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ひとの気も知らないで  作者: 原田楓香
13/61

13. できるか~!


 『 そうだ。

ぐだぐだ考えずに、好きなもんは好き。

とりあえずは、それでいい。


この先の道に、何が在ろうと、

今日の僕の、この想いは

今日の僕だけのものだ。

昨日の僕にも、

明日の僕にも、

さわることのできない、

今日の僕だけのものだ。 』


詩だか何だかよくわからないけど、あの日浮かんだ言葉を、

書き連ねて、僕は、無事、課題を提出した。

何を書いたかは、想子さんには、内緒だ。


きゅんきゅん作品群は、作者名は載せずに冊子にして

配られ、それを読んだ全員の投票によって、人気を得た

作品には、賞が贈られるらしい。

一番得票数の多かった作品には、『きゅんきゅん大賞』

なる賞が贈られ、その作品はきれいな和紙に墨書して、

さらに額装してから、他の入賞作品とともに、1週間展示

され、後日、額ごと渡されるのだそうだ。

いや、もらっても、それ、どこに飾るねん?って話やけど。



僕は、もらってきた冊子を、リビングのソファに座って

読んでいた。

「何読んでるん?」

想子さんが横に座ってのぞき込んでくる。

「きゅんきゅん作品集」僕は、答える。

「ああ。例の課題のやつね」

「うん」

「ちょっと貸してよ」

「ん~。はい、どうぞ」

ほんとは、一通り読み終わっていて、

誰に投票するか、考えているところだったのだ。

想子さんなら、どれを選ぶかな、というのも

少し気になるところだ。


「ふ~んふ~ん。ふんふん」

言いながら、想子さんは、ページをめくる。

一通り見終わったらしい想子さんに聞く。

「自分やったら、どれに、投票する?」

「う~ん。3つほど、候補があるかな」

「うんうん。どれどれ?」

「うまいかどうか、て言うより、私が、きゅんと来るか

どうか、でいいんよね?」

「そうそう」


そして、想子さんが指をさしたページを見ると、

俳句が一句載っていた。

僕も、気になった作品だった。

難しい言葉やカッコイイ言葉は何も使っていなくて、

でも、すごく、熱い思いが伝わってくるような、句だ。


俳句は、わずか五・七・五に言葉をおさめるとか、

季語を入れるとか、いろんな制約があって、

なんだか息苦しいなと、僕は、これまで思っていたのだ。

でも、その句は、そんな見方が大間違いだということを、

あっさり僕に見せてくれた。

季語は、単に季節を表すだけの言葉ではなく、ときに、

景色や、風や、香りや、時間や、心情までも、イメージさせる

すごい力を持っているのだと思えた。


「この句がいいね。きゅんとくる」

「あと、2つは?」

「え~とね、この短歌。ちょっと、キザだけど、でも、

一生懸命カッコつけてるくせに、思いがダダ漏れしてる

のが愛しい感じ。うん、これもきゅんとくる」


確かに、その短歌も、僕の印象に残ったやつだ。

というより、一瞬、自分が書いたんやったっけ?と思ったくらい、

『カッコつけてるのに思いダダ漏れ』感に、僕も、きゅんとした。


「あと1つは?」

「うんとね、これ。この詩?みたいなの」

ドキッとする。僕のだ。

僕は、なんでもない顔をして、

「ふ~ん。どこがよかった?」

「ぐだぐだ考えずに、って言いながら、この作者は、けっこう、

ぐだぐだ考えてるんやろなあ、って。

『この想いは、今日の僕だけのもの』って言いつつ、

きっと、昨日の僕も、明日の僕も、『この想い』をけなげに、

抱え続けてるんやろなって。だから、この作品の作者には、

言うてあげたいね」

「何て?」

「ぐだぐだ言うてんと、さっさと告白しなはれ~」


(そんなもんできるか~!)


ひとの気もしらないで、想子さんは、

また別のページをめくって、

「これもね・・・、けっこうきゅんとくるよね」と話し続ける。


そして、急に顔をあげると、言った。

「なあなあ、ところで、ダイの作品はどれ?」

「言わへん」

「けち」


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