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モンスターテイマー 〜リョーガと愉快な仲間たち〜  作者: 紫龍院 飛鳥
第四章 リョーガとアンデッド
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第二十八話 リョーガとユラの過去


「失礼します旦那様、ルリです」

「どうした?」

「浴場を掃除していたところ、これを見つけたのですが…旦那様のものではないでしょうか?」


そう言ってルリが差し出してきたのは『冒険者カード』だった。


「ん?冒険者カード?いや、でも俺は持ってるしな…」


ポケットから自分のカードを取り出して確認する、確かにちゃんと持っている…でもウチで冒険者カード持ってるのなんて俺しかいない…だとしたら誰の物だ?


「…ちょっと見せてくれ」

「はい、どうぞ」


カードを受け取って確認する、一見すると俺のと同じAランクのゴールドカードっぽいが…かなり年季が入っているようで文字も掠れていてほとんど読めない…だが一つ名前の欄だけ読めそうだ。


「えっと…ユ…ラ?ん?ユラ?」


掠れた文字で『ユラ』と書かれていた、ということはこれはユラの物か?


「ユラか…たしかにアイツ、元は人間だったって言ってな…冒険者だったのか?」


一先ずカードをユラに返すことにした。


「なぁユラ、これお前のか?」

「ん?あっ!それアタイの!探してたんだよ〜、どこにあった?」

「風呂場にあったってルリが…」

「そっか、あんがと…」

「お前、冒険者だったんだな…」

「あぁ、もう随分昔の話だよ…『ブラッディフィート』ってパーティー組んでてな、当時それなりに有名だったんだぜ?」

「ブラッディフィート?」

「流石に知らねぇか…アタイの職業、蹴り技中心で戦うタイプの『格闘家』でさ、『ブラッディフィート』ってのは相手の返り血で真っ赤に染まったアタイの足から取った当時のアタイの異名だよ、そのままパーティー名として名乗ってたんだよ」

「へぇ…」


今から百年以上前…ユラはまだ人間だった頃『ブラッディフィート』というパーティーを組んで活動をしていた。

当時はまだ冒険者ギルド発足されて間もない頃であまり数も少なく、その時代はまだ『Sランク』という階級はなくAランクが最高でユラ達は最強の名を惜しいがままにしていたとのこと。


当時、この世界は『大魔王』と呼ばれる凶悪で強力な力を持った大悪魔が世界を支配していて、人々は大魔王の脅威に震えていたという

そんな折、ユラ達ブラッディフィートも魔王軍と戦い人類の存亡の為に命を削り奮闘したとのこと。

そんな時、魔王軍の幹部である『ヴァンパイア』と交戦し、結果は敗北…パーティーのメンバーは全滅し、ユラも最後まで奮闘したものの瀕死の重傷を負わされてしまう。


『く、が…』


『ほぅ…人間の身でありながらこの私に手傷を負わせるとは、殺してしまうには実に惜しい逸材、ただの人間にしておくには勿体無い…我が“眷属”となれ、さすれば貴様に永遠の命と力をくれてやろう』


『けっ!誰が好き好んでテメェらみてぇなアンデッドなんかになるかよ!アタイは、冒険者だ!死んでもテメェらの仲間になんかなるか!』


『意見は求めん、所詮眷属となれば人格も記憶もなくなる故…』


『何…?』


『さぁ、力を分けてやろう…』


ユラの首を掴み、ユラの口の中に自らの血を流し込むヴァンパイア


『ぐふっ!あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!』


『苦しいか?だが心配はいらぬ…その苦痛を乗り越えたその時、貴様は立派なヴァンパイアとして生まれ変わるであろう…』


『く、あぁ…うっ』


こうして、ユラは人間としての生命を終えヴァンパイアとして生まれ変わった…

本来なら人格も記憶も失うはずが、ヴァンパイア化する際に必死に精神を蝕まれまいと抵抗した結果、奇跡的に人格と記憶だけは人間のまま残ったのだという。



「…そんなことがあったのか」

「あぁ、それから何年かした後に魔王軍は壊滅して大魔王は封印されたって話だ…」

「倒せなかったのか?」

「あぁ、なんか大魔王は強すぎて倒せなかったらしいぜ…封印するだけで精一杯だったってな」

「へぇ…」

「まぁでも、結構強力に封印されてるみたいだから多分もう目覚めてこないんじゃね?」

「それだといいがな…もしそんなヤバい奴が再び目覚めたなんてなったら正にこの世の終わりだな…」

「アハハハ!だな!でももしそうなったらリョーガ達だけはアタイがヴァンパイアにして生き返らせてやるよ」

「そいつは御免こうむるな…俺は人間のまま生きて普通に年取って死ぬ方がいい」

「そっか、まぁそんな世が来ないことを祈るのみだな…」

「あぁ、ところで…お前それ、どうするつもりだ?」

「ん?あぁ、どうすっかな?もうあれから何百年も経ってるわけだし…とっくに期限もすぎてるだろうしな」

「なら、俺からアルカイルさんに話してみよう…何とかしてもらえるかもしれん」

「いいのかよ、アタイはヴァンパイアだぜ?モンスターが冒険者やるなんて聞いたこともねぇ」

「うーん、まぁダメ元で頼んでみるか…」



・・・・・



ということで、ギルド本部へ行きアルカイルさんに事情を説明する。


「ふむ、分かった…今回は特別に彼女の冒険者カードの再発行を許可する」

「マジで!?ホントにいいのかよ!?」

「あぁ、『ブラッディフィート』と言えばその名を後世に残すほどの伝説的な冒険者パーティーだった…まさか君がその本人だとは…そんな逸材を人間ではなくなったからと言って逃すのは実に惜しい」

「お前、そんな優秀な冒険者だったんだな…」

「な?だから言ったろ?」

「では早速再発行の手続きをしてくるとしよう、少し待っていたまえ…」


部屋を出ていくアルカイルさん

そして、待つこと数分…新しいカードを持って戻ってきた。


「待たせたね、これが君の新しいカードだ」


と、新しいカードをユラに手渡す…俺のと同じゴールド仕様のAランクカードだ。



【Aランク冒険者:ユラ Lv.86 ジョブ:格闘家】



「おぉ!ピカピカだぁ!ありがとなおっさん!」

「お、おいユラ!この人総ギルド長で女王陛下の…」

「構わんよリョーガ君、ところで早速で悪いんだが一つ依頼を受けてくれるかね?」

「依頼?どんな依頼ですか?」

「君達にしかできん仕事だ…」

「??」


依頼された任務の内容とは、大量発生したモンスターの駆除

今回の駆除対象となるのは『ベノムホーネット』という猛毒を持った蜂のモンスター、普通の人間が刺されてしまえば立ち所に命を落とす危険性のあるモンスターらしい

風の噂で俺が毒などの状態異常に強いことを知ったアルカイルさんはこの任務を俺に振ってきたということだ。

無論、ユラもアンデッドなので毒は効かない…正に俺達にしか頼めない仕事と言えよう。


早速俺達は準備を整えてベノムホーネットの大量発生した現場へ向かった。


「この辺りに巣を作ってるって話だったんだが…」

「あ、あれじゃね?」


見ると通常の倍近くの大きさの蜂の巣が木の上にぶら下がっていた。


「アルカイルさんの話じゃ、あの巣の中に奴らの女王蜂がいるらしい…兵隊の蜂達は全て女王の命令で動いている、女王さえ先に潰せば後は烏合の衆だ」

「あぁ、なら早速いくか!」


蜂の巣がぶら下がっている木を思い切り蹴りつけるユラ、すると蜂の巣は衝撃に耐えかねて地面に落ちてきた

すると、巣を壊されて怒った兵隊蜂達が一斉に飛び出してきた、想像していたよりも結構デカい蜂で少しビビった…。


「来るぞ!」

「上等!」


二人で協力して兵隊蜂軍団を蹴散らしていく、ユラは見事な足捌きで兵隊蜂軍団を蹴散らしていく…かつて最強の名を惜しいがままにした実力は今尚健在のようだ…。


「オラオラぁ!こんなもんかぁ!」


(やるなぁユラ、俺も主人として負けてらんねぇな!)


俺も負けじとユラを魔術で援護する

こうして、兵隊蜂軍団を減らし続けて過半数ぐらい倒したところで巣から一際大きな蜂が出てきた。



【クイーンベノムホーネット Lv.66】



「ついに現れたな、奴が女王だ!」

「よっしゃ!さっさと仕留めるぜ!」


早速女王蜂を仕留めにかかるユラだったが、女王蜂を守らんとして兵隊蜂軍団がユラの前に立ち塞がる。


「このっ!邪魔だ雑魚ども!」

「ユラ!」


俺もユラに加勢に行こうとするも、またも兵隊蜂軍団に邪魔をされてしまう。


「このっ!『火球弾ファイヤーボール』!!」


火魔術で次々と焼き払っていくが蜂達がやけに粘り強くて一向にユラの元へ辿り着くことができなかった。


「くっ!ユラ!」

「アタイなら大丈夫だ!くっ!」


あっという間に兵隊蜂達に囲まれてしまったユラ


「あーもうっ!うざってぇなこのクソ虫ども!しゃあねぇな、この力(・・・)だけは使いたくなかったけどよ!」


ユラの奴、何をするつもりなんだ?


「覚悟しろよテメェら、一瞬で終わらせてやる…」


すると、その時だった…。



“ズシャアッ!”



突如、ユラの周りを囲った蜂達が赤い糸のようなものに切断されてしまった。

その赤い糸はユラの両手の指先から出ているのが見えた。


「『血操闘術・斬糸ざんしの構え』…」


するとユラは両手の五本指から更に赤い糸を増やしてスパスパと兵隊蜂達を斬り刻んでいく。


(これは…血?血を操ってやがる!?ヴァンパイアの能力か?)


本気の力を発揮したユラの前に次々と斬られていく兵隊蜂、そしてついに女王蜂のところまで到達した。


「終わりだ、『戦斧の構え』!」


今度は血で斧を作り、その斧で女王の体を真っ二つに切断した。


「グ、グギィィィィ!!」


断末魔と共に体液を撒き散らし絶命する女王蜂、女王蜂がやられる様を見た兵隊蜂達は尻尾を巻いて飛び去っていった。


「フゥ…」

「すげぇなユラ、なんで最初からその能力使わないんだよ?」

「うっせーな、アタイこの能力嫌いなんだよ…」

「嫌い?」

「理由は二つ!一つ、この力使うと血が大量に減るから使った後は力が抜ける…二つ、この力はヴァンパイア特有のモンだ、ヴァンパイアの力に頼るなんてアタイのプライドが許さねぇ!だからあんまこの力使いたくねぇんだよ…」

「そうだったのか…すまない、そうとは知らず…俺がもっとちゃんとしてれば…」

「気にすんなって、それよりさ…血ィ抜けてフラフラでこのままじゃ帰れねぇよ、いいよな?」

「…しょうがねぇな、前みたいに吸いすぎんなよ?」

「サンキュー!いっただきまぁす!」


と、俺に抱きついて血を吸うユラ



“…チュウゥゥゥゥ”



「…お、おいユラ?もうそれくらいにしとけ、それ以上吸ったらマジで…って、聞いてるのか?おいユラ?ちょ、おい!ユラ!ユラぁぁぁぁ…」



・・・・・



【ギルド本部】



「…以上が任務の報告になります」

「ご苦労だった…ところで、大丈夫かねリョーガ君?顔色がすこぶる良くないぞ、まさか…毒に」

「…いえ、これは大丈夫なアレなんで…気にしないでください」

「そうか、今日はゆっくり休むといい…」

「はい、失礼します…」


アルカイルさん報告を終えて部屋を出る


「おーうリョーガぁ!報酬もらってきたぜぇ!今の時代の冒険者って結構貰えるのな!にへへ〜」


嬉しそうにヘラヘラと笑うユラ、当然ながら報酬に喜んでいるわけではなく…ただ単に俺の血の味の余韻に浸ってニヤニヤしているだけである。


「……」

「ん?どうしたリョーガ?」

「…もう、二度とお前に血は吸わせん」

「えっ!?なんで!?困るんだけど!?」

「ふざけんな、これじゃ命がいくらあっても足りねぇよ馬鹿…その内絶対失血死するぞ…」

「なぁ頼む!それだけは堪忍してくれ!もうお前の血の味知っちまったから他の血なんて飲めねぇよぉ!」

「知るか馬鹿!もう帰るぞ!」

「ちょいちょいちょい!リョーガ!なぁ頼む!今度からちゃんと吸いすぎないように気をつけるから!」



…斯くして、ユラの冒険者復帰一発目の任務は無事に成功したのであった。




To be continued…



-----【To days Result】-----



ベノムホーネット 兵隊蜂 × 800


クイーンベノムホーネット  -Win-

【当たってんだよ…】



リョーガ『なぁ、ユラ…』


ユラ『ん?』


リョーガ『あのさ、百歩譲って血を吸うのは良しとしよう…ただ、抱きつくのはちょっとな…色々当たってんだよ、胸とか…胸とか…』


ユラ『胸?あぁ、そうか…何?恥ずかしいの?…まぁアタイとしてもタダで血ぃ吸うのも悪いと思ってるしさ、サービスだと思ってとっときな』


リョーガ『はぁ?』


ユラ『何なら、もっと触る?リョーガなら特別に許す!』


リョーガ『!?』


ユラ『プハハハ!冗談だよバーカ!リョーガのえっちぃ〜』


リョーガ『くっ…か、からかってんじゃねぇよ!』

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