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ひとの気も知らないで  作者: 原田楓香
10/61

10. たいがい


 こんがり焼いたトーストは美味い。

バターをたっぷり塗って、ジュワッとしみこみかけた

ところを、そのまま食べてもいいし、

納豆をのせて食べてもいい。


「まだかかりそう?」

想子さんに声をかける。

「すぐ行く」

言葉通り、身支度をすませた想子さんがテーブルにつく。

そのタイミングで、パンを焼き始める。

2分もあれば焼けるので、その間に、彼女のカップに

コーヒーを注ぐ。今朝は、ブラックコーヒーだ。


昨日、2人でカルシウムの補給に励んだ結果、

今朝のメニューは少々変更になった。

が、ただのトーストも悪くない。

ただ、カフェオレは作れなかったけど。

目玉焼き、ウインナー、焼いたプチトマトと、マッシュルーム。

野菜ジュースも添える。


「納豆いる?」

「いる」

「じゃ、半分こ」

「ん」


ずっと前に、テレビで、美味しいトーストの食べ方、と言って、

納豆をのせているのを見て、僕らは疑った。

「納豆ってご飯にのせるモンちゃうん?」

「まあ、今度、試してみよ」

そうして、試してみて、納得。

確かに、美味しい。

でも、納豆がそれほど好きではない、うちの両親は、

「ん~。まあまあかな」と言ったが。


「結局のところ、好きだったら、何にのせても

美味しいんかもな」

僕が言うと、

「そやな。結局のところ、好きやったら、

たいがいのことは許せてしまうのと、同じかもね」

「へ~。たいがいのことは許せる相手、って?」

僕はきく。

(できるだけなんでもない声を出せただろうか。)


「ダイ」

「え?」 胸がドクンとなる。

「ちょっとくらいケンカすることあっても、

腹立つなって思うことあっても、

たいがいすぐ忘れて、気が付いたら

めっちゃ普通にしゃべってるやん。

そんなん出来る相手って、ダイだけやもん」

なぜか自信たっぷりに、想子さんは言う。


「・・・うん」

すこし、僕は納得いかない。

「ダイかて、そうちゃうん?」

想子さんが僕の顔をのぞきこむ。

「・・・ていうか、僕、そんな、想子さんとケンカとか

腹立つことって、・・・したっけ?」


「赤ちゃんのときに、私の膝の上で、昼寝して

ヨダレたれて、お気に入りのスカートべちょべちょに

したりとか。私の絵日記の宿題に、ぐるぐるの丸書い

たりとか。それから・・・」

嬉しそうに、想子さんは、思い出の中の僕を語る。


「・・・もう、ええわ」


ときめいた僕が、あほやった。

ぷん。

横を向いて、頬を膨らます。

想子さんが、テーブルの向こうから手を伸ばして、

人差し指で、僕の頬をつつく。


ぷしゅ。

空気がぬけて、思わず、

僕らは吹き出す。


想子さんが、笑いながら言った。

「ダイがおってくれて、よかった」


ひとの気も知らないで。

言いたい放題の想子さん。


しゃあないなあ。

僕は、想子さんにはかなわない。



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