表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

『隣国に民に愛されし公爵令嬢あり』


『隣国に民に愛されし公爵令嬢あり』


そんな言葉を聞いたのは王城で開かれたパーティーでのことだった。


「それはどんな姫なのだ?」

「あ、ポーレッド王太子殿下」


令嬢たちの話を詳しく聞き出そうと声をかけると、令嬢たちは慌てて私にカーテシーを捧げる。


「ああ、挨拶はいい。それで隣国の公爵令嬢というのはどのような姫君だ?」


私の言葉にお互いの顔を見合わせているものの、誰一人として口を開かない。

私が幼い頃から人々に嫌われているのは自覚している。

だから、同腹・異腹の弟たちには幼い頃から婚約者がいるというのに、私は王太子でも婚約者がいない。


「その公爵令嬢のことを教えてもらえるかな?」

「いえ、私たちも詳しくは存じません」

「それでもかまわない」


私の言葉に困った表情で顔を見合わせる令嬢たち。

……腹が立つ。


「いつまで黙っているつもりだ」


脅すように尋ねると令嬢たちは青くなって慌てて頭を下げる。


「本当に私たちは何も存じません。ただ、私たちと同じ年頃で、以前この国に来られたことがあったそうです。そのため今日その令嬢をどなたか存じないかと思いまして」

「ええ、私たちも『その令嬢のように国民とはいかなくても、せめて領民には好かれるようになれ』と言われました。ですがどのようなお方なのか分からず」


令嬢たちがウソを()いているようにはみえない。

本当に知らないようだ。


「それはいつ誰に言われたのだ?」

「昨日の終業式に学園長からです」

「そうか、わかった」


私の言葉にカーテシーをしてすぐに離れていく。

昨日の終業式、式だけ出て長々とした話を聞いてムダな時間を過ごすだけで面倒だから、理由をつけて行かなかった。

そんな話をしていたのか。


そんな話なら誰に聞けばいいか分かっている。

私はその日のパーティーをそつなくこなし、翌日外交部の下っ端を数人脅して噂となった隣国の公爵令嬢の情報を奪い取った。




「これは面白い」


隣国の公爵令嬢は幼い頃から『傷物令嬢』といわれてきたらしい。

婚約破棄か何かで傷物と蔑まれる立場となったわけだ。

今では幼女趣味の民たちに股を開く淫乱娼婦に身を落としているのだろう。

外交官の口が重たいのもそれが理由か。


私はペンを手に取った。

淫乱に育った公爵令嬢を王太子妃にしてやるから引き渡せ。

その代わりに法外な持参金も寄越せ。

ほかにも見目麗しい『傷物令嬢』がいるなら引き取って後宮で愛妾にしてやろう。


そのほかにも様々な条件をつけた手紙を外交官に預け、急ぎで返信を持ってくるよう命じた。



ひと月後に届いた返信は、私からの婚約を無下に断る内容だった。

今度は断ったら開戦も辞さない旨をチラつかせてみた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ