人くらいまともな奴がいてくれて助かった…それはそうと、もう少しはぐれ冒険者の詳しい情報を教えてくれよ」
「おう、そうじゃのぅ…」
…『目黒一家』、かつて和の国及び東大陸随一と恐れられた忍達で結成された冒険者パーティー
東大陸の冒険者のほとんどは主君に仕えていない『浪人』などがほとんどだが、主君に仕えながらも冒険者として活動する侍や忍も少なからずいるらしい。
目黒一家の頭領、『目黒 赤之條』はかつて和の国の君主を影から守る秘密忍者部隊の頭に選ばれるほどの実力者で冒険者としても優秀な成績を収めていた。
今から三十年ほど前、先々代の君主が突如何者かに暗殺される事件が発生…赤之條は警備の責任を問われ解雇され、それで逆上し城の家臣ら数名を斬り殺し逃走…それからは部下である四名の忍を引き連れて出奔…それ以来、どこにいるのか行方知れずだったという…。
「なるほどな…」
「和の国の港で目黒一家らしき者らが船に乗って西大陸へ向かったっち情報を聞いてここまで追いかけてきたものの…どこへ行ったかもさっぱり分からんがぜよ」
「ふーん…まぁ幸いウチには人探しとか追跡得意な奴多いから安心してくれ…必ずそいつら俺達で捕まえよう」
「恩に着るぜよ!」
…というわけで、ここに東西混合目黒一家捕縛チームが結成された。
ここからは、いくつかの班に分かれて行動を共にする。
【一班】
リョーガ リョウ三郎 ゲータ クリム ぷよたん ハナビ
【二班】
ミーニャ ゴン座衛門 メリッサ フウラ ユラ
【三班】
カン吉郎 ソウカイ ガンディ アレク率いる三番隊
「というわけだ、よろしくなお前ら」
「へい!旦那のお役に立ってみせるでやんす!」
「僕もぷよ!」
「ガウッ!」
「ウフフ、あちきも気張るでありんす」
「なんじゃあ、他の女子は一緒じゃないがかえ?」
「おやおや、あちきではご不満でありんすか?」
「いやいや!滅相もないがぜよ!さぁいくぜよおんしら!」
「ふぅ、やれやれ…」
「おじちゃんって強いんすか?」
「おうとも!どんな敵が現れようとワシが守っちゃるき!任せるぜよ!」
「おぉ!ゴンちん頼もしいのだ!」
「嗚呼、やはり少女はえぇのぅ…見てるだけで心が癒されるぜよ」
「おいテメェ、そりゃアタイらへの当て付けか?ナメたこと言いやがって」
「そうじゃそうじゃ!儂らのような美女を差し置いて何をぬかしよるんじゃお主は!?」
「何を言う!?ワシは何と言われようが信念は曲げぬ男!ワシは少女しか愛せぬがじゃ!」
「な、何をぅ!?」
「初めまして、ガンディであります!よろしくお願いいたします!」
「うむ、よしなに」
「…よろしく」
「ん〜、君のことはリョーガ君から聞いてるよ…すごい防御力なんだってねぇ」
「はい!皆さんのことは、自分の騎士道に懸けて全力でお守りいたします!」
「頼もしいじゃないか…期待してるよ」
・・・・・
俺達一班は港近くの森を中心に捜索を開始した
しかし相手は腐っても凄腕の元 忍、そう簡単にそれらしい情報すら得られなかった…。
「やっぱ一筋縄にはいかねぇか…流石は元 忍、隠れるのはお手の物ってか?」
「ちょっと疲れたでやんすよ…」
「ぷよぉ、お腹空いたぷよ…」
「そうだな、今のうちに腹ごしらえでもしとくか…」
俺達は森の湖の畔で小休憩をとることに
「ん?リョーガ殿、そりゃ何ぜよ?」
「出発前にウチの使用人が持たせてくれた『サンドイッチ弁当』だ…お前の分もあるぞ、ほら」
「おぉ!これが噂に聞くサンドイッチがか!いっぺん食うてみたかったぜよ!」
「やっぱり東西南北で食文化って違うんだな…」
「えぇ、あちきもこっちに来た時見たことない食べ物ばかりで驚きんした」
「そういうもんか…まぁ、珍しいのはお互い様だな」
と、呑気にみんなでサンドイッチを食べていたその時だった。
「!?…ガルルル」
「クリム!?」
「どういたぜよ?」
「大体クリムがこうなった時は、近くに敵がいて警戒している証拠でやんす!」
すると、湖の水面から何かが飛んできた
「旦那!あぶねぇ!!」
咄嗟にナイフを抜いて打ち落とすゲータ、しかし飛んできたのはただの水のようだった。
「水…?」
「今のは魔術を使って飛ばした水に違いないぷよ!」
「ちゅうことは、敵は水の中でありんすね…」
「なるほどな、おい!出て来い!」
“ザブッ”
水の中から出てきたのは黒地に青いラインの入った忍者装束を纏った男
「コイツは!?『目黒一家』の!」
「てことは、コイツが…」
「そこまでお見通しでござるか、ならば隠し立ては不要にござる!我が名は目黒一家の『激流の青四郎』!」
「ガッハッハッハ!ここで会ったが百年目じゃ!大人しく縄につくぜよ!」
「フンッ…素直に『はい、そうですか』などと言うものか馬鹿者め!ここが貴様らの墓場となるのだ!」
と、両手で印を結ぶ青四郎
「来るぜよ!」
「!?」
「『水忍法・多重水弾の術』!!」
と、湖の水がさっきのように散弾銃の弾のようになり襲いかかる
「チィッ!『土壁』!!」
土の壁で水の散弾を防ぐ
「お前達!」
「合点!くらうでやんす!」
「『狐流妖術 炎舞・砲千火』!」
「『酸弾』!」
三人で一斉に攻撃する
「『水忍法・水柱壁の術』!」
水の壁で攻撃を防ぐ
「何!?」
「ナメおって…ワシがいくぜよ!」
刀を抜いて斬りかかるリョウ三郎
「ガウッ!」
クリムも一緒に迎え撃つ
「無駄でござる…『水忍法・水縛縄の術』!!」
今度はベタベタとした縄状の水を飛ばして二人の動きを捕える
「なっ!?何ぜよこりゃ!?と、とれん!」
「クゥン…」
「リョウ三郎!クリム!」
「今助けるでありんす!」
「おっと、そうはさせぬ!『水忍法・水監獄の術』!!」
すると、俺達は瞬く間に水球状の檻の中へ閉じ込められた。
(がぼぼぼ…)
(ぶよよよ…)
(ごぼぼぼ…)
まるで水中にいるみたいに身動きも呼吸も自由に出来ず踠き苦しむ
「旦那ぁ!ぷよたん!ハナビ姐さん!」
「後はお主だけよの、ワニ顔の…」
「くそっ!旦那達を離せぇ!」
果敢に挑みかかるゲータ
「フンッ…」
青四郎に軽くあしらわれるゲータ
(ゲータ…もういい、逃げてくれ)
(ゲータはん…)
(ゲータさん…)
「む、無茶じゃワニ顔の!おんし一人で勝てる相手じゃなぁぜよ!」
「ガウッ!(ゲータ先輩!)」
「いやでやんす…オイラには、旦那達を見捨てるなんてできないでやんす!オイラは、一生旦那についていくって心に誓ってやんす!ここで旦那を見捨てて逃げるぐらいなら腹切って死んだ方がマシでやんす!」
(ゲータ…)
「オイラは逃げない…絶対にお前を倒す!たとえこの身が朽ち果てようとも!」
「ほざけ雑魚め!『水忍法・水手裏剣の術』!!」
無数の手裏剣を飛ばす青四郎、ゲータはそれをナイフでいなしていく
「ぐっ!」
(ゲータ…がばごぼ)
「ハァ、ハァ、ハァ…」
「もう無駄でござる、諦めよ!」
「い、嫌でやんす…」
「往生際の悪い奴め…これで終わりでござる!『水忍法・水龍撃の術』!!」
水が龍の形となる
「フハハハ!我が最強の奥義をくらうがいい!」
「ここで終わるわけには…いかないでやんすよ!」
と、腰のポーチから大量のポーションを取り出す
「くらうでやんす!」
と、ポーションを投げる
すると瓶が割れて中の液体が水の龍に触れると忽ち凍り付いてしまった。
「なっ!?」
(あ、あれは…『冷気薬』!)
「くっ!まだだ、水ならばまだまだ豊富にあるのだ!」
「させないでやんす!」
と、パチンコを取り出し青四郎目掛けて弾を発射する
「ぐあっ!な、なんだこれは!?」
「へへへ、特製のカラシ弾でやんす!」
「ぐぅ…己、猪口才な」
「あのワニ顔…中々やりよるのぅ」
「これがオイラの戦い方でやんす!」
「くっ!卑怯者め…」
「フフフ、頭脳派と呼んでほしいでやんすね…そろそろキメるでやんす!」
弓を構え、集中する
「終わりでやんす!『剛牙水矢』!!」
『グオォォォォ!!』
ゲータの放った水の矢は巨大なワニの顔の形となり、大きな口を開けて青四郎を襲う
「ぐ、ぐあぁぁぁぁ!!」
ワニに飲み込まれて倒される青四郎、すると全員にかけられた術の拘束が解かれる。
「…ぷはぁっ!ハァ、ハァ、ハァ」
「いやぁ~よぉやったがぜよ!ガッハッハッハ!」
「旦那ぁ!ご無事で!?」
「あぁ、死ぬかと思ったがな…」
「ほんに、お手柄でありんすえ…」
「ぷよぉ、ありがとうぷよ!」
「い、いやぁ…」
「何にせよ、これでやっと一人目か…」
「先はまだまだ長いでありんすね…」
「ガフゥ…」
「ぷよぉ…」
「まぁ心配なぞいらん!きっと何とかなるぜよ!ガッハッハッハ!」
「能天気な奴だな…やれやれ」
To be continued…
-----【To days Result】-----
激流の青四郎 -Win-




