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ひとの気も知らないで  作者: 原田楓香
14/61

14.  なんかあった?


 想子さんの言う通り、やっぱり、昨日の僕と同じく、今日の僕も、

同じ想いを抱えている。もちろん、明日の僕も同じことだ。

(けなげやろ?なあ、想子さん。)

なんてことは、言えるわけもなく。


『さっさと告白しなはれ~』と想子さんは言ったけど、

今日、僕は、逆に、告白されてしまった。

もちろん、想子さんからではない。

友人だと思っていた女の子に。

僕は、もうすでに心に決めた人がいる、

そう言って、断った。

可愛い子だ。性格もいい。頭もいい。スタイルだっていい。

スポーツも得意そうだし、何をやっても上手にこなす。

ほんとにいい子だ。僕もきらいじゃない。

それなのに、僕の中に、YESという答えは浮かんでこなかった。


不思議だ。

誰かを好きになるという気持ちは、どこから来るんだろう。

頭で考えたら、彼女の告白に、秒でYESと言うのが普通だろう。

でも、僕は、秒でごめん!と言ってしまった。

人柄がいいから、好きになるわけじゃない。

見た目が素敵だから、好きになるわけじゃない。

きらいじゃないから、好きだというわけでもない。

彼女のことは、人類としては、めっちゃ好きなんだけど。



リビングで、お茶を飲みながら、ぼんやりテレビを見ていると、

「なあなあ、今夜、花火せえへん?」

想子さんが、2階から降りてきて言った。

「うん?」

「まだ残ってるのが少しあるねん。来年の夏までおいとくのも

なんやし。やろうよ」

「そやな。打ち上げ系はもう残ってなかったよな」

「うん。基本、線香花火」

「想子さん、線香花火ばっかり買うてくるからなあ」

「だって、好きやねんもん」

「ふふ。まあ、僕も線香花火、好きやけどな」


水を入れたバケツとお皿に立てたロウソクを用意して、

2人で、縁側に座る。

線香花火は、はじめ、少しオレンジがかった金色の火花を派手に

散らしたかと思うと、すぐに、小さな丸い火玉だけになって、

ほんのわずかに、かすかな火花を発しながら、

やがて終わりを迎える。

見ていると、めちゃくちゃさみしい気持ちになる。

それなのに、気持ちが落ち着くのはなぜだろう。

想子さんは、黙って火玉を落とさないように息を止めている。

僕も、同じように、火玉を見守る。


「線香花火って、さみしいけど、落ち着くよね」

想子さんが言う。

「そやな。でも、これ、ひとりでやってたら、泣きそうになるかも」

僕は、正直な感想を言う。

「そう、じゃあ、ひとりでやる?」

「いじわる。・・・泣かす気か?」

「大丈夫。ダイが泣いたら、私が、ちゃんと慰めてあげるから」

「慰めていらんから、まず泣かさんとって~」

「ふふ。ところで、・・・ダイ、今日、なんかあった?」


ぎくりとする。

女の子から、告白された話は、もちろんしていない。

するつもりもない。

「なんで?」

平気な声で言う。

「う~ん。なんか、ちょっといつもと違う感じ?

がっかりしてる、ていうのともちょっと違うかな。

でも、なんか、ちょっと、元気ないな、て思った」

「そうかぁ。別に何もないけどな。そういう想子さんこそ、

なんかあった?」

「なんで?何もないよ」

「人に『なんかあった?』てきくのって、ほんまは、

そうきいてる本人が、『なんかあった?』てきいてほしいと

思ってるんやって。前に、誰かが言うてた」

「そうなん?でも、大丈夫。な~んも、ない」

そう言うと、想子さんは、線香花火を2本まとめて持った。

「はい、次は、ちょっと景気よく、2本で行こ」

「景気よく、っていうほどではないけどな」

僕がつっこむと、

「でも、2本なら、1本ほどさみしくないよ」

想子さんは言った。

「そうかなあ」


「なあ、ダイ。・・・ずっと、2人で、仲良く暮らそな」

2本分の火玉をみつめながら、想子さんが、ぽつりと言う。

「ええけど。優しくしてね~」

僕は、冗談めかして、笑って返す。

「ふふふ。甘い!びしびし鍛えたげるわ」

「ええ~。こんなカワイイ子、イジメる気?」

「自分で言うな~」

想子さんが、笑いながら、ちょっと乱暴に僕の頭を抱え込む。

「やめて~、想子さんがいじめる~。いたいってば~。

おかあさんに、いうたるで~」

僕は、めいっぱい、ふざけてみせる。

「はははは、いうてみな~イギリスは遠いぞ~」

調子に乗った想子さんが、笑いながら、僕の髪をぐしゃぐしゃに

かきまわす。


想子さん、やっぱり、ちょっと、へんだ。

僕は、少し不安になる。


そして、ひとの気も知らないで、笑いのおさまった想子さんは、

今度は、僕の肩にもたれて、ぼ~っと庭を眺めている。





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