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ひとの気も知らないで  作者: 原田楓香
25/61

25. すっ飛ばして


  大変なことや、面倒なことがあると、時々、思う。

よく、ドラマや映画なんかであるみたいに、

『・・・そして、数年後』

みたいな、間を思いっきりすっ飛ばす展開が、現実にも、

あったらな、と。

途中の、しんどいこともつらいことも、思うようにいかなくて、

悩んだりしたことも、迷いも何も、すっかりすっ飛ばして、

数年後にいけたら・・・。


まあ、そんなうまい話はなくて、僕は、日々、受験生として、

地道にがんばる日々を過ごさざるを得ないのだけど。

・・・なんて話を、想子さんにしたら、

「あ、あるある。そう思うとき」

そう言って、彼女は話し始めた。


「そういえば、ずっと前、映画見に行ってん。その映画って、

『感動で、ラスト涙が止まらない!』

『この秋一番の、感動をあなたに!』とかって、すっごく

宣伝してたから、秋やし、なんか思いっきり泣けるのもいいな。

そう思って観に行ってん」

「うんうん」

「そしたら、隣に座った部活帰りっぽい女子高生たちが、

スポーツバッグの中から、分厚いタオル出してきて、

『タオルがいるって聞いたから、ぶあついの持ってきてん』

『え、あんたも?私も、持ってきたで』

『私もやで。これ、めっちゃ吸収ええやつやねん』

『これで、泣く用意はバッチリやね』

とかって、話してて。そうか!私も、ハンカチだしとかな。

そう思って、ハンカチ手に握って、いつ泣いてもOKなように、

備えててん」

「それで?泣いたん?」

「それがさ、ヒロインと相手の男の子は、高校時代、出会って、

お互いをなんとなく好きやと思っているのに、付き合う機会が

ないまま、進学や就職で、離れ離れになって。

あっという間に何年かたって、彼女は海外で、彼は北海道で、

それぞれ仕事してるねん。けど、ある日ひょっこり再会して。

で、お互い、やっぱり相手のことが好きやなって気づくねん」

「うん」

「彼はさ、結婚してるけど、奥さんとうまくいってなくて、ほぼ

離婚するとこで。彼女は独身で、自分は彼が心の中にいたから、

1人でも、海外でがんばれた、でも、今は、彼のもとに戻りたい、

と思って」

「で?」

「で、お互い、気持ちが今度こそ盛り上がって、一緒になるねん」

「ふ~ん。・・・めっちゃハッピーエンドやね」

「そやねん。めっちゃハッピーエンドやねん。しかも、ヒロイン以外も、

登場人物みんな、誰かしらとカップルになって、幸せになるねん」


想子さんは、笑いながら続ける。

「あまりにハッピーすぎて、エンドロール見ながら、一体、

どこで泣いたらよかったんや?と思って首ひねってたら、

隣の女子高生たちも、

『これ、使うとこなかった…』って、タオル握って呆然としてて。

・・・めっちゃおかしかったわ。

でさ、考えてん。何で泣かれへんかったんか」

「なんで?」


「主人公たちの苦労するシーンが、ほとんどなかってん。

相手のことを思い出して泣くシーンは、時々あって、

ヒロインはめっちゃ美しい泣き顔みせるねん。

でも、悩んだり、怒ったり、もがいたり、悔しがったり、

みっともないところは、ないねん」


想子さんは言う。

「あんまり、どろどろした話はいらんけど。でも、

それなりの苦労や葛藤は、あってもええんちゃうかな。

それがあるから、嬉しかったり感動したりするんちゃうかな」


「そやな。しんどいこと、あっさりすっ飛ばして、

『・・・そして数年後』なんて、つまらんよな。確かに。

・・・しゃあないなぁ。まあ、地道に僕も頑張るわ」

「そうそう。苦しみも味わってこそ、あとの楽しみがあるんやで~。

めっちゃ、応援してるからね。私が、京都で、思いっきり、

楽しめるように。がんばってや~」


ちょっと待って。

僕、想子さんから、一旦、離れようって覚悟決めたつもりやのに、

なんか、京都でも一緒にいることになりそうな気がするのは、

気のせい・・・?


ひとの気も知らないで、想子さんは、京都のガイドブックを

嬉しそうに、めくっている。

(何それ、あちこちに、いっぱい付箋ついてるやん・・・)


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