プロローグ
俺の名前は『三澤 遼河』20歳のフリーター、一応は浪人生をやっているが…ロクに勉強もせずに親からの仕送りを食いつぶして毎日自堕落な生活をしている。
このままではいかんとも思ってはいるのだが、いざやろうとなるとやる気も気力もなくなり結局やらなくなってしまう
俺は昔からそうだ、何に対しても無関心で無気力で非常にめんどくさがりだ…
将来に対してもそう、特にやりたいことなんてないし…でもせめて大学ぐらいは出ておかないとこのご時世就職は難しい。
そう思ってとりあえず大学には行くことにしたものの、結局どこも不合格…そのままずるずると二年の月日が経過している。
すっかりやる気を失った俺は、一日中引きこもって勉強もバイトもせずにずっとゲームばかりしている
親からの毎月の仕送りもほとんどゲームへの課金に費やしている仕末である。
そんなある寒い冬の出来事、俺は風邪を引いて寝込むようになった。
熱も段々高くなり体の節々の痛みと猛烈な吐き気に襲われ流石に命の危機を察した俺は病院に行こうと決意するも体がダルくて動くことすらままならない…
仕方ないから病院に行くのは諦めてそのまま寝ることにした、寝てればその内勝手に治るだろうと思い俺は眠りに落ちた。
…そして、気がついた時には俺は…死んでいた。
気がついたら何もない白い空間にいた、あんなに体も重くてダルかったのに嘘のように軽いし何ともない
あぁ、これが死ぬってことなのか…と、漸く自分の死を実感することができた。
「そこのあなた」
「??」
するとそこへ、謎の人物が話しかけてきた
その人物は白いスーツを着て金髪碧眼の絵に描いたような美青年だった。
「誰?」
「初めまして、私は神様です」
「神様?」
「三澤 遼河さん…残念ですがあなたは、たった今お亡くなりになりました…」
「…だろうね、そんなことだろうと思った」
「おや?あまり驚かれないのですね?」
「まぁな」
「大抵の方は死の真実を聞いた途端、狼狽えたり号泣したりするのですが…あなたのような反応を見るのは数百年ぶりです」
「そりゃどーも、一応俺がなんで死んだか聞いていい?」
「そうですね、少々お待ちください…」
すると神様はスーツの内ポケットからスマホのようなものを取り出して何度かスワイプすると
「えっとですね、あなたの死因は風邪が悪化したことによる『肺炎』ですね…」
「ふぅん…そう、で?俺はこの後どうなんの?成仏して天国的なところにでもいくのか?それとも地獄?まぁ、地獄に落とされるような悪事もした覚えは…ないこともないが」
「いえいえ、あなたの行き先は天国でも地獄でもありませんよ」
「ん?」
「もっと素敵な場所ですよ…」
「だからどこなんだよ、勿体振らず教えてくれよ」
「あなたがこれから行くのは…『異世界』です」
「い、異世界…?」
俺は神様が一瞬何を言っているのか理解できなかったが、ちょっと思い出したことがある
生前に読んだことのある漫画の主人公が不慮の事故で死んで神様に生き返らせてもらったけどその世界というのが全くの知らない世界だったという…こういうの、確か『異世界転生』とかいうやつだな。
「おめでとう!あなたはとても幸運の持ち主ですね!異世界なんて滅多に行けるものではありませんからね!」
「運が良いって何だよ?俺、死んでんだぞ?」
「そう、実はですね今年死んだ人の累計があなたで丁度『100万人』に達したのです!おめでとうございまぁす!」
と、内ポケットからパーティー用のクラッカーを取り出してパァンと鳴らす神様、爽やかな笑顔で俺に拍手を送る
「何?何の冗談?」
「ほら、よくあるでしょう?デパートとか遊園地とかで来場者◯万人達成記念といった感じで記念品とかもらったりするやつです」
「まぁ、確かに…」
「だからあなたはホントにラッキーなんですよ!はい、もう一度拍手〜!パチパチパチ!」
「で?要するに、その死者100万人の記念品とやらがその…異世界へ行くってことか?」
「その通り!中々察しのよろしいようで…」
「ふぅん、まぁどうでもいいよ…もう好きにしてくれ」
「…おっそろしいほど反応が薄いのですね…まぁいいです、とにかく!早速あなたを異世界へご案内しますけどよろしいですね?」
「あぁ」
「と、その前に…」
と、神様は俺の顔の前に急に手を翳すと何かを念じ出した
すると神様の手がポワンと光りを放った。
「ん、これで準備よし!」
「??、一体何したんだ?」
「まぁお気になさらず、異世界へ行く前のほんの下準備のようなものなので」
「へぇ…」
「それと、一応あなたの生前の記憶と今の姿は残したまま転生させるつもりなのでご安心を…」
「そう、別にどうでもいいけど…やるなら早くしてくれ、めんどくさくなってきたから」
「ホンっト味気ない方ですねあなたは…もういいです、それじゃ早速異世界へ転生させましょう!」
「あぁ」
「では、いってらっしゃいませ~!」
…すると、目の前が眩い光に包まれて見えなくなった。